第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
半年に一度の柱合会議。
お館様を慕う柱の面々に、彼は優しい言葉を投げかけた。
「おはよう、皆。今日はいい天気だね。またこうして皆で集えた事、嬉しく思うよ」
「お館様におかれましてもご壮健で何よりです!!益々のご多幸を切にお祈りする!!」
「ありがとう、杏寿郎」
お館様の言葉に煉獄がそう返事を返し、始まった柱合会議。
少し前に柱に加わったばかりの時透や甘露寺にも分かるように、各地の被害報告や、各々が持ち寄った鬼の目撃情報、各自の担当地区の確認等を入念に皆で確認し合った。
「では、各自今の役割を忘れずに。……日々、こうしている今も、鬼の被害は拡大している。皆にはいつも無理をさせてしまっているが、これからも皆の活躍に期待しているよ」
「「「「御意」」」」
お館様の言葉に皆が頷いたところで、今日の会議も無事に終わりを迎えた。
******
お館様に一声かけ、部屋を退出すれば、皆はぞろぞろと屋敷の庭へと集まっていく。
いつもなら冨岡や時透など、他人に興味がない連中から、各自解散していくのだが
「不死川」
今にも帰路に着こうとしている彼の背中に声をかけたのは、彼の友人でもある伊黒だった。
「伊黒かァ。どうしたァ?」
「いや、大した事ではないが…… 槙野の事だ」
「……アイツがどうしたァ?」
「いや、……もし不死川さえよければ、槙野は俺が鍛えてやってもいい」
「は?……それは継ぐ子としてって事かァ?」
それに腕を組んで考え込んだ伊黒は「……そうだな」と口を開いた。
「彼奴はまだまだ未熟者だ。すぐ調子に乗るし、爪も甘い……だが、根性だけはある。それに槙野は意外と使えるからな」
「ふーん、そうかよォ…………まあ、茜が頷けばいいんじゃねェかァ?」
眉間に皺を寄せながら、実弥が伊黒に返事を返していれば、後ろから突然声がかかる。
「成る程っ!!槙野の許可さえあれば、継ぐ子にしてもいいのか!!」
あァ?と鋭い視線を送りながら、実弥が声の主を確認すれば、笑顔を浮かべた煉獄と目が合った。
「槙野には、俺もよく稽古をつけてやっている!!根性も勿論あるが、彼女は筋がいい!!誰か師がつけば、恐らくかなり伸びるはずだ!!」
「伸びる?……アイツに才能なんかねェだろう……本当は今すぐにでも隊士を辞めればいいとすら思うがなァ」
「お前ら面白そうな話してんな!!」
すると実弥の肩に腕を回した宇髄が、俺も混ぜろと言わんばかりにいきなり話に加わってきた。
「不死川んとこのじゃじゃ馬なら、俺も稽古をつけてやってるぜ?」
「……それは、この間の会議でお前から、散々聞かされただろうがァ」
「ははっ!そんなつれない反応すんなって!」
そう言ってゲラゲラ笑う宇髄に、実弥と伊黒は既に面倒くさそうな表情を浮かべている。
煉獄だけは「日々鍛錬を欠かしていないようだな!!関心関心!!」と一人嬉しそうに頷いていた。
そんな彼らを気に留める事もなく、ニヤリと笑みを深くした宇髄は、実弥に向かって口を開いた。
「槙野ならうちで面倒みてやってもいいぜ?俺の嫁達が槙野の事を気に入っててな〜、なんなら四人目の嫁にしてやってもいい」
「宇髄!!君には、奥方が既に三人もいるではないか!!」
「まあな!だが、三人も四人も同じだろ?……不死川、お前もそう思うだろ?」
むむむ、と考え込んでしまった煉獄と、明らかに此方を揶揄っている様子の宇髄に、実弥は益々顔を顰めた。
そんな時、
「……不死川、茜は俺が貰ってやろう」
既にこの場にいないと思っていた、冨岡の声が割って入った。
「………は?」
普段なら、話しかけても無視を決め込む男からのいきなりの発言に実弥は驚き、動きを止めた。
〝……貰う?貰うってなんだァ?いや、さっきの流れに割り込むって事は、嫁にって事かァ……?いや、まさか……相手は冨岡だぞ、あり得ねェェ〟
実弥の脳内は一瞬でパニック状態である。
そんな彼の心情を知ってか知らずか、冨岡は再び口を開いた。
「……不死川、茜は俺が貰ってやろう」
「だァァァ〜!!聞こえてるわァァァ!!何度も同じ事を言うんじゃねェェェェッ」
怒鳴る実弥に対し、冨岡は「………そうか」と興味なさげに呟いた。
それに更に苛立ちを増した実弥だったが、茜の兄弟子としてきちんと確認しなければならいと、冷静を装い問いかけた。
「アイツとは、そういう仲ってことかァ?」
「そういう仲……?茜が縋り付いてくるから、相手をしてやっただけだが?」
「あ"ァ?」
実弥だけでなく、その場に居合わせた皆が驚き動きを止める中、冨岡は無表情でため息を吐いた。
ビキッ
そんな冨岡の態度に、実弥の額には青筋が浮かび上がる。今にも殴りかからんとする腕を、何とかなけなしの理性で押さえ込み、もう一度確認の為に口を開いた。
「冨岡……勿論茜の了承は得たんだろォなァァ?」
「………必要か?不死川さえ許可すれば良いものだと考えていた」
その一言でその場の空気が凍りつき、実弥は下を向いて震え出す。
「………じゃあ何かァ、お前は茜を誑かしておいて、本人の許可すら取らずに事を進めるつもりだったって事かァ?
ふざけんなァァァ」
そう言って怒鳴り散らす実弥の怒りは頂点で、冨岡に殴りかかろうとした所で、煉獄と宇髄に抑え込まれた。
「テメェら、離せやァァッ!!冨岡ァァァ〜!!ぶっ殺してやる!!」
それを見ていた伊黒に「……なんで不死川は怒っている?」と冨岡が話しかければ、蛇のように睨まれる。
「貴様の考えには吐き気がする」
「………」
「何とか言ったらどうなんだ?」
そんな彼らの元に実弥の怒号が鳴り響く。
「冨岡テメェ、ぶっ殺す!!」
「おい、不死川!落ち着けって!!」
「幾ら頭にきたからと言って、隊員同士の争いは御法度だ!!それに、君に何かあれば槙野が心配するだろう!?」
宥める二人もとても大変そうである。
「クソッ、離せやァァァ〜!!」
いや、大変なんてものじゃない。
本気で暴れる実弥を押さえ込むのは骨が折れるのだ。
……と、なれば
顔を見合わせ頷き合った宇髄と煉獄は、実弥を羽交い締め状態でズルズルと引きずり、鬼殺隊本部を後にする。
それに続くように、冷めた目つきで睨みを効かせていた伊黒もいなくなり、冨岡は一人その場に残された。
「冨岡、テメェ……今度茜に近づいたら、タダじゃおかねェ〜!!」
遠くに聞こえる小さくなった怒鳴り声が、ポツンと一人残された冨岡の耳に届いた頃、後ろから軽く肩を叩かれた。
「冨岡さん、今回ばかりは救いようがありませんね」
そう一言残し、去っていったしのぶの後ろ姿を
冨岡はただ呆然と見送った。