第四章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一陣の風と共に現れた茜にも、黒死牟は片眉ひとつ動かさず淡々と言葉を続けた。
「ほう…女の柱か……これはまた珍しいな…」
そんな黒死牟から仲間を守るように間に割って入った茜は、ちらりと背後にいる二人の様子を確認する。
真後ろにいる玄弥は両腕を斬られ、柱である無一郎ですら片手を失い磔にされているこの状況。
それに加えてこの鬼と対峙した時の威圧感は思わず手足がすくむ程で、他の上弦とも比べものにならない。
恐らく自分が助太刀に入ったからといって、劣勢であるこの状況が変わる事はないだろう。
しかし、それでも、今宵鬼舞辻無惨を倒すために。
そして、お館様や煉獄さん…、今まで共に戦ってきた仲間たちの思いに応える為には、今ここでこの鬼の頸を斬らなければならいと茜は覚悟を決める。
「柱?私なんかが柱になれる筈ないでしょ?笑わせないでよ」
「………ほう」
「お館様は本当に素晴らしいお方だった……そして、お館様と共に戦うことを決めた柱の皆もまた、とても強くて凄い人達ばかりなの。貴方達が束になったって負けやしないわ」
その言葉に黒死牟がスっと目を細めると、それを合図に茜は迷うことなく鬼へと駆け出した。
「それに風柱は…私の兄弟子は最強なんだから!鬼殺隊を舐めないでよね!!
風の呼吸 玖ノ型
挑発するような言葉を投げかけながら大きく刀を振りかぶった茜は、より大きく派手な攻撃を仕掛けていく。
斬撃と共に、茜を中心に生み出される爆風は、あまりの威力に目を瞑りたくなる程。
しかし、その攻撃さえも、黒死牟は刀を抜くこと無く難なく全て交わしていく。
それはあまりにも無鉄砲で、真正面から見え透いた攻撃にも見えるだろう。
しかし、ここまでは茜の想定通り。
格上の相手を前に一人で足掻くのは得策ではないと判断した茜は、自分が目立つことにより後方の二人が身を隠す時間を稼ぐ事を優先した。
やはり攻撃は一つも当たらないし、息をするのが痛いくらいの緊迫感もあるが……
それでも少しでも時間を稼ぐことだけに意識を集中させる。
そうして大技を繰り出した茜が、着地と同時に太腿に隠したクナイを畳み掛けるように投げつけるとー……
「どれも悪くはない攻撃だった……」
甲高い音が響きクナイが弾かれたと気づいた瞬間、すぐ後ろから聞こえた声に茜は慌てて振り返る。
「がはっ、」
「「茜さん!!」」
瞬時に刀を身構えたが、時すでに遅し。
黒死牟が刀を抜き去る所すら見ないまま、茜は腹部の激痛に顔を歪めた。
無意識に一歩、二歩と後退しながら腹部へと手を伸ばせば、傷口から流れる血が彼女の手を真っ赤に染める。
そこで漸く自分が刺されたのだと理解した時には、目の前に次なる攻撃が迫っていて……
「っ、………」
「口ほどにも無い」
斬りつけられる寸前に今度こそ刀を構えるが、威力を受け流しきれなかった茜は後方の柱まで吹き飛ばされる。
その際頭を強く打ち付けたのだろう。
頭から血を流し今度こそ倒れ込んでしまった茜を、黒死牟は冷めた瞳で見下ろした。
それから茜にとどめを刺すつもりでゆっくりと彼女へ近づいていく黒死牟に、それまで傍観するしか出来ないでいた玄弥が怒鳴り声を上げる。
「茜さんにそれ以上近づくんじゃねェェー!!」
「………げんや…く、ん」
「おい!!テメェ聞いてんのか!?上弦だろうが、鬼舞辻だろうが関係ねェ!今日テメェらをぶっ殺すのは俺たち鬼殺隊だ!!」
それでも止まらぬ黒死牟に玄弥が怒号を飛ばした瞬間だった。
「玄弥ー!!」
瞬く間に玄弥の元へと移動してきた黒死牟の攻撃により、玄弥の体は真っ二つにされた。
茜に続き玄弥まで…仲間が目の前で倒れていく状況に、無一郎も何とか加勢しようと暴れるが体を貫いたままの刀はビクともしない。
〝抜けないっ!!くそ、抜けないっ!!〟
そうこうしている間に、黒死牟は玄弥の体に違和感を覚えたようでー……
「まだ絶命しない……胴を両断されても尚……三百年以上前………お前と同じく鬼喰いをしている剣士がいた」
そう言って柄へと手を伸ばした黒死牟は、目にも止まらぬ速さで玄弥の首へと刀を振り下ろす。
無抵抗で黒死牟を見上げることしか出来ない玄弥も、柱に磔にされたままの無一郎も、朦朧とする意識の中で必死に玄弥へと手を伸ばしている茜も……
その絶望的な状況に、誰もの脳裏に最悪の結果が過ったがー……、
「風の呼吸 肆ノ型
「……実弥さん、っ…」
その寸前、玄弥を守るように吹き抜けた一陣の風。
それから見知った羽織を視界に捉え、茜は思わず涙を浮かべた。