第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌朝、炭治郎の元を訪れた茜は、うきうきしている様子の炭治郎に、くすくすと小さく笑みをこぼした。
「おはよう、炭治郎君!随分と楽しそうだね?」
「茜さん、おはようございます!!あはは…分かりますか?実は甘露寺さんの言ってた事が気になってしまって…」
そう言って腕を組んで考え始めた炭治郎は、「甘露寺さんの言ってた武器って何だろう……やっぱり刀かな?埋まってたりするのかな?」と小さな声で呟いた。
やはり楽しそうなその声に、茜も無意識に口角を上げる。
何度か彼に稽古をつけた事があるが、素直で努力家の彼は、人一倍色々な思いを背負っているのだろう。頑張りすぎてしまう彼のことを何かと気にかけていたのだが……
「宝さがしって、わくわくするなあー」
そう独り言を呟く炭治郎は年相応の少年のようで、茜はひと時でも心落ち着ける事が出来た様子に、安心したように目を細めた。
「ふふ、まだ時間はあるんだし宝さがし頑張ってね?」
「あれ?茜さんは行かないんですか?」
「あー……うん。そろそろ鍛錬も再開しないと、腕が鈍っちゃうからね」
そう言って眉を下げた茜の姿に、炭治郎はそういえば彼女も怪我人だったなー…なんて思い出す。
確か茜さんも骨を折る怪我を負って、日輪刀まで折れてしまったからこそ、今こうして刀鍛冶の里にいるんじゃないか。
そこまで思い出した炭治郎はふと、頭をよぎった疑問を口にする。
「あの、一つ分からない事があるんですが……」
「ん?なになに?私に分かること?」
「いや、大した事ではないんです。ただ少し気になってしまって……その、茜さんも日輪刀を打ち直して貰ってるんですよね?」
「そうだよ?折れちゃったからね」
「ですよね?………ということは前回の任務、折れた刀で鬼の首を斬ったんですか?」
そこまで聞いてピンと来た茜は、太ももに隠し持っていたクナイを取り出し、ふふんと自慢げに口を開く。
「ちっ、ちっ、ちーっ!炭治郎君、それは甘いわよ?私の武器は刀だけじゃないんだから!!」
「え!?凄い!!茜さん、忍者みたいですね」
そんな茜に炭治郎がキラキラとした視線を送れば、その一言に気を良くした茜は、饒舌に武器について説明を始めた。
以前、宇髄の嫁達からクナイの扱いを教わったことや、その先端にしのぶから貰った毒を塗って鬼を倒したこと。それから今まで自分の為に時間を割いて稽古をつけてくれていた柱達の話をした後、最後に、それでもクナイの数には限りはあるし、刀を折るなんてまだまだ修行が足りないと、茜は苦笑いで教えてくれた。
「腕の調子は、もうだいぶいいんだけど……私の刀を担当してる刀鍛冶さんがね、厄介な人の世話で忙しくしてるみたいなの……それもあって刀を打つのに時間がかかってるって聞いたわ」
「…‥厄介な人?」
「そうなの。なんでも修行に明け暮れて、ご飯もろくに食べないみたい。……その人も誰かの刀を打つように言われてるみたいなんだけど……」
大変よね、誰の担当かしら?と首を傾げた茜の一言に、炭治郎の口からは乾いた笑いが漏れ出した。
〝……絶対それ、鋼鐵塚さんのことだ〟
何故か茜の言っている厄介な刀鍛冶が、自分の担当だと察してしまった彼はというと……、
「あははは………はぁ、」
明後日の方向を見つめ、ガクリと力無く項垂れていた。
「……どうかした?」
そしてそんな炭治郎を、茜は不思議そうに見つめるのだった。
******
それから二日後ー……
「おーい、炭治郎君ーー!!……もう、どこまで探しに行っちゃったのよ」
茜は、炭治郎を探して山の奥まで足を伸ばしていた。
そんな彼女のすぐ先には、竹林の合間をパタパタと飛び回る鴉の姿……
どうやら彼の鎹鴉は相棒の居場所を知っているようで、茜は鴉の後ろを歩きながら、呆れたようにため息をついた。
「こんなとこまで来るなんて、よっぽど秘密の武器が欲しかったんだ……」
******
暫く歩いていけば、ぎしぎしと何かが軋むような音……それからヒュン、ヒュンと風を斬るような音が聞こえ始め、茜は眉間に皺を寄せた。
「……本当に今までよく生きてこられましたね、鬼殺隊で……ギリギリですよ、全てが」
それを不思議に思いながら近づいていけば、炭治郎とは異なる少年の声に茜は、はてと首を傾げた。
「徹底的に叩きますから。俺の言ったことができるようになるまで食べ物あげませんから」
チラリと覗き込んだその先では、一瞬人かと見間違える後ろ姿の人形と炭治郎が激しい打ち込みを繰り広げていた。
そのすぐ隣で炭治郎に毒を吐く少年は、里の人達と同じお面を付けている事から、多分刀鍛冶の見習いなのだろうと察して、彼らの様子を観察する。
まさか宿にも戻らず、こんな所で二日間も稽古をしているとは思ってもいなかった茜は、始めこそ驚きと呆れを隠せなかった訳なのだが、
人形の腕の数に加えて、あの動き……
「なるほど。一筋縄ではいかないわけね」
一人納得したように呟くと、二人の元へと歩み寄る。
「炭治郎君、相手は腕がうじゃうじゃあるんだから……もっと早く動かないと、やられちゃうよ?」
「茜さん!?何でここに!!?」
驚く炭治郎を横目に、人形へと視線を移した茜は、秘密の特訓中だった?と戯けたように口を開く。
そしてそのままジーっと人形を見つめた彼女は、お面の少年に向かって振り返る。
「この人形ボロボロだけど……目を合わせたら呪われたりとか、しないよね?」
「「え……?」」
突然現れたかと思いきや、顔を青褪め始めた様子の茜に、少年二人はポカンと口を開けるのだった。