第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
……不死川、玄弥
難しい顔で呟いた茜に、炭治郎は大きく頷いた。
「はい!甘露寺さん達が温泉で会ったのは、不死川玄弥という俺の同期でしたよ」
その一言に、むむむー…と腕を組みながら考え込んでしまった茜の横で、もぐもぐと頬いっぱいに松茸ご飯を詰め込んでいた蜜璃が口を開く。
「不死川さんの弟さんでしょ?」
「………弟」
「でも不死川さん弟いないって言ってたの。……仲悪いのかしら?切ないわね」
「………実弥さんの、……弟」
「茜ちゃんは何か聞いてないの?」
無邪気に話しかけてくる蜜璃に、茜は終始眉間に皺を寄せたまま、蜜璃の言葉を繰り返すばかりで。
「…‥全く、…聞いてない」
最後の蜜璃の問いかけには、困ったように眉を下げて項垂れていた。
なんでも……とまではいかなくても、少なくとも隊士達の中では誰よりも、実弥の事を知っているつもりでいたのに……。
まさか
もう何年も共に過ごして来たからこそ、そんな事すら教えて貰えていなかった事実に、茜はガクリと肩を落とす。
「不死川玄弥君‥‥実弥さんの弟………弟かぁ……」
ボソボソと呟きながら、分かりやすく落ち込み始めた茜を尻目に、蜜璃は自身の兄弟の話をし始める。
その間、小さくなった禰󠄀豆子をこちょこちょと擽り、それに禰󠄀豆子はキャッキャと楽しそうにしていた。
「玄弥はまだ来ないですね。本人と少しでも話せるといいんですが……」
「あの子来ないみたいよ?全然食事しないって里の人が話してた。」
二人が玄弥の話を心配そうにしていれば、茜から握り飯を作って、持って行ってあげようと遠慮がちに声がかかり、二人は思わず顔を見合わせ笑みをこぼす。
「そうね!そうしましょう!!」
「きっと玄弥も喜びます!」
そう言って笑いかける二人に、漸く機嫌を取り戻した茜も、特大にしてあげよう!なんて言って、嬉しそうに頷いた。
******
その後、美味しそうな握り飯を作った茜は、チラリと隣を見やり、小さく笑みを溢していた。
そこには禰󠄀豆子を撫でたり抱きしめたり……
あまりの可愛さに骨抜きにされている蜜璃がいて、天真爛漫な彼女らしいと口角を上げる。
それは勿論炭治郎も同様で、妹を可愛いがる蜜璃の姿に、嬉しそうに笑みを浮かべた。
そしてふと、思った疑問を口にする。
「甘露寺さんはなぜ鬼殺隊に入ったんですか?」
「ん?私?恥ずかしいな〜」
その問いかけに、何故か頬を赤く染めた蜜璃は、頬っぺたを押さえながら興奮気味に口を開く。
「添い遂げる殿方を見つけるためなの!!やっぱり自分よりも強い人がいいでしょ?女の子なら!!」
「へ!?」
「守って欲しいもの。分かる?この気持ち、男の子には難しいかな?」
「へぇー……そうなんですね」
蜜璃の想定外すぎるその答えには、流石の炭治郎も、ものすごい表情を浮かべてしまう。
しかし、そんなことなどつゆ知らず、蜜璃は柱になった、その独特すぎる理由を口走る。
「ほら、柱の人は強いでしょ?でも、なかなか会えないからね。自分も柱にならないとね……だから私、凄い頑張ったのね」
完全に置いてけぼりを食らっている炭治郎だが……
大丈夫、安心してほしい。この話を初めて聞いた者達は、大概同じ顔をするのだから。
ちなみに、茜に関して言えば、蜜璃から何度もこの話を聞いた事がある為、にこにことそれに頷き返していた。
そんな混沌とした空間に、失礼しますと隠から遠慮がちに声がかかる。
「間もなく刀が研ぎ終わるそうです。最後の調整のため、工房の方へ来ていただきたく…」
「あら〜、もう行かなきゃいけないみたい」
その呼びかけに蜜璃は返事を返すと、禰󠄀豆子の頭を撫でながら炭治郎へと笑いかける。
「炭治郎君、今度また生きて会えるかわからないけど頑張りましょうね?あなたが上弦の鬼と戦って生き残った、これは凄い経験よ。実際に体感して得たものはこれ以上ない価値がある、…五年分、……十年分の修行に匹敵する!!今の炭治郎君は前よりももっとずっと強くなってる!!甘露寺蜜璃は竈門兄妹を応援してるよ〜」
そう言って、屈託のない笑みを浮かべる蜜璃に、炭治郎も思わず頬を緩めた。
そして、面と向かって激励してくれる蜜璃の優しさに、鬼舞辻無惨に勝つためにもっともっと強くなりますと力強く言葉を返す。
それに蜜璃は嬉しそうに頷くと、今度は茜にもにこりと笑いかける。
「茜ちゃん、久しぶりにお話ができて楽しかったわ〜。また茜ちゃんの恋の話、聞かせてね?」
「ふぇっ!?恋!!?ちょっ、……蜜璃ちゃん!!」
「うふふ、次に会う時を楽しみにしてるわ〜。お互い頑張りましょうね?」
蜜璃の爆弾発言に思わず頬を赤く染め、オロオロと視線を泳がせた茜に、くすりと笑みを深めた蜜璃は、最後に思い出したように炭治郎へと口を開いた。
「炭治郎君は長く滞在する許可が出てるのよね?この里には強くなるための秘密の武器があるらしいの」
探してみてね?そう言って炭治郎に耳打ちした蜜璃は、茜達にブンブンと手を振りながら、颯爽とその場を去っていった。
その直後……
ブーーと鼻から勢いよく鼻血を出した炭治郎に、茜は苦笑いで呟いた。
「蜜璃ちゃんたら、無邪気すぎるのも考えものね……今ここに彼がいたら、炭治郎君、確実に殺されてたわよ?」
「ころっ、…!えっ!!誰の事ですか!?」
「……知らない方が身の為よ」
「えー!!?」
そう言って炭治郎から視線を逸らした茜は、蜜璃に想いを寄せる蛇の様な彼を思い浮かべ、小さくため息を落とすのだった。