第四章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
強がりを口にしながら駆け出した茜だが、刀を抜いた黒死牟の強さは先程とは比にならない程で。
相手は鬼でありながら呼吸を自在に使いこなす化け物。
二対一という不利な状況にも関わらず、淡々と繰り出される技は受け流すことすら容易ではない。
それに加えて刀を振らずとも飛んでくる斬撃は、実弥からの合図が無ければ気づかず身体を真っ二つにされるところだった。
玄弥の刀を拾い多彩な攻撃を仕掛ける実弥に比べ茜は完全に防戦一方の戦いを強いられてはいたが、それでも必死で食らいついていく。
まさに息つくまもない攻防戦。
一瞬の気の緩みが命取りになるような状況で、二人は技を出し続けた。
しかしー………、
「いっ、……」
「茜!!チッ、風ノ呼吸……」
先に綻びを見せたのは、やはり深手を負った茜だった。
踏み込んだと同時、瞬間的に走った痛みに茜の動きが鈍った瞬間……
目の前に迫って来た斬撃に、避けることすら間に合わず茜は思わず身構える。
だが、いつまで経っても訪れない痛みに恐る恐る顔を上げれば、目の前には見慣れた〝殺〟の文字。
「実弥さ、ん……」
実弥に庇われたのだと理解した茜は言葉を詰まらせる。
背後からでは傷の程度も分からないが、荒い呼吸を繰り返す実弥の足元には、ボタボタと血が滴り落ちる。
「ふむ…随分堪えたが…ここまで……動けば…臓物が…まろび
自分が弱いせいで、彼の足を引っ張ってしまった……
戦いの最中でありながら、この状況に思わず涙が込み上げる。
しかしー……
「……っ、?」
「フゥ、…フッ、フフッ、フフフッ………猫に
それなのに、鬼の言葉に笑い声を上げた実弥は、再び刀を握り締めると鬼へと向かって走り出す。
「オイオイ、どうしたァ?千鳥足になってるぜぇ。上弦にも効くみてェだなァこの血は!!」
そのまま怯むことなく鬼へと斬り掛かると、実弥は茜へと視線を寄越し、何時ものように怒鳴り声を上げた。
「茜、ボサっとすんじゃねェ!!攻撃を畳み掛けろ!!」
「………っ、うん!」
その言葉にハッと顔を上げた茜は、涙を乱暴に拭うと実弥に続いて駆け出した。
「俺の血の匂いで鬼は酩酊する、稀血の中でもさらに稀少な血だぜ!!存分に味わえ!!」
「初見なり…面白い……微酔う感覚も何時振りか…愉快……さらには稀血……」
だが、実弥の血を持ってしても黒死牟の動きを封じる事は難しいようで、何度攻撃を仕掛けようが二人の攻撃が黒死牟へと届くことはない。
それどころか、今度は実弥の日輪刀を踏みつけ動きを制した黒死牟の刃が、実弥の首へと振り下ろされる。
しかし、その攻撃を落ちていた玄弥の銃で受け止めた実弥も、負けじと黒死牟へ銃弾を撃ち抜いた。
「いい加減、一撃喰らいなさいよっ!!」
そこへ茜の斬撃が頸を狙って放たれるが……
鬼の虚を衝いたように見えた攻撃も、黒死牟にはかすり傷すら負わせられない。
そして今度こそ仕留める勢いで振り抜かれた黒死牟からの斬撃に、二人が刀を構えた瞬間ー……
「次々と…降って湧く……」
「我ら鬼殺隊は
そこへ遅れて駆けつけて来た悲鳴嶼が、その攻撃を弾き飛ばす。
それから実弥達へと振り返り、今すぐ傷口を縫うように指示した悲鳴嶼は、その間の時間稼ぎをかってでる。
ゴウンゴウンと凄まじい轟音をあげながら鉄球を回し始め、黒死牟をも引き寄せるような速度で空気を巻き上げると……
「岩ノ呼吸 弐ノ型 天面砕き」
そこから猛攻を仕掛けていく。
やはり鬼殺隊一と謳われる実力は流石のもので、実弥と茜が二人がかりですらかすり傷一つ負わせられ無かった黒死牟を追い詰めていく。
「折られた所で…すぐに再生するのだ……攻撃は…無意味……哀れな…人間よ……」
だが、そうして相手の刀をへし折った所で、黒死牟が言う言葉も最もで。
「これは…無惨の時まで温存しておきたかったが、ここで負けては元の
ならばと大きく息を吸い込んだ悲鳴嶼は惜しげも無く身体に痣を出現させると、勢いそのまま再び攻撃を仕掛けていくのだった。
******
一方、柱に磔にされていた無一郎は……
「ッ、ハァ…ハァ……」
「時透さん」
「っ、!!」
皆が時間を稼いでいる間に何とか日輪刀を引き抜き、玄弥の元へと駆け寄っていた。
「すまねぇが胴体を……強く押し付けて貰えるか?」
「玄弥!!生きてるの!?体……繋がるか?」
無一郎の言葉に玄弥は難しいかもしれないと首を振ると、近くに落ちている黒死牟の髪を拾ってきて食べさせて欲しいと願い出る。
しかし、それと同時に脳裏に茜との約束が蘇るー……
「玄弥君は私にとっても大切な仲間なの。勿論危険には晒したくないし、これ以上実弥さんが傷つくところも見たくはない」
「……」
「だからお願い。これから先、鬼を喰べる戦い方だけはしないと約束して?」
「最期まで……戦いたいんだ……兄貴を…守る……死なせたくない……」
「……分かった。一緒に最期まで戦おう」
無一郎の言葉に頷いた玄弥は、兄と……
「ありがとう、玄弥君」
あの日、自分にも優しく笑いかけてくれた茜の為にも、彼らを守り抜く覚悟を決めるのだった。