第四章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
玄弥の首を狙っていた黒死牟の攻撃は、あともう少しという所で強風と共に吹き荒れた斬撃によって弾かれた。
「あの女が言っていた……風の柱か……」
「その通りだぜ。テメェの頚をォ、捻じ斬る風だァ」
その声は茜が誰よりも信頼を寄せる彼のもので。
玄弥を庇うようにして現れた彼の背中を見つめ、茜は思わず涙ぐむ。
「兄貴……」
一方で絶体絶命の危機に駆けつけてくれた兄の姿に、玄弥は戸惑いを隠せないでいた。
鬼の速すぎる攻撃をどうやって兄が防いだのか。
そもそも、あんなに毛嫌いしていた自分のことを兄が助けてくれるなんて。
「……テメェは本当にどうしようもねぇ弟だぜぇ。何の為に俺がァ、母親を殺してまでお前を守ったと思ってやがる」
そんな玄弥の戸惑いを打ち消すように、実弥は今まで秘めていた弟への思いを口にする。
「テメェはどっかで世帯持って、家族増やして、爺になるまで生きてりゃあ良かったんだよ」
「……」
「お袋にしてやれなかった分も、弟や妹にしてやれなかった分も……お前がお前の女房や子供を幸せにすりゃあ良かっただろうが」
その思いやり溢れる言葉は、昔と変わらない優しい兄そのもので。
その瞬間、柱稽古の合間に炭治郎が教えてくれた言葉が頭に過ぎる。
『風柱のお兄さんのことなんだけど……
あの人はさ、玄弥。
鬼殺隊に入ったことをすごく怒ってはいた。
でも憎しみの匂いは少しもしなかったんだ。
だから怯えなくていいんだよ。
伝えたいことがあるなら言ったって大丈夫だよ。
実弥さんは玄弥のことがずっと変わらず大好きだから』
あの時は半信半疑だったけど、炭治郎が言っていたように兄は自分をずっと気にかけてくれていたのだ。
あの時も…
兄が本気で鬼殺隊を辞めさせようとぶつかって来たのは、玄弥を守るためだと茜が言っていた。
そんな彼女が「実弥さんは不器用だから」といつも笑っていたのを思い出し、玄弥の目からは涙が溢れる。
「そこには絶対に俺が鬼なんて来させねぇから……」
「ごめん兄ちゃん……ごめん……」
そんな二人のやり取りを眺めていた茜は、ふっと口元を緩めるとよろよろとその場に立ち上がる。
幾ら全集中の呼吸を使えると言っても、傷を負った体では動く度にあちこちから悲鳴が上がる。
刺された腹の傷に至っては未だに止血がままならず血が滲んでいる状態だ。
しかし、それでも……
大切な人が命を賭けてでも守りたいと言っていた弟を、これ以上傷つけさせる訳にはいかないのだ。
「よくも俺の弟を刻みやがったなァ、糞目玉野郎ォオ!!許さねェ、許さねェ、許さねェエ!!!」
怒号を飛ばしながら鬼へと駆け出した実弥に続き、茜も地を蹴り走り出す。
「壱ノ型
実弥が鬼の股を潜りながら脚を斬りつけ、間髪入れずに次の攻撃を繰り出せば、それを援護するように高く飛び上がった茜が鬼の行く手を阻む攻撃を幾重にも仕掛ける。
流石は日頃から稽古を共にする二人だ。
声掛けなしでここまでの連携を取られてしまっては、上弦と言えど攻撃を防ぎ切るのは容易ではないようで。
その証拠にとうとう姿を見せたその刀身に、実弥は鬼を挑発するように口を開く。
「はァァ、こりゃあまた気色の悪ィ刀だぜェ!なァ、オイ!!」
その言葉通り現れた刀は何とも不気味な姿をしていて。
刀にびっしりと張り巡らせている目玉には、対峙する二人だけでなく無一郎までもが驚きを隠せないでいた。
そして、その禍々しさや威圧感は、抜刀前とは比べものにならない程に膨れ上がっていく。
「っ、……」
格上の相手に、経験したことのない感覚に、茜の体は無意識に震え出す。
それを誤魔化すように刀を強く握りしめるが、押し寄せる緊迫感に自然と背中に冷や汗が流れる。
なんとか平常心を取り戻そうと深い呼吸を繰り返す茜に、実弥は静かに問いかける。
「………茜、いけるかァ?」
その言葉には、何処か戸惑いも含まれていて。
ボロボロの自分を心配しているのだと気づいた茜は、最大限の強がりでそれに応えた。
「当たり前!!一緒に守るって約束したでしょ?」
「……あァ、そうだったなァ」
口元を吊り上げた茜に実弥も小さく笑みを零すとー……
「そんじゃあ、とっとと終わらせるぞォ!!」
「了解!!」
二人は鬼に向かって、一気に攻撃を畳み掛けるのだった。