第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
富岡による〝茜を貰う発言〟があった柱合会議から数ヶ月。
「悲鳴嶼さん、聞いていますか?」
「ああ、だがその話については分からないと前にも言った筈だ……」
「だって、皆んなに聞いても何だかはぐらかされてしまって……直接風柱様に聞けば、もの凄い剣幕で睨みつけて知らないの一点張りだし!冨岡さんに至っては、えらい落ち込み様で……とても聞ける様な状態じゃないんです」
そう言って眉を下げた茜に、悲鳴嶼は手を合わせ涙を流す。
「ああ、なんて哀れな……」
「もう!悲鳴嶼さん、ちゃんと私の相談に乗って下さい」
「………それ以外の相談なら聞き入れよう」
そんな悲鳴嶼に、茜は小さくため息をついた。
「………では、稽古をつけて下さい。うーんっと強くなりたいんです」
そう言って頬を膨らませた茜に、悲鳴嶼は困ったように笑みを漏らした。
実弥が柱に就任して以来、茜は相変わらず暇を見つけては、柱達に稽古をつけて貰う日々を送っていた。
そんな彼女が本日訪れたのは、人里離れた山奥にひっそりと住まいを構える岩柱の悲鳴嶼の元だった。
******
あの一件があった直後、任務で顔を合わせた実弥から「冨岡なんかに教えを乞うなァァ」といきなり怒鳴り散らされた。
「え、なんの話?……風柱様に関係あります?」
「ア"?そんなもん俺から言えるかァ……いいからアイツには近づくんじゃねェェ!!絶対になァ!!」
「は、はぁ……?」
あまりに理不尽な物言いに茜は、訳も分からず首を傾げた。
それを不思議に思い、後日冨岡の元を訪れれば
「……柱合会議で、また不死川を怒らせてしまった」
と肩を落としてみせるものだから、茜は必死に彼を慰めたのだ。
それからと言うもの、事情を知っているだろう柱達に茜がその事を聞いて回れば、皆一様に苦笑いを浮かべた。
宇髄は嫁達と「冨岡に誑かされたらしいじゃねェか!」と茜を揶揄い、
煉獄は打って変わって「不死川が心配していた」と眉を下げた。
蜜璃は頬を染めながら「こういう事は、周りが口を挟むものじゃないわよね!?」と興奮気味に詰めよってくるし、
伊黒には哀れなものを見る様に目の前で大きなため息を吐かれた。
しのぶに関しては「冨岡さんは対人関係能力が皆無だと言う事を忘れていました。今回の件は忘れましょう」とにこやかに笑いかけてきた。
それ以上を問いかけても、皆曖昧な答えを返すのみで、ことの真相には辿り着けなかった。
こうなってしまえば残すは、無一郎と悲鳴嶼のみ。
だがすぐに物事を忘れてしまう無一郎には、失礼な話だが、最初から期待などしていない。
となれば、必然的に悲鳴嶼に聞くのが一番なのだが……あいにく悲鳴嶼にもお手上げだった。
******
あの日、会議が終わった彼にお館様は個別で任務を言い渡していた。それを聞き終え、庭に出れば珍しく冨岡だけが一人残っていた。
もしや何か話でもあるのかと、悲鳴嶼が冨岡に声をかければ「いや……」と呟き去って行ったのだ。
それを悲鳴嶼は首を傾げて見送った訳だが、一ヶ月程経った頃茜が訪ねてきて
「もう悲鳴嶼さんに教えて貰うしかないんです〜……皆んなのあの態度は何なんですか?なんで冨岡さんに近づいちゃ駄目なんですか?なんで風柱様はあんなに怒ってるんですか?なんで冨岡さんはあんなに落ち込んでるんですか?教えて下さい、悲鳴嶼さ〜〜〜ん」
と泣きつかれた事で、悲鳴嶼も何かあった事を理解した。まあ、何があったかまでは彼にも分からないのだが……
「……すまない槙野、私もそれについては知らぬのだ。私がお館様と話をしている間に、何かがあった事までは察していたが……私が助言できる事はない。不死川に聞くのが一番だろう」
「そ、そんな〜……」
そう言って肩を落とした茜は「滝に入って邪な気持ちを落ち着けて来ます………」と、その日はひたすらに滝に打たれていた。
******
前回の柱合会議から、もう数ヶ月経つと言うのに、未だに柱達に揶揄われる彼女は、ある意味皆に可愛がられているという証拠でもあるのだが……
「ぐっ、……風の呼気 参ノ型
木々の間を走りながら、自身が仕掛けた攻撃をギリギリで受け止めた茜に、悲鳴嶼はふっと笑みを浮かべた。
「槙野、気の乱れがそのまま攻撃に出ている」
「っ、分かってますー!!分かってますけどー、私の知らないところで勝手に話に巻き込まれてるのが、嫌なんですっ……て、ぎゃー!!悲鳴嶼さん話してる最中に、やめてください!!」
「ああ、なんて哀れな……」
「わあっ!危なっ!!」
悲鳴嶼の振るう竹刀をギリギリで避けた茜は、悲鳴を上げながらなんとか体勢を立て直すが、
「っ……!」
「………まだまだ精進が足りぬな」
更なる猛攻に、茜は呆気なく吹っ飛ばされた。
さすがは鬼殺隊一と謳われる実力者だ。
そんな彼相手にフラフラと立ち上がった茜は、竹刀を強く握りしめ再び強く駆け出した。
「まだまだ〜っ!!」
今日もまた彼女は強さを求めて駆け回る、
相変わらずの日々を送っていた。