第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
圧倒的な速さで上弦を斬り捨てた無一郎に、茜と鉄穴森はポカンと間抜けな表情を浮かべていた。
「む、無一郎君……体は?あの鬼の毒を受けていたでしょう?」
だが、ハッと我に帰った茜が、慌ててその背に声をかければ、無一郎はフラフラと振り返る。
その顔が真っ青な事に気がついた鉄穴森も、あたふたしながら駆け寄っていく。
「時透殿大丈夫ですか?………それに茜さんも、そのお怪我……髪だって……」
あわあわと取り乱しながら口を開いた鉄穴森に、無一郎と茜は同時に大したことはないと首を振る。
「これくらい……全然、平気ですよ……」
「大丈夫、大丈夫……僕、すごく今気分がいいんだ……それにすぐ炭治郎達のところへも行かないと……」
「ええっ!!でも、あの……お二人とも顔色が物凄く悪いですが……本当に大丈夫ですか?」
「全然、大丈夫だってば……僕の話……、聞いてる?」
しかし、茜の隊服は血でべっとりと汚れているし、無一郎に至っては漸く口を開いたかと思えば、プルプルと震え出している始末。
「んっ?時透殿、なんだかハァハァして……体も震えていませんか?」
「いいからさ君は……コテツクンノ、トコヘ…イッテ……クレナイ…カナ……」
そう口にした瞬間、口から泡を出し倒れ込んだ無一郎に、茜と鉄穴森は悲鳴をあげる。
「ええー!!?」
「無一郎君っ!!わぁ、ちょ……鉄穴森さん落ち着いて」
二人して彼に駆け寄ると、慌てた鉄穴森がぐったりと横たわる無一郎の体を揺らし出す。
それにはすかさず茜も静止させようと声を上げるのだが……
「横向きにしたほうがいいです」
背後から聞こえて来た声に、二人は驚き動きを止めた。
「小鉄君、無事だったのね「うわ〜!!小鉄少年の亡霊〜〜〜ッ!!」
茜の言葉を遮って、ギャーーー!と、またしても取り乱し始めた鉄穴森に、死んでませんと小鉄は冷静にツッコミを入れる。
「……いやいや、亡霊って自分でわからないものなんですよ!!死んでるのが!!」
「いやいやいや、生身なので」
「……いやいやいやいや、鳩尾そんな出血して死んでないはずないでしょうが!!」
そんな二人のやり取りを眺めていれば、上弦を倒した気の緩みが訪れて来たのだろう。
茜の視界もぐらぐらと揺れ始める。
〝……まずい、血を失いすぎたせいで……〟
そっと二人から離れ、近くの木に背中を預けるようにして座り込んだが最後、茜はそのまま静かに意識を手放した。
それから暫くー……
「……茜さん?て、鉄穴森さん、大変です!!茜さんもここで気絶しています」
「ええっ!!?だからあれ程大丈夫か聞いたのにっ!!」
気を失った茜に気づき小鉄と鉄穴森が騒ぎ出したのは、そこから更に数分後……
その間、鋼鐵塚は我関せず。
相変わらずシャコシャコと必死で刀を研ぎ続けているのだった。
******
……それから数時間後、此処は風柱邸の庭の一角。
物凄い勢いで風が吹いたかと思った瞬間、四方に立っていた巻藁が一斉にドサッ、ドサッと音を立てながら崩れていく。
その真ん中に立つ男は、機嫌が悪そうに眉を吊り上げると盛大に大きな舌打ちを落とす。
「チッ、茜の野郎……いつになったら帰って来やがるんだァ」
茜が家を無断で飛び出してから半月。
今日も今日とて、実弥は八つ当たり気味に、朝の鍛錬に打ち込んでいた。
いつも稀血に頼る戦いをすれば、口うるさく傷口の手当てをする癖に、自分の事は後回し。無茶ばかりする茜の姿に、実弥も今回ばかりは少しキツく当たった自覚はある。
しかし、だからと言ってまさか屋敷を飛び出すとは……
「あの野郎……帰って来たら、覚えてやがれェ……」
そんな小言を吐き捨てながら、ふぅ〜ッと一息ついていれば、見覚えのある鎹鴉がこちらに向かって飛んでくるのが目についた。
「実弥!実弥!!」
「あァ?茜の鴉かァ……なんだ…アイツ、やっと帰って来る気になったのかァ?」
手ぬぐいを片手に、ガシガシと汗を拭っていれば鴉は切羽詰まったように声を荒げた。
「刀鍛冶ノ里ガ、上弦二体ニ襲撃サレタ!!」
「なっ、上弦が二体ッ!?……刀鍛冶の里にって、おいちょっとまてェ……茜はどうしたァ」
そう言って詰め寄ってきた実弥に、鴉は大きく羽を開くと、相棒宛らの口の悪さで言い捨てた。
「重症ダガ生キテル、安心シロ!!……実弥行クゾ、蝶屋敷ヘ早クシロ!!」
「チッ、テメェ……んな事、言われなくても分かってるわァ!!」
それに舌打ちを落とした実弥は、縁側に脱ぎ捨てていた羽織を引っ掴むと、急いで屋敷を飛び出した。