第四章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
屋敷から上がる爆炎に、茜は思わず立ちすくむ。
「お館様……まさか…そんなっ、……」
目の前の状況が理解出来ず、一瞬狼狽えた茜の耳に誰かの怒鳴り声が届く。
「テメェかァァァ!?お館様にィィ何しやがったァアーーーッ!!!」
それが実弥の声だと気づいた時には茜の足はすでに動き出していて、お館様をこんな目に遭わせた敵は何処かと刀を構える。
そうして屋敷の前まで来れば、鴉からの伝令に集結した柱の面々と、その先で悲鳴嶼と対峙する男の姿が目に止まる。
「無惨だ!!鬼舞辻無惨だ!!奴は頚を斬っても死なない!!」
すると、悲鳴嶼のかけ声で柱達は一斉に動き出す。
それは茜も同様で、初めて対峙する鬼舞辻に怒りこそ感じるが、自然と恐怖は感じなかった。
そして、迷うことなく刀を構えた茜は、渾身の力を込めて鬼舞辻へと斬り掛かる。
「風の呼吸 弐ノ型
しかし、奴を目の前に見据えた瞬間、突然足元を踏み外したような浮遊感に息を飲む。
「これで私を追い詰めたつもりか?貴様らが行くのは地獄だ!!目障りな鬼狩り共!!」
「くっ、……」
「今宵、皆殺しにしてやろう!!」
鬼舞辻の不気味な笑い声を耳にしながら、体はゆっくりと落下し始める。
苦し紛れに伸ばした腕も虚しく、茜の体は突然足元に現れた扉へと吸い込まれていくのだった。
******
果てしなく広がる城の中。
足場をなくし落下していた茜は、運良く手摺に捕まり難を逃れる。
しかし、すぐさま襲いかかってきた鬼の群れに息付く間もなく刀を振る。
「何処から湧いて出てくるの!?」
悪態をつきながら茜は、先程の光景を思い出し奥歯を噛み締めた。
茜にとって、お館様は尊敬に値する人だった。
鬼殺隊当主でありながら偉ぶる事もない。
それどころか、初めて会った時から彼は茜の意見をいつも尊重してくれた。
今、実弥の隣に立てているのも、柱補佐という立ち位置を与えてくれたお館様のおかげなのだ。
そんなお館様を救えなかった事、悔やんでも悔やみきれないが……
実弥の悲痛な叫びや、お館様の為に集結した柱の面々を思い浮かべ、皆も同じ気持ちだと心を鎮める。
「カァァァーーーッ死亡!!胡蝶シノブ死亡!!上弦ノ弍ト格闘ノ末死亡ーーーッ!!」
「……しのぶちゃんっ、」
しかし平常心を保とうにも、鴉から伝えられる仲間の訃報に、刀を握る手にも力が入る。
茜の鎹鴉もそんな思いを理解しているかのように茜に寄り添い、向かい来る鬼の攻撃をすり抜けながら茜を先導する。
「茜ー!!コノママ、他ノ柱ト合流スル!!」
「了解!……お館様、必ずや鬼舞辻を討ち取りますっ、」
強い決意を胸に次々と迫り来る鬼を斬り捨て茜は長い廊下を進んでいく。
そうして暫く進んだ先に見えた大きな扉。
茜は一切迷うことなく、その扉を開け放ちその中へと飛び込んだ。
******
「そう…案ずることはない……腕ならば…鬼となったらまた生える……」
「っ、……」
「まともに戦える上弦は最早私一人のみ……あの御方もお前を…認めて下さるはず……」
上弦の壱、黒死牟と対峙していた無一郎は、その圧倒的な力を前に苦しそうに唇を噛み締める。
黒死牟が抜刀した途端、一瞬にも満たない速度で振り抜かれた刀によって無一郎の左手首は宙を舞った。
それでも咄嗟に傷口を布で縛り、果敢に攻撃をしかけたが…
彼の抵抗虚しく、刀を奪われ、その刀身によって今度は柱に串刺しにされてしまった。
その上、こちらの意思など関係なく鬼にさせられようとしている。
絶体絶命の危機を迎え、先程まで強気な発言をしていた筈の無一郎の顔にも絶望の色が浮かぶ。
「あの御方に認められず死んだとしても……死とはそれ即ち宿命……故に…お前はそれだけの男だったということ……」
だが、その瞬間ー……
ドンッ、ドンッッ!!
鳴り響いた銃声が、無一郎へと伸びていた黒死牟の腕を止めた。
しかし肝心の銃弾は当たっておらず……
それどころか、もの影に隠れていた玄弥の背後に降り立った黒死牟は、玄弥の銃を握る左腕へと刀を無表情で振り降ろす。
「玄弥ーー!!」
「ぐぁっ、…」
その状況に無一郎は必死で刀から抜け出そうと藻掻くが、その努力も報われぬまま、彼の目の前で玄弥の右腕も斬り落とされる。
「ふむ…そうか……鬼喰いをしていたのはお前だったのか」
そして両腕を斬り落とされ抵抗できぬ玄弥目掛けて、黒死牟が刀を振り上げた時ー……
ごぉぉっと音を立てながら辺り一面に強風が吹き荒れる。
その風は鋭い刃へと変わり、玄弥へと迫っていた黒死牟を引き離す。
「遅くなってごめん!」
そして強風に思わず目をつぶっていた玄弥の耳に、聞きなれた声が届く。
「「…茜さんっ、」」
「次から次へと…懲りない奴らだ……」
玄弥を背中に庇いながら黒死牟を睨みつける茜だが、今まで感じたどの鬼にも勝る威圧感に、刀を握る手にも力が入る。
そんな茜を見据えて淡々と言葉を続けた黒死牟は、何処かこの状況を楽しむように口元を緩ませると、
「だが、これもまた一興……鬼狩りを滅殺するのが…あの御方のお望みだからな……」
刀へとそっと手を伸ばすのだった。