第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ということが昨日あってさ。刀の研磨が終わるまで三日三晩かかるらしくて、研ぎ終わるのが明後日になるんだ……」
そう言って眉を下げた炭治郎は、目の前で眉間に深い皺を刻む同期に向かって言葉を続けた。
「その研ぎ方すごい過酷みたいで、死んじゃった人もいるとか言ってて、心配だよ……絶対覗きに来るなって言われてるんだけどさ、見に行ってもいいかな?」
「知るかよ、出てけお前!!友達みたいな顔して喋ってんじゃねーよ!!」
そんな炭治郎に、話かけられた張本人でもある玄弥は、ブチ切れながら口を開く。
だが炭治郎はというと、既に俺たちは友だちじゃないのか?と軽く戸惑っているようで、玄弥は先程に続けて、炭治郎を怒鳴りつけた。
「違うに決まってんだろうがっ!!てめぇは俺の腕を折ってんだからな、忘れたとは言わせねえ……」
「あれは女の子を殴った玄弥が全面的に悪いし、仕方ないよ」
しかし炭治郎はさも当然だと、キッパリ笑顔で言い切った。そして煎餅を一緒に食べないか?と呑気に尋ねるものだから「下の名前で呼ぶんじゃねぇ!!!」と、声を荒げた玄弥は、勿論煎餅も要らないと突っぱねた。
そこへ、部屋の外から声がかかる。
「……炭治郎君、今ちょっといい?」
それに二人がピタリと動きを止めると、控えめに開いた襖から、茜がひょこっと顔を出す。
「賑やかだと思ったら、玄弥、君?…も一緒だったんだね」
「………うす」
「……あれ、私邪魔しちゃった?出直そうか?」
先程までギャーギャーと言い争う声が廊下にまで届いてたというのに、急に静かになってしまった玄弥に、茜は困ったように眉を下げた。
「いえ、全く!!な、玄弥?」
「………うす」
「て事なので、気にしないで下さい!!茜さんもお煎餅食べますか?」
だが、すかさず炭治郎がそれを否定し、さっと茜にまで煎餅を差し出すものだから「……あ、ありがとう」なんて、流石の茜もそれには少し戸惑いながら、結局はそれを受け取った。
「茜さん、何か御用でしたか?」
「へっ!?あぁ、うん……その、炭治郎君の刀の研磨に時間がかかるじゃない?もし良かったら、暇な時に手合わせしてくれないかな?」
「手合わせ?それは全然構いませんが……どうしたんですか、急に」
「いや、実は……」
そう言って眉を下げた茜は、先程、霞柱の無一郎君と偶然すれ違ったんだけど……と口を開いた。
その名前を聞いた炭治郎は、ふと、先日自分に向けられた冷たい態度を思い出し、まさかと眉間に皺を寄せる。
だが、彼の読みは的中したようで、もしも暇な時間があれば稽古をつけて欲しいとお願いした茜を、無一郎は一刀両断したのだとか。
「……今まで何度か稽古をお願いした時も『忙しい』と断られてたからね……。はは、はぁー……」
「茜さん元気出して下さい!俺も、時透君には色々と言われましたけど……あの時、彼からは悪意の匂いはしなかった。きっと悪気はないんです」
ため息を吐いた茜に、炭治郎は慌てて口を開いた。しかし、断られる事を最初から分かっていた茜は、さほど気にしていないようで、クスクスと可愛らしく笑うと「大丈夫だよ?ありがとう」と返事をした。
「じゃあ、明日手合わせお願いします。あ、もしよかったら玄弥君も一緒にどうかな?」
「………いや、…俺は……その、……」
すると、突然話かけられた玄弥は、一瞬茜を見つめた後、戸惑いながら視線を逸らした。
その後もオロオロと視線を彷徨わせる彼は、どうやら人見知りのようだ。先程までの怒鳴り声が嘘のように大人しくなってしまった玄弥に茜は小さく笑みを漏らす。
そして、玄弥が視線を逸したのをいい事に、茜はじっと彼を観察する。
……見れば見るほど実弥に似ている目の前の青年。まぁ、不死川なんていう名前からして、あの兄弟子と血のつながりがある事は確信していたのだが。なんで弟も鬼殺隊士だと教えてくれなかったんだろう。
そんな事を考えながら、ジーッと玄弥を見つめた茜は、少しだけ口にするか迷った後で、遠慮がちに問いかけた。
「玄弥君はさ……お兄ちゃんとか、いたりする?」
「兄貴?……アンタっ、!兄貴を知って……んですか?」
「え、えーっと……まあ、うん」
だがその問いかけに、一瞬敬語も忘れて声を上げた玄弥の姿に、質問をした茜の方がキョトンと首を傾げてしまった。
「す、すんません……」
それに思わず頬を染めた玄弥が、照れ隠しで頬をぽりぽりと掻いて見せるものだから、茜は無意識に口角を上げた。
蜜璃ちゃんの話では弟はいないと言っていたみたいだけど……この反応からして玄弥君は、実弥さんの事を嫌ってはいないみたい。
そう思い至った茜は、玄弥に優しく笑いかける。
「実弥さんと喧嘩してるなら、私が玄弥君の味方になってあげる!…‥と言っても、今、私が家出中みたいなものだけどね」
「…‥家、出?」
「ふふっ、もし何か困った事があればいつでも相談してね?」
そう言ってクスリと笑みを深めた茜は、すくっとその場に立ち上がる。
「じゃあ、二人とも。楽しそうな会話の途中でお邪魔しました。」
「あれ?茜さん、もう行っちゃうんですか?」
「うん、私は鍛錬のお供を探してただけだから!」
じゃあまた明日!満面の笑みで言い放つと、茜は二人に別れを告げて、スタスタと部屋を後にした。
******
その後、二人に別れを告げた茜は、自室へと歩みを進めていた。
しかし、数歩進んだところでふと〝明日の鍛錬に使う竹刀を借りないと……〟なんて考えが過ぎって、ピタリと歩みを止める。
そして、キョロキョロと辺りを伺った。
「あっ、小鉄君だ!」
そこへ偶然姿を現した小鉄に、茜は嬉しそうに駆け寄って、簡単に事情を説明していく。
それを聞き終えた小鉄は、容易い御用だと頷いた。
「何本いるんです?」
「えーっと、三本かなぁ」
そして、二人でたわいもない会話を交えながら、屋敷の外へと歩き出す。
まさか、その最中に招かれざる客が里に侵入していることも気付かぬまま………