第四章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
刀鍛冶の里が奇襲を受けてから数日ー……
「あーあァ、羨ましいことだぜぇ…なんで俺は上弦に遭遇しねえのかねぇ」
「こればかりはな、遭わない者はとんとない」
気怠げに口を開いた実弥に、伊黒も同調するように頷いた。それから頬や額にまだ傷が残る二人へと視線を移すと、落ちついた声色で問いかけた。
「甘露寺と時透、その後体の方はどうだ?」
「あっ、うん!ありがとう。随分よくなったよ」
「僕も……まだ本調子じゃないですけど……」
蜜璃と無一郎の怪我が落ち着いたのを見計らい、この日産屋敷邸では緊急柱合会議が開かれていた。
本部へと集められた柱達は、お館様が姿を現さない間、皆口々に今回の上弦の襲撃について意見を述べていた。
「これ以上柱が欠ければ鬼殺隊が危うい…‥死なずに上弦二体を倒したのは尊いことだ」
「今回のお二人ですが傷の治りが異常に早い……お二人より軽症だった茜さんですら、未だに蝶屋敷で療養して頂いてるというのに……ねえ、不死川さん?」
悲鳴嶼に続き、しのぶが何があったのでしょうか?と小首を傾げれば、実弥は苛立ったように口を開く。
「ケッ……俺が知るかよ。それにアイツは今、関係ねェだろうがァ……」
「あらあら、そうでしょうか〜」
ニコニコと笑みを浮かべるしのぶに、これ以上答えるつもりはないと実弥は腕を組みながら瞳を伏せた。
しのぶが言った通り、茜の怪我は完治までまだ数日かかるだろう。
それでも彼女の刀が折れてしまうまでは、他の柱と連携して任務をこなしていたのだし、補佐などとは口先ばかりで、実際は他の柱達と担う負担は何ら変わりはないのだ。
その為他の柱からは、茜も今回の招集に加えるべきだと意見が上がったりもしたのだが、茜を危険から遠ざけたい実弥の一存で、今回は彼女が此方に顔を出すことはなくなった、と言う訳である。
「その件も含めてお館様からお話があるだろう」
最終的にそれまで傍観していた冨岡がそう締めくくれば、彼らの背後の襖が開き、あまね様が顔を出す。
「大変お待たせ致しました。本日の柱合会議、産屋敷耀哉の代理を産屋敷あまねが務めさせて頂きます」
そう言って深く頭を下げた彼女の言葉を合図に、柱合会議は始まりを迎えた。
******
それから数時間後ー……
ガラリと開かれた扉を見つめ、茜は驚いたように声を上げた。
「あれ?実弥さん、もう柱合会議終わったんですか?」
「……まあなァ」
それに気怠げに返事をしながら寝台の前までやってきた実弥に、茜はパチパチと瞬きを繰り返した。
まぁ、茜が驚くのも無理はない。
今朝方、もはや日課になりつつある茜の見舞いに訪れた実弥は、お館様からの緊急の呼び出しがあり帰りが遅くなる事を告げて、意気揚々と病室を後にしたのだ。
それからまだ三、四時間程しか経っていないし、日が沈むどころか、まだお日様は天高く……せいぜい昼を少し過ぎた位とでも言うのだろう。
そんな時間に帰ってきた兄弟子に、流石の茜も険しい表情で問いかけた。
「恐らく今回の襲撃についての報告も兼ねている事は想像していましたが、一体緊急招集を掛ける程の内容とは何だったんです?」
「あァー……いや、大した事じゃねェェ。それより悲鳴嶼さんの提案で柱稽古を行う事になったァ」
「柱稽古?」
歯切れの悪い返答に一瞬怪訝な顔を浮かべた茜だが、その後に続いた聞き慣れぬ単語にキョトンと小首を傾げて見せた。
それに実弥はため息を吐くと、呆れたように口を開く。
「テメェが今まで他の柱につけて貰っていた稽古を平の隊士達にも行うって事だァァ」
「ああ、なるほど」
「何故かは知らねェーが、刀鍛冶の里を襲撃した以来鬼どもの動きはぱったりだからなァァ……この機に隊士達の力量を少しでも上げなきゃんねェ。」
「‥‥確かにそれは必要だとは思いますが」
なんだか腑に落ちない表情の茜を無視して、実弥はそのまま説明を続けた。
隊士達は順々に柱の元を訪れて、合格できた者だけが次の稽古へ進める事。
それから隊士に稽古をつける合間を見計らい、柱同士でも連携を取り合えるように稽古をする事。
そして最後に、お前は散々稽古をつけて貰っていたんだから、今回は他の柱の元を訪ねる必要はないだろうと続けた実弥に、茜はスッと目を細めた。
悲鳴嶼からの提案は勿論茜も賛成だが、そもそもお館様からの緊急招集が報告のみだとは考えにくい。
それに加えて、他の柱との接触を防ごうとするその口ぶりに、何か良からぬ隠し事でもされているのでは…と、困ったように眉を下げた。
しかしまさかこの会議で、身体能力を極限まで引き出せる痣の代償と、命を削ったとしても柱達が痣を出現させられるようにと、あまね様に頼み込まれた事を、この時の茜は全く気づいていなかった。