第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
人間に仇なす鬼を日夜狩る、
政府非公認組織〝鬼殺隊〟ーー。
此処はそんな隊士達を取り仕切る鬼殺隊本部、産屋敷邸である。
そんな屋敷の一室。
鬼殺隊最高位の現柱達と、それを指揮するお館様とが集う部屋の前で、緊張した表情を浮かべた一人の少女がいた。
「今日皆に集まって貰ったのは、新しく紹介したい子がいてね………さあ、入っておいで?」
そう言って、優しい声色で呼びかけたお館様に、緊張した様子で返事を返した少女は、恐る恐る部屋の中へと足を踏み入れた。
「新しく恋柱に就任した甘露寺蜜璃だよ。皆、仲良くするように」
「よ、よろしくお願いしますっ!!精一杯頑張ります!!」
桜餅のような鮮やかな髪色をした少女が、緊張した面持ちで声を上げれば、
「うむ!!これからは、同じ柱として宜しく頼む!!」
それに一際大きな返事を返した青年ー……
炎柱の煉獄杏寿郎の姿に、蜜璃は嬉しそうに頬を緩めた。
******
その後、柱合会議は滞りなく終わりを迎えた。
会議が終わりを迎えれば、柱達は屋敷の庭へと歩みを進め、そこで各々解散となる。
雑談を始める者。他人に興味がないのか、そそくさと帰路に着く者。様々である。
そんな中、極度の緊張から解放された蜜璃は、どっと疲れたような表情を浮かべていた。初めての会議、他の柱達とも初顔合わせだったのだから、彼女の緊張も致し方ないだろう。
そんな蜜璃に、背後から大きな声がかかる。
「甘露寺!!柱就任おめでとう!!」
「わぁ、煉獄さんっ!!ありがとうございます!!」
先程とは打って変わり、嬉しそうに頬を緩めた蜜璃の姿に、煉獄も笑顔で頷いた。
「先程の挨拶、気合いが入っていて、とても頼もしかったぞ!!元師範として鼻が高い!!」
「そんな……私、緊張しちゃって、必死で……なんだか、照れちゃいますね〜。」
えへへ、と頬を赤らめた蜜璃に、煉獄も豪快に笑い声を上げた。
元々、煉獄が柱になるよりもっと前、彼らは師弟関係を結んでいた。
杏寿郎の父がまだ炎柱として活躍している頃に、煉獄家の門を叩いた蜜璃ーー。
その頃から酒に溺れていた彼の父は、そんな彼女を門前払いしたのだが、当時、既に鬼殺隊士として頭角を表し始めていた彼が、父に代わり彼女を自身の継ぐ子として鍛えてやったのだ。
そんな自慢の弟子が、立派な隊士となり、今では自身と同じ柱にまで上り詰めたのだから、煉獄も自分の事のように嬉しくなってしまう訳だ。
「甘露寺、この後予定は空いているか?」
「えっと、特に予定はないですけど?」
「よし!!では、柱の就任祝いに一緒に食事でもどうだろう?勿論、食事代は俺の奢りだ!!」
「わぁ〜〜ありがとうございます!実は緊張しすぎて、もうお腹がぺこぺこでっ、」
そう言って、ぴょこぴょこと嬉しそうに飛び跳ねた蜜璃から、ぐうう〜と腹の音が聞こえ出し、煉獄は思わず吹き出した。
******
「わぁ、美味しそう〜〜」
「うむ!!どれも美味そうだ!!どれ、俺はこのカツ丼から頂くとしよう!!」
あれから蜜璃がよく通っているという定食屋へと移動した二人は、沢山の料理が並べられた目の前の机に視線を移して、口角を上げた。
それに驚いて固まる周りの客達を気にする事なく、彼らは料理へと箸を伸ばした。
「ん〜〜!美味しいっ」
「うまい!!」
頬を緩ませながら次から次へと皿を空にしていく少女と、一口、口にする度に大声で味の感想を述べる青年は、その店で異様に目立っていた。
だが、そんな二人にそっと近づく少女がいた。
「……あれ?蜜璃ちゃん?久しぶりね。」
「んへ?………っ、鈴ちゃん?」
ごくんっと口いっぱいに頬張ったお米を飲み込んだ蜜璃は「わぁ〜っ久しぶりだね!!」と声を上げた。
「ふふっ、蜜璃ちゃんは相変わらず元気いっぱいね」
それにクスクスと小さく笑みを溢した少女は、蜜璃の向かいに座り、パチクリと瞬きをしている煉獄に気づいて、困ったように眉を下げた。
「すみません。お食事中に声をかけてしまって……」
「いや……」
「煉獄さんは鈴ちゃんに会うのは初めてですか?うふふ、私の同期の尾上 鈴ちゃんです!!いつも良くしてくれるんです」
そう言ってにこにこと笑みを浮かべた蜜璃に、煉獄は「……そうか」と小さく呟いた。
いつもハキハキと返事をする彼が、どうかしたのだろうかと一瞬疑問に思った蜜璃だが、鈴にも彼を紹介しなくてはと、すぐに頭を切り替える。
「鈴ちゃん、こっちは私の師範でもある炎柱の煉獄さん!!とっても頼りになるんだから」
「え、師範って前に教えてくれた?」
コテンと首を傾げた彼女は、彼が自分の上官だと理解して、慌てて煉獄に頭を下げた。
「大変失礼いたしました、炎柱様。蜜璃ちゃんに久しぶりに会えて嬉しかったもので……つい」
「……いや、気にする事はない」
それに少し遅れる様にして、煉獄が口を開けば、彼女は「ありがとうございます」と笑いかけ、蜜璃に再び声をかけた。
「隠の方から聞いたよ、柱になったんだって?おめでとう!!」
「ありがとう〜!!私では力不足かもしれないけど、精一杯頑張るね〜!!」
「そんな事ないよ。蜜璃ちゃんはいつでも明るく頼もしいもの!!……まさかこんな所で会えると思わなかったから………思わず声をかけちゃった。ごめんね?」
「そんな、全然いいのよ!!あ、そうだ!煉獄さん!!鈴ちゃんも一緒にいいですか?」
その一言に、バッと顔を上げた煉獄は先程までとは打って変わり「うむ!構わない!!」と普段通り……いや、普段よりもかなり大きな返事をした。
それに一瞬驚いた表情を浮かべた彼女だったが、目の前の二人を交互に眺め、ふわりと優しい笑みを落とした。
「ふふ、ありがとうございます。ですが、丁度食事をし終えた所ですし、この後任務が入っていますので……お気遣いありがとうございます」
「えー、そうなの?任務なら仕方ないわね」
「うん、ごめんね?柱は多忙だと思うけど……もし時間が合えばまた今度、一緒に甘味処へでも行きたいな」
「勿論よ〜!!鈴ちゃんとの約束の為なら、鬼なんて一瞬で片付けちゃうわ!!」
「ふふっ、もう蜜璃ちゃんたらっ、……」
口元を押さえながらクスクスと可愛らしく笑みを漏らした彼女は、煉獄へと向き直り、もう一度軽く頭を下げた。
「では、炎柱様、私はこれで失礼します。お食事中お邪魔しました。……蜜璃ちゃんも、またね?」
そう言って定食屋を後にした彼女の後ろ姿に、蜜璃は立ち上がりぶんぶんと大きく手を振った。
だが、すぐにその姿は見えなくなってしまった為、蜜璃は椅子に座り直し、ふと正面を見て首を傾げた。
「……煉獄さん……どうしたんですか?」
それもその筈。
何故か煉獄は、箸を手にしたまま、笑顔で完全に固まっているのだ。そして返事も直ぐに返ってこない。
「……………甘露寺」
「ふぇっ?は、はい!!」
不思議そうに彼を見つめていれば、突然名前を呼ばれて思わず蜜璃は姿勢を正した。
「先程の隊士の事、詳しく教えてくれないか?」
「へ?鈴ちゃん?」
だが、煉獄の口から出た予想外の言葉に、蜜璃はパチパチと瞬きを繰り返す。
すると、ほんのり頬を染め、再び口を開いた煉獄は「………彼女は好い人がいるのだろうか?」と小さな声で呟いた。
〝……え?ええーっ!!それって、それって、それってー!!〟
そんな煉獄の姿に、蜜璃は心の中で大絶叫。
〝鈴ちゃんに恋しちゃったのねー!!分かる、分かるわ煉獄さん!!だって鈴ちゃんたら、あんなに可愛いいんだもん!!煉獄さんと鈴ちゃん………やだぁ、素敵だわ!!〟
いつも暴走気味な妄想が、頭の中で爆発する。
「煉獄さん!!私、煉獄さんを応援します!!」
「む?応援……?」
だが、今回は妄想でも何でもないようで。
蜜璃の言葉に一瞬首を傾げた煉獄だったが、その言葉の意味を理解して笑みを浮かべた。
「うむ!ありがとう!!頼もしいぞ、甘露寺!!」
「えへへ、お任せください!!えっと、鈴ちゃんは水の呼吸の隊士で〜、階級は確か乙……」
その後、真剣に話に耳を傾け煉獄に、蜜璃は思わず頬を染めた。
〝キュンキュンしちゃう〜……〟