第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
これは先日、柱合会議後に起きた
〝冨岡が茜を誑かしたせいで、不死川をブチギレさせた事件〟の裏側のお話しである。
(冨岡さん視点)
******
冨岡が、稽古をつけてやろうと茜を屋敷に招き、一撃で彼女を気絶させてしまったのは、つい先日の話だ。
前々から、顔を合わせば稽古をつけて欲しいと懇願してくる茜の姿に、冨岡はいつも手を焼いていた。
〝なぜ俺なんかに……〟
そう思っては困り果てていたが、どうやら茜は他の柱達にも度々稽古をつけてもらっていたようだ。
それを知ったのもつい最近。
同僚の胡蝶から「茜さんに稽古をつけてあげて欲しい」と頼まれた際だ。
勿論、その時も初めは提案を却下したのだが、
「冨岡さん知っていますか?茜さんは不死川さんの妹弟子なんですよ?」
「何?不死川の?」
思わぬ同僚との繋がりに、思わず胡蝶に聞き返してしまった。
「ええ。冨岡さんったら、いつも不死川さんを怒らせてばかりですから……もしかしたら茜さんが相談に乗ってくれるのでは?」
「そうか、不死川の……胡蝶、その話了承した」
「ふふ。冨岡さんならそう言うと思っていました。これ、茜さんの家までの地図です。よければ暇な時に尋ねてみては如何ですか?」
そう言われて、その足で茜の元へと向かったのだ。
******
だが実際の茜は、目を覚ましてから、ものすごい勢いで謝り倒し、富岡をまた困らせたわけだが……
「え?不死川……って風柱の?」
「そうだ。……いつも怒らせてしまう」
彼の名前を出し、そう口にしただけで、何となく察してくれた茜は、冨岡の相談にも乗ってくれた。
「そうですね〜、まずは優しく話しかけてみては如何ですか?もしもそれでも怒鳴ってくる時は、一度深く息を吸って冷静を保って下さい。きっとしっかりと言葉にすれば、冨岡さんの思いも伝わりますから」
「……そうか。槙野、感謝する」
「いえいえ。……っと言っても私も顔を合わせば、喧嘩ばかりで……冨岡さんに、そんな偉そうな事は言えないですが」
そう言って眉を下げた茜に、冨岡はとても驚いた。まぁ、表情は全く変わっていないのだが。
そして勝手に心の中で〝同志〟だと思い至った彼は、暇な時は稽古をつける約束と共に、
「……これからは茜と呼ばせてもらう」
「え?ああ、はい。……どうぞ」
彼女と仲良くなった、
………ような気がしていたのだ。
******
そして迎えた柱合会議。
会議が終わり、冨岡が不死川に話しかけようとすれば、既に彼の周りには他の柱が集まっていた。
それを遠目で見ていれば、皆口々に「茜を鍛えてやろう」と彼に提案しているものだから、冨岡もそこで考え込む。
そして、……そう言えば先日茜は
〝強くなって風柱様に認めて貰いたいんです〟
そんな事を言っていたと思い出す。
此処は彼女の友として、同志として自分が人肌脱ぐべきだろう。
そう考えた冨岡は、緊張した面持ちで不死川の背中に向かって声をかけた。
「……不死川、茜は俺が貰ってやろう」
だが「は?」と口を開いたまま固まった不死川に、冨岡はふむ、と考え込む。
どうやら上手く伝わっていないようだ。その時、先日の茜の言葉が頭の中で木霊した。
〝そうですね〜、まずは優しく話しかけてみては如何ですか?〟
「……不死川、茜は俺が貰ってやろう」
「だァァァ〜!!聞こえてるわァァァ!!何度も同じ事を言うんじゃねェェェェッ」
「……そうか」
やはり怒鳴られてしまった。
そう落ち込み始めた冨岡に、普段の彼より落ち着いた声色で、不死川が話しかける。
「アイツとは、そういう仲ってことかァ?」
怒鳴られる事なく続く会話に、冨岡は嬉しそうに口を開いた。
「そういう仲……?茜が縋り付いてくるから、相手をしてやっただけだが?」
「あ"ァ?」
と思ったら、また凄まれる。
〝もしもそれでも怒鳴ってくる時は、一度深く息を吸って冷静を保って下さい。〟
そこでまた彼女の言葉を思い出し、はぁ、と小さく息を吐く。すると再び、不死川から声がかかり
「冨岡……勿論茜の了承は得たんだろォなァァ?」
心の中で彼女の言葉を繰り返す。
〝きっとしっかりと言葉にすれば、冨岡さんの思いも伝わりますから〟
「………必要か?不死川さえ許可すれば良いものだと考えていた」
しっかりと不死川を見つめて、兄弟子の許可を取れるよう、お願いをする。いや、彼はお願いしたつもりだった。
しかし……
俯きながら震え出した不死川は
「………じゃあ何かァ、お前は茜を誑かしておいて、本人の許可すら取らずに事を進めるつもりだったって事かァ?
ふざけんなァァァ」
そう言って、いつも通り……いや、いつも以上に怒鳴り散らす。
「おい、不死川!落ち着けって!!」
「幾ら頭にきたからと言って、隊員同士の争いは御法度だ!!それに、君に何かあれば槙野が心配するだろう!?」
すかさず宇髄と煉獄が止めに入るが、何故彼が此処まで怒りを露わにするのか分からない。
「クソッ、離せやァァァ〜!!」
今にも殴りかからんとする不死川をズルズルと引きずり二人が庭から姿を消せば、それに続くように、伊黒も此方をひと睨みしたのちいなくなる。
何が起こったか理解できぬ冨岡は、一人その場に残された。
「冨岡、テメェ……今度茜に近づいたら、タダじゃおかねェ〜!!」
遠くに聞こえる小さくなった怒鳴り声が、ポツンと一人残された冨岡の耳に届いた頃、後ろから軽く肩を叩かれる。
「冨岡さん、今回ばかりは救いようがありませんね」
そう一言残し、去っていったしのぶの後ろ姿を
冨岡はただ呆然と見送った。