第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
音柱に荷物のように担がれる形で、蝶屋敷へと運び込まれた鈴はー……、
「鈴さん?何か言う事があるんじゃないですか?」
「お前、途中から全く喋らないと思えば、顔色真っ青じゃねーか……たくっ、強がりやがって」
「………す、すみません」
処置もそこそこに、現柱二人から厳しいお説教をうけていた。
「なんでこんな状態になるまで放っておいたんですか?」
「……ごめんなさい。呼吸を使えば何とかやり過ごせると思っていたんだけど」
「お前なぁ……、やり過ごせるわけねぇだろ!しっかり毒食らいやがって」
「…‥おっしゃる通りです」
しのぶからは、もう少し遅ければ命に関わっていたかも知れないと叱言を並べられ、宇髄からは、何故すぐ言わなかったと、呆れたような視線を送られた。
それにシュンと肩を落とした鈴だったが、ふと、先に下山させた隊士達も同じ毒を負っていた筈だと思い出し、恐る恐るしのぶに問いかけた。
「しのぶちゃん……あの、…他の隊士達の症状は?」
「「鈴さん(お前)、反省してますか(ねーじゃねえか)」」
鈴の問いかけに、柱二人は、計らずしも同じ台詞を口にした。あまりにも息ぴったりの突っ込みに、ビクッと肩を跳ねさせた鈴は、オロオロと視線を泳がせた。
たった今、死んでいたかも知れないと説教を受けていたというのに、他人の心配をしている場合か?と二人は眉間に皺をよせた。
「全く、貴方って人は……鈴さん、いいですか?今回、鈴さん程の重症を負った隊士はいません。分身の鬼から受けた毒ですから、本体よりも毒性は弱かったのではないでしょうか」
「そっか……、それは良か「良かったわけではありませんよ?この毒は、スズメバチの数倍の毒性がありました。今回は先に知らせがあったから間に合ったものの、上手く解毒していなければ、鈴さんは今頃この世に居なかったかもしれません」
「……こ、怖い事言わないでよ」
「それくらいの状態だったという事です。宇髄さんに感謝する事ですね」
そう言って、呆れたようにため息を落としたしのぶに、宇髄は「派手にな!」なんて相槌を打つ。
そんな二人を眺めながら、鈴は静かに肩を撫で下ろした。今回の任務、怪我人こそ出してしまったものの、一人も死人を出す事なく無事に終える事ができたのは、やはり音柱が駆けつけてくれたからだろう。
あの隊士に気を取られてたからと言って、鬼の首を斬るどころか、血鬼術を食らってしまうなんて……まだまだ修行が足りないな、なんて馬鹿真面目に落ち込み始めた鈴に対し、宇髄は気怠そうに口を開いた。
「……で?あの隊士の処分はどうする?」
「へ?……処分?」
「たくっ、……お前あの時居合わせた隊士の話じゃ、ちんちくりんのせいで、その怪我負ったんじゃねーの?それに加えてあの態度……、あれは駄目だろ」
腕を組みながら、ぎろりと睨みを利かせてきた上官に、鈴は思わず苦笑いを浮かべた。
確かにあの女性隊士の行動は、決して褒められたものではない。それどころか、手柄を上げたいがために、なりふり構わず突っ込むなんて……厳しく言えば、自殺行為だとも思う。事実、彼女の無茶な攻撃のせいで、自分も怪我を負い、仲間を危険に晒したわけだが……
きっと自分があの場にいなければ、彼女もあそこまで馬鹿な行動を起こさなかった筈だ。……煉獄さんを想うあまりに、自分に突っ掛かってきていただけ。あの時、……あの子を庇い、代わりに怪我を負った自分に対し、彼女は少なからず自分の過ちに気づいていた。きっと多少なりとも、反省しているに違いない。……まぁ、その後は、再びキャンキャンと吠えていたのだが。
そんな事を考えて、鈴は静かに口を開いた。
「あの子は、少し経験が足りなかっただけです。それに、恋は盲目とでも言いますか……彼女はきっと人より少しだけ、素直な子なんですよ」
「はぁー!!?お前何言ってんだ!?」
「大丈夫ですよ。彼女も、今頃きっと反省してますから……それに、鬼にとどめをさせなかった私にも責任がありますし」
「お前、泣き寝入りとは随分地味な野郎だな……煉獄が聞いたらなんて言うか」
「……できれば、その……煉獄さんには怪我を負った事、内緒にしておいて貰えませんか?」
「はぁー?」
「お願いします。……また心配をかけてしまうので」
そう言って頭を下げた鈴に、それはあの隊士を庇っての行動だろう…と察した宇髄は、面倒臭そうにぷらぷらと掌を振って見せた。
はいはい、もう何も言わねーよ。なんて呟きながら、目の前の少女に目をやれば、あからさまにほっと肩を撫で下ろした姿に呆れてしまう。
〝お人好しか、それともただの馬鹿なのか……何方にせよ、そんな甘ちゃんじゃいつか足元救われるぞ、こいつ……〟
そんな事を思いながら、後の事はしのぶに任せ、宇髄は部屋を後にする。
「あ、あの!!音柱様、ありがとうございました」
「おー、……しっかり治せよー。じゃあなー」
そう言って、片腕を上げ振り返る事なく病室を後にした同僚の姿に、しのぶは小さくため息を落とした。
「鈴さんは、もう少し自分を大切にして下さい……貴方が他の女性に引け目を感じる必要はないんですよ?」
「そんなんじゃないよ。ただ、私は……あんなに誰かの為に必死になれないだけだよ」
「……そう思っているだけではないですか?……それにいつか、鈴さんが気を許せる相手が現れますよ」
「……そう、かな」
曖昧に笑みを浮かべた鈴は、悲しげに目を伏せる。そんな彼女を見つめたしのぶは、あの日から変わってしまった友人の様子に、困ったように眉を下げた。
…‥煉獄さんなら、鈴さんの心を開いてくれるかもしれませんね
此処にはいない、まさしく炎のような暖かさをもつ同僚を思い浮かべ、しのぶも静かに目を伏せた。