第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「それで!!その後どうなったの!?」
「…‥蜜璃ちゃん、落ち着いて」
鼻息を荒くして詰め寄ってきた蜜璃に、茜は頬を引き攣らす。
お互い同じ怪我人の筈なのに、どうして彼女はこんなにピンピンしているのか……
腑に落ちない所はあるものの、あらぬ想像に胸弾ませる友人は少しばかり暴走するところがある為、ひとまずそれは後回しにする。
「蜜璃ちゃんが思っているような事は何もないから」
だが、そんな事を全く気にしていない蜜璃は、頬に手を当てキャー、キャーと大興奮で口を開く。
「不死川さんと恋仲に「なってないよ?」
「………へ?」
しかし、茜のその一言で流石の蜜璃もピタリと動きを停止した。
「茜ちゃんは、不死川さんが大切だって伝えたのよね?」
「うん」
「それに不死川さんは、いつも俺の隣で笑ってろって返事をしたのよね?」
「うん、そうだね」
「………それなのに恋仲じゃないの?」
可愛らしい顔をムッと顰めて、なんでなんで!?と詰め寄った蜜璃に、茜は困ったように眉を下げた。
「側にいていいって言って貰えただけで私は満足だもの。それ以上は望んでないよ?」
だがそうは言われても、二人が互いを思い合っているのは一目瞭然で、それを自分の事のように嬉しく感じている蜜璃は、納得いかないとでも言うように、むむむー!と眉間の皺を深くした。
******
今から三日前ー……
茜の病室に駆けつけ珍しく弱々しい言葉を呟いた実弥は、照れ隠しのように茜の髪をガシガシと手加減無用で掻き乱すと、今回の刀鍛冶の里襲撃の詳細を聞き出していた。
「……でェ?茜が気絶している間に、もう一体の上弦も倒されていたっつーわけかァ?」
「はい……恥ずかしながらそんな感じです。それに今回は私が一番軽症だったようで、他の皆はまだぐっすり眠ってるって、しのぶちゃんが…」
それに興味なさげにふーんと返事を返し、何やら眉間に皺を寄せた実弥は、先程ぐしゃぐしゃと掻き乱した茜の髪へと手を伸ばし、不機嫌そうに口を開く。
「女は髪が命って言うだろうがァァ……そんな簡単に切るんじゃねーよ」
「へ?……ああでも、私そんなに髪に思い入れはなかったし、また伸びますから」
「だからってなァ…折角綺麗な髪してんだから」
「…‥綺麗…‥実弥さんは長い髪が好みなの?」
「なっ!…んな事言ってねーだろうがッ!!短くても、俺は別にっ、…」
そう言ってガタンと音を立てながら、椅子から立ち上がった実弥は、赤くなった頬を隠すようにいつもの口調で捲し立てる。
「とりあえずお前は早く怪我を治しやがれェ…‥屋敷を無断で飛び出した事と、今回の無鉄砲すぎる行動を許した訳じゃねーからなァ。怪我が完治したらみっちり稽古をつけてやる」
「はーい」
それに茜が満面の笑みで答えると、実弥は小さく舌打ちを鳴らし、さっさと寝やがれェ…なんて言いながら病室を去って行ったのだ。
一瞬漂った甘い空気も、今思えば気の所為だったのではないかと思うほどの短い時間で……
けれども、それでもあの口下手な兄弟子が『隣にいろ』と言葉にしてくれた事が嬉しかったのだ。
******
ふふ、と嬉しそうに頬を緩める茜を見つめ、蜜璃は小さく息を吐く。
本当は、どこまでも一途な友人の想いに彼にも応えて欲しいところではあるのだが、本人がこんなにも幸せそうなのだから、これ以上他に言うこともできないだろう。
「髪型整えてもらったのね、茜ちゃんに似合っているわ」
「あー……うん、しのぶちゃんに切ってもらったの。『なんでこんな大胆な事をしたんですか』って、小言も言われちゃったけど……」
「それはそうよ!!私も最初茜ちゃんを見た時は驚いたもの!!」
それに肩をすくめた茜は、私よりボロボロの蜜璃ちゃんに泣きつかれた時はどうしようかと思った…と、眉を下げながら笑いかけた。
その度に肩の高さで揺れる髪は、以前の茜のものと比べれば随分と短くなってしまったが、明るい彼女にそれはとても似合っているようにも思えた。
「‥‥そう言えば、体はもう大丈夫なの?」
「うん、もうバッチリ!!なんでかは分からないけど今回は傷の治りがとっても早くって!!」
「凄いなぁ〜……私なんかまだ安静にってアオイちゃんに怒られてばかりで。早く任務に戻らなきゃいけないのに」
そんな蜜璃の心境など知らず、もう次の任務について考え始めている茜に、蜜璃はクスクスと笑みを漏らすと、安静にしていなくちゃと口を開く。
「無一郎君の怪我も落ち着いたようだから、明日にも本部で柱合会議が開かれる予定だもの。あまり暴れすぎると、お館様まで話が筒抜けになっちゃうんじゃないかしら」
「ええ!?それは‥‥困る、」
「ふふっ、もう茜ちゃんたらっ」
茜の反応に、クスクスと笑いだした蜜璃に釣られ、茜もあははと笑い出す。
明日の会議で、これから彼らに求められる代償のことなんて、今の二人にはこれっぽっちも知る由はなかったー……。