第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
腕を組み、険しい表情で見つめてくる煉獄に、鈴は思わず視線を泳がせた。
「何故、そんな事になるまで相談しなかった?」
「……それは、そのっ……煉獄さんに、迷惑をかけると思って」
「だが、それで鈴が、その様な怪我を負っていては、元も子もないだろう」
「それはそうですが、……すみません」
いつも笑っている彼に凄まれて、鈴は素直に頭を下げた。
何も彼女を本気で責めた訳でもないし、こうなる原因を作ってしまったのは自分だろうという事も理解している煉獄は、困った様に眉を下げた。
******
ことの始まりは、
煉獄さんに相談してみたら?と可愛らしく笑っていた筈の蜜璃は、鈴の病室を去ったその足で、煉獄家へと訪れていた。
「甘露寺と…伊黒か!!君たちも息災だったか?今日はこんな所までどうした!!」
「お久しぶりです、……って煉獄さん!それどころじゃないですよっ!!鈴ちゃんが大変だって言うのに」
「むう?……鈴?」
蜜璃の口から出たその名前に、笑顔だった表情をスッと引き締めた煉獄は、そのまま蜜璃の言葉を待った。
しかし、その先を彼女が口にするよりも前に、隣にいた伊黒が蜜璃の羽織を引っ張り、コソコソと呟く様に口を挟む。
「…‥甘露寺、尾上が自分で相談するという話ではなかったのか?」
「伊黒さんは全然、鈴ちゃんを分かっていないんだから〜!あの子は、いつだって人のことばかりで、自分のことなんてほったらかしなの!!いっつも無茶ばっかりなんだから……絶対自分から相談なんてしない筈よ!!」
「……そ、そうなのか」
「そうなのよ!!そういう子なの、鈴ちゃんは!!それにね、鈴ちゃんには煉獄さんがピッタリだと思うの」
「か、甘露寺!分かったから……もう少し声を抑えた方がいい」
「伊黒さん!私は鈴ちゃんに幸せになって貰いたいの!!」
初めこそコソコソと話をしていた蜜璃だが、段々と鼻息を荒くしていった彼女は、気づけば普通の声量で言葉を発し、伊黒が慌てて止めに入る。
それを直ぐそばで眺めていた煉獄は、一体鈴がどうしたのかと顔を顰めた。
「……甘露寺、熱くなっている所申し訳ないが、鈴の身に何かあったのか?」
遂には耐えきれなくなった煉獄が、二人の会話に割って入れば、その質問に一瞬キョトンとした表情を浮かべた蜜璃も、ハッと我に帰ったかのように、突然煉獄に詰め寄った。
「そうなんです、煉獄さん!!鈴ちゃんが大変なんです!!乙女の一大事ですよ!!」
「…お、乙女?……その、甘露寺……大変とは、具体的にはどうしたのだろうか?」
「煉獄さんは、鈴ちゃんとの噂はご存知ですか?」
「……噂?」
先程から蜜璃が口にする全ての事に疑問が浮かんでいる杏寿郎は、腕を組みながら、むむむ…と問われた言葉を考え込む。
しかし、自分の話ならともかく、鈴との噂など全く耳にした事がない彼はますます頭にはてなを浮かべた。
そんな煉獄を見兼ねた伊黒が、呆れた様に口を開いた。
「隊士達の間で噂になっている。……煉獄に取り入った尾上の話がな」
「なっ、……!」
「そのせいで尾上に言いがかりをつける隊士まで出てきている。今回の怪我は、その結果のようなものだ」
「怪我……?鈴が怪我を負ったのか!?」
弾かれた様にぐわっと目を見開いた煉獄に、伊黒は大きなため息を吐いた。
そんな煉獄に、蜜璃がことの経緯を説明する。最近広まっている噂から、血鬼術を食らった鈴の容体まで、知り得る全てを彼に伝え、最後に徐に頭を下げた。
「鈴ちゃんはいつも無茶ばっかりで……、煉獄さんからも鈴ちゃんにガツンと言ってあげて下さい。」
「しかし、俺のせいでその様な状況になっているなら……」
「だからこそです!!……鈴ちゃんは優しすぎるんです。いつも人のことばっかりで……自分の事は何もかも諦めているように感じる時があるんです」
私、悲しくって…… 心配なんです、鈴ちゃんの事。
そう言って眉を下げた蜜璃は、煉獄を見つめて笑いかけた。
「でも煉獄さんがいてくれたら、鈴ちゃんも大丈夫だと思うんです!!」
「むう、しかし……」
ニコニコと笑顔を向ける蜜璃に対し、珍しく煉獄は顔を曇らせた。
しかし、蜜璃には確信めいた予感があった。
『見た目など
かつて、自分にそう教えてくれた彼は、とても暖かくて優しい兄のような存在だ。そんな彼ならば、あの日の自分を救ってくれたように、鈴の心も明るく照らしてくれる筈だ。
「煉獄さん、鈴ちゃんを宜しくお願いします」
自分のせいで、知らず知らずのうちに、鈴を追い込んでしまった……と戸惑いを隠せない煉獄も、元教子に満面の笑みでお願いされては、困惑しながらも頷く他、選択肢はなかった……
******
「何故、そんな事になるまで相談しなかった?」
「……それは、そのっ……煉獄さんに、迷惑をかけると思って」
そんな経緯を経て、冒頭の台詞に繋がるわけである。
「それで鈴が、その様な怪我を負っていては、元も子もないだろう」
「それはそうですが、……すみません」
「君はいつも謝ってばかりだな……鈴はもっと自分を大切にするべきだ!!」
その言葉に、口を閉ざしてしまった鈴を見つめ
〝……さて、どうしたものか〟
煉獄は静かにら考えを巡らせるのだった。