第四章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
茜が怪我の治療で他の隊士に遅れを取る中、遂に始まった柱稽古。
「聞いてくれよぉぉぉお〜、炭治郎ぉぉぉお〜!!」
その稽古に参加中の善逸は、今日も今日とて炭治郎の病室へと顔を出し、おいおいと泣き言をぼやいていた。
「あのオッサン、何で俺にばかり……少し顔がいいからって、頭おかしいんじゃない!?」
「まぁまぁ善逸君、落ち着いて。宇髄さんは派手好きな色男だけど……とっても面倒見がいい人よ?」
そんな善逸に、たまたま病室へ訪れていた茜が苦笑いを浮かべて口を開く。
彼女はまだ柱稽古に参加こそしていないものの、元々個別に宇髄からも稽古を受けてきているのだ。
それこそ血反吐を吐く様な厳しい稽古を、だ。
俊敏な身のこなしを身につけるための打ち込み稽古や、体力作り。それに加えて、彼の嫁達からはクナイの扱いも学んでいる。
どれもこれも厳しい稽古ではあるものの、彼の動きはどれを取っても洗練されていて無駄がない。
やはり柱になるだけあって、抜きん出た実力の持ち主なのだ。
……だが、それは勿論、宇髄に限った話ではない。
他の柱の稽古もまた厳しいものばかりではあるものの、そうやって追い込まれるからこそ得るものがある。
それをきっと今回稽古を受ける誰よりも理解している茜は、善逸の泣き言を聞きながら眉を下げて笑いかけた。
「宇髄さんは善逸君に期待しているのよ!いいなぁ〜、私も早く稽古をつけて貰いたいなぁ〜」
「えええ!?茜さん、あの稽古を受けたいんですか!?皆んな、ぶっ倒れる位しんどいのにィィィ!?」
「当たり前じゃない!柱は忙しいのよ?一人一人から稽古をつけて貰えるなんて、滅多にない事なんだから!」
そう言って鼻息を荒くした茜は、私なんて頼み込んで頼み込んで……漸く稽古をつけて貰っていたのに…、と何故か羨ましそうに善逸を見つめた。
それに炭治郎が大きく頷くのを尻目に、当の本人、善逸はなんとも失礼な言葉を口にする。
「はぁぁぁあッ!?前から思ってたんですけど、茜さんちょっと馬鹿なんじゃない!?なんで自分から頼み込むの!?」
「善逸!!茜さんになんて事言うんだ!!」
「いやだね、俺は言わせて貰う!だいたい、上弦相手にクナイ一本で立ち向かうとか、どんだけ勇敢なんだよ!!?」
「……三本だけどね?」
「そう言う問題じゃないんだよぉぉぉお〜!!」
だがそんな善逸の突っ込みに、キョトンと小首を傾げた茜は、実弥さんにも同じこと言われたな〜……なんて呟いて、思い出し笑いを浮かべている。
それに善逸が頬を引き攣らせば、炭治郎もそれに釣られるようにピタリと動きを止めた。
「‥‥刀を持たずに上弦と戦ったこと、よく不死川さんに怒られなかったですね」
「え?怒鳴られたよ?実弥さんたらめちゃくちゃ怒ってて……今度の柱稽古だって、行かなくていいって言うんだもん。困っちゃうよ〜…」
「「ええっ!?」」
……それなのに、そんな呑気な発言をしていていいのだろうか。
茜の予想外な返答に、二人は思わず素っ頓狂な声を上げる。
それにクスクスと笑みを浮かべた茜は、更に二人を驚かせる言葉を続けた。
「大丈夫。私もちゃ〜んと稽古に参加するから!」
「ええ!?茜さん、それはまずくないですか?不死川さんの反対を押し切って参加なんかしたら……あの人絶対怒りますよ?」
「そ、そ、そうだよぉぉ〜、炭治郎の言う通り……風柱って言ったら、あの鬼より怖いで有名な人でしょ?無理無理無理、怒らせるとか絶対良くないって!!」
「ん?いいの、いいの!実弥さんだし!……何とかなるわよ」
そう言ってケタケタと楽しそうに笑い声を上げた茜に、何ともならないだろぉぉ…なんて事を考えながら、善逸は信じられないと頭を抱えるのだった。
******
翌日ー……、
「遅い遅い遅い!!何してんのお前ら!!意味分かんねェんだけど!!」
鬼の形相で竹刀を振り回す宇髄に、隊士達は半泣きで野山を駆け回り……
「ギィア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ーッ!!」
善逸は、一際汚い叫び声を山中に響かせていた。
昨夕、厳しすぎる稽古の文句を散々口にしていた善逸だが、結局茜達に励まされ、今日も音柱邸へと訪れていた。
何かとすぐに不満を口にし、嫌だ嫌だと泣き出してしまう善逸だが、なんだかんだ彼も真面目な少年なのだ。
「コラァ、善逸!!誰が休んでいいっつたァ!?」
しかし、一緒に上弦の鬼と戦った仲であるというのに、宇髄は情け容赦ない言葉を浴びせてくる。
というより、他の隊士より個別認識されている分、より厳しさを感じてしまう……と言った所か。
そんな善逸に、宇髄が竹刀を叩きながら近寄っていく。
「善逸、てめぇは特別訓練だ」
「ヒィィィッ、……ま、待ってェ、……ッ」
やはり、自分だけやたら厳しいじゃないかと真っ青になる善逸だが、ハッと我に帰り先輩隊士達に助けを求める。
……しかし、気づいた頃には時すでに遅し。
脱兎の如く立ち去っていく先輩隊士達を目にして、善逸は呆然と立ち尽くす。
そして、一体どんな訓練なのか……と顔面蒼白で見つめる善逸に、宇髄はかなり上から目線で命令を下す。
「温泉を掘れ」
「は?……はあああああああああ!?」
どんな厳しい訓練が待ち構えるのかと思っていれば、ただの嫌がらせだったのか。それなら何時迄もそれに付き合う義理はない。帰らせてもらう、と当然ながら善逸も騒ぎ出す。
それに、まあ待てなんて呼び止めた宇髄は、善逸の顔の前にビシッと指を立て、真顔でこう呟いた。
「温泉を掘り当てたら、混浴にするつもりだったんだが……」
その一言に、善逸はピクリと体を揺らす。
「雛鶴、まきを、須磨、あいつらは温泉に目がねェからな」
「やらせていただきます!!!」
宇髄の提案に飛びついた善逸は、それから数日、訓練と言う名の元で温泉掘りに没頭する。
だが茜の思う〝追い込まれるからこそ得るもの〟。
……果たして、この訓練で彼が何を得るのかは謎である。