第四章
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黒死牟からの激しい攻撃をギリギリのところで避けながら、茜はその頸に近づく為の攻撃の隙間を探していた。
「茜、一人で無理するなァ!!」
「ぐっ、……私のことはいいから、実弥さんはあの鬼の頸だけに集中して!!」
しかし実際は黒死牟に近づこうにも、攻撃を避けるので手一杯で。
悲鳴嶼が攻撃を受け流してくれているおかげで、何とか倒れずにいられるが、攻撃を仕掛けに行く度、避けきれなかった斬撃が茜の体に新しい傷を増やしていく。
「不死川っ!槙野っ!」
「悲鳴嶼さん、俺たちに構うな!」
そして、それはあの実弥ですら同じのようで。
聞いた事のない……
切羽詰まった兄弟子の声に、茜は実弥の傷を横目で確認する。
だが、黒死牟から視線を外したその僅かな動作で、茜は迫り来る次の攻撃に出遅れてしまう。
目の前まで迫った斬撃は、避けることすら難しい程の距離まで近づき、茜は刀を振ることすら間に合わず、迫り来る痛みを想像して固く目を瞑る。
しかし、その直後……
「…っ、… 無一郎くん」
「死なせないっ、貴女はまだ両腕で刀を振れる……!!」
彼女を襲ったのは身体の痛みではなく、ふわりと宙を舞う感覚だった。
茜を救ったのは、先程まで柱に串刺しにされていた無一郎で。
茜を背後から抱き抱え、体を捻るようにして攻撃から彼女を遠ざけた無一郎は、すぐさま体制を立て直すと次の斬撃に備え刀を振るう。
しかし、こちらは三人から四人へ戦力が増えたはずなのに、黒死牟の攻撃はちっとも弱る気配がない。
それでも、皆は必死で黒死牟の攻撃に喰らいつく。
そうして、いつでも飛び出せるよう攻撃の隙間を探っていた茜は、視界の端で無一郎が駆け出していくのに気がついた。
「不死川!槙野!」
その瞬間、悲鳴嶼から声を掛けられた茜達は、その意図を汲み取り、同時に黒死牟へと斬りかかる。
そして、他方向から一斉に仕掛けた攻撃の間を掻い潜り、無一郎が強引に活路を見出していく。
勿論、それを黒死牟が黙って許すはずもなく、間合いに侵入した無一郎を仕留めるために、黒死牟は刀を振り上げる。
「っ、!」
しかし、それを制したのは悲鳴嶼の一撃だった。
彼は攻撃を繰り出している最中に、黒死牟の右手甲に数珠を投げつけ、更にはその一瞬の隙を見逃ず、今度は鉄球で右腕ごと抉り落とす強力な一撃を繰り出していた。
そうして生まれた僅かな隙を利用して、無一郎はついに鬼へと辿り着く。
それから迷う事なく懐に入り、土手っ腹に刀を強く突き刺した。
しかし、強引に突き進んだ無一郎の身体には、避けきれなかった幾つもの攻撃が、彼に致命傷を与えていた。
それでも無一郎は決してこの好奇を逃すまいと、刀を強く握り締める。
そんな時何処からか銃声の音が響き、次の瞬間には、無一郎諸共、黒死牟を拘束する木の幹が現れる。
それはこれまで身を潜めていた玄弥の渾身の一撃で。
柱の陰に隠れながらその機を伺っていた玄弥は、黒死牟の髪や刀を口にしていた。
そのおかげで、玄弥が放った血鬼術の威力はかなり強力なものとなった。
茜達の攻撃に気を取られていた黒死牟は、玄弥への警戒を怠っていたため、その攻撃をもろに受ける。
そして、その血鬼術は黒死牟の動きを止める事に成功する。
それは数分…いや、数秒にも満たない僅かな時間。
しかし、茜達がその好機を逃す訳もなく、一斉に黒死牟の頸へと斬りかかる。
しかし、その瞬間、黒死牟の身体から複数の刃が現れて……
振り動作なしで、出した刃の数だけ斬撃が放たれた。
「「「……がはっ、」」」
その場にいた者は、全員その斬撃をもろに喰らう。
中でも一番近くにいた無一郎……、
それから黒死牟の逆鱗に触れた玄弥に至っては、その斬撃により身体を真っ二つに切断されてしまう。
そして、そんな玄弥のすぐ近くまで吹き飛ばされた茜もまた、致命的な傷を負っていた。
彼女の首を初め、身体を掠めた斬撃。
その威力は凄まじく……
先程までの深傷に加え、今の攻撃で頸動脈を斬られた茜の身体からは、大量の血が流れ出ていく。
呼吸で止血を試みるが、どんどん暗くなっていく視界と、急激に感覚を失っていく手足に、無意識に死を覚悟する。
「……玄弥、く…っ、」
それでも必死で手を伸ばす。
少し先に転がる玄弥へと、必死で這うように近づいていく。
〝せめてこれ以上、玄弥君が傷つかないように……〟
その一心で。
******
その一方、黒死牟との戦いも大きな山場を迎えていた。
先程の攻撃で、悲鳴嶼と実弥以外の者達はもう戦える状況ではなくなっていた。
それでも、その最期の一瞬まで無一郎は鬼に喰らい付く。
もう刀も振ることも叶わない……、
そんな彼が出来たことは、せいぜい黒死牟の腹に突き刺さる自身の刀を強く握ることだけ。
しかし、その強い想いに応えるように彼の刀身は赫く染まり、確実に黒死牟の動きを鈍らせた。
そこへ畳み掛けるように、玄弥の血鬼術が再び黒死牟を拘束する。
だが、身体を真っ二つにしても尚、自身を拘束する術をかける玄弥を、黒死牟が許すはずもなく……
今度こそ跡形もなく斬り刻んでやろうとするが、無一郎からの一撃のせいで、斬撃を飛ばすことも出来ない事にそこで漸く気づく。
そんな黒死牟の視線の先……
茜が玄弥を守るように覆い被さるのを視界に捉えた瞬間、突然視線が降下する。
それは実弥と悲鳴嶼が放った渾身の一撃で。
黒死牟は自身の頸が斬り落とされた事を、その時、ようやっと理解した。