第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ヒュン、ヒュンッ……
風を斬るような音の直後、バシンッ……ズサァァアアと響いた痛そうな音に茜は思わず頬を引き攣らせた。
「炭治郎さん遅い!!全然ダメ!!」
「……いや、素振り棒でも死ぬよこれ……しっ、死ねる」
そんな彼女の横で毒舌を繰り出す少年に、炭治郎はフラフラになりながら必死で休憩を訴えるが、少年には届かない。
「今日で五日目ですよ?……明日からは人形に刀持たせますからね」
飲まず食わずで刀を振り続ける炭治郎は、涙を浮かべながら、絶望し切った顔で少年を見上げるのだった。
******
数日前、炭治郎と小鉄少年の前に現れた茜。
「この人形ボロボロだけど……目を合わせたら呪われたりとか、しないよね?」
「「え……」」
二人は顔を青褪め始めた茜に、戸惑いながらも今までの事情を口にした。
この人形は刀鍛冶の先祖が作ったもので、百八つの動きが出来る絡繰人形だということ。それからこの人形が人間を凌駕する力がある為、戦闘訓練に利用していたことや、老朽化が進んで壊れそうになっていたことを説明した。
「へぇ〜、戦闘訓練用なんだ。……だからこんなにボロボロなのね?」
「いえ。確かに老朽化は進んでいましたが、こんな状態にしたのは、あの澄ました顔の糞ガキ…… 切れ昆布頭のせいなんです」
「……え?え?……糞ガキ、……こ、昆布?……え?あの、……誰のこと?」
そう言って眉を下げた茜に、炭治郎は霞柱の無一郎君だと耳打ちをした。
その後、小鉄少年の愚痴を聞く限りでは、どうやら無一郎は少年の祖先が作った戦闘用絡繰人形〝
その際、少年を脅し、無理やり鍵を奪い、暴言を吐いていったようで……
「これで修行して、あの澄ました顔の糞ガキよりも、炭治郎さんには強くなって貰うんです!!その為なら、俺、全力で協力します」
そう言いながら詰め寄ってきた少年に、茜は圧倒されながら「……私も何か手伝おうか?」と口を開いたのだ。
……しかし
まさかあれから五日、炭治郎が稽古をし始めてからだと、もう既に七日も……
食べ物も与えず炭治郎にひたすら打ち合いをさせるとも思っていなかった茜は、完全に小鉄少年の暴挙にドン引いていた。
さすがにそんな事で炭治郎に死なれても困る為、いざとなったらこの少年を止めるべく、今は彼らを見守っている。
……といっても、既に炭治郎に水をやるようにと二度、小鉄に忠告をした茜は「邪魔をするなら帰って下さい」と追い返されかけていて、本当にこの少年を止められるのかは疑問である。
そんな中、偶々雨が降ってきた事もあり、なんとか喉を潤してきた炭治郎も、流石にげっそりした様子で、激しく体を打ちつけては、何度も意識を飛ばしていた。
「こ、小鉄君?そろそろ炭治郎君、死んじゃわない?」
「いえ!これくらいでへばっていては、鬼殺隊として役に立たないので!!」
「いや、そうじゃなくて……流石に飲まず食わずで、寝てないんじゃ可哀想なんだけど……」
そう呟く茜の視線の先で、ガバッと正に空腹故に飛び起きた炭治郎は、ふらふらとした足取りで再び人形へと向かっていく。
しかし、今までと違ったのは、
〝左側頭部、首、右胸、左脇腹、右腿、右肩……〟
まるで攻撃が来る位置が分かっているかのように、それらを防いで見せた炭治郎が、
バシンッ
漸く縁壱零式に、一撃を浴びせる事に成功したのだ。
それには本人だけでなく、小鉄も茜も歓喜の声を上げたのだが、直ぐに涙を流しながら空腹を訴えた炭治郎に応えるべく、茜は全速力で握り飯を貰いに里まで駆け出すのだった。
******
その後、うめェェェー、うめェェェー……と泣きながら握り飯を完食した炭治郎は、驚くべき成長を見せた。
炭治郎が再び縁壱零式と撃ち合うと、以前よりも攻撃がずっと的確になっていて、まるで相手の動きが分かっているかのようだった。
そしてそのままの勢いで、炭治郎は渾身の一撃を放とうとするが、人形が壊れることを一瞬躊躇する。
……しかしその瞬間、
「斬ってー、壊れてもいい!!絶対俺が直すから!!」
小鉄が大声で叫び、炭治郎を後押しする。
そんな少年の一言に、茜が思わず口角を上げれば、炭治郎が縁壱零式に渾身の一撃を放ち……
「なんか出た!!こ、こ、こ、こ、小鉄君なんか出た!!何コレ!?」
「いやいやいや、分からないです俺も……何でしょうか、コレ!!」
中から飛び出してきた刀に、二人は大興奮である。
そんな少年達に対し茜はやはり顔を青褪めて、小さな声で呟いた。
「妖刀……とかじゃない?」