第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
茜が刀鍛冶の里にやってきて、数日ー…
「誰か来たのかしら?何だか、どきどきしちゃう」
「本当だ、また誰か来たみたいだね!蜜璃ちゃん行ってみようか?」
茜と蜜璃は、こうして二人で呑気に温泉に浸かっていた。
******
今回蜜璃はあの特殊な刀の研ぎ直しで、茜に関しては怪我の療養と新しい刀を受け取りに里へ訪れている。
ちなみに、蜜璃は研ぎ直しを依頼していただけなので本日、一足先に日輪刀を受け取れる予定だと、今朝、里の長である鉄珍から伝えられている。
そんな二人は、いそいそと湯船から上がると着替えを済ませ、早速里の中心部へ向かうべく、山道を降っていく。
「あ、あの子かしら?おぉ〜〜い!!」
すると先を行く蜜璃が、此方へと向って歩いて来る青年に気づき、ブンブンと腕を振りながら駆け寄った。
「甘露寺蜜璃です〜。初めまして、こんにちはぁ。大きいね〜」
「……」
「名前なんて言うの〜?何歳ですか?」
「……」
「何の呼吸使うの〜?」
しかし、駆け寄るなりもの凄い勢いで口を開いた蜜璃に、いきなり話しかけられた青年は顔を真っ赤にして硬直する。
そして、それを隠すように蜜璃に背を向け歩き出せば、その後ろで彼をジーッと見つめていた茜とすれ違う。
「……そっくり」
ぼそりとすれ違い様に呟かれた言葉は、確かに彼の耳にも届いたのだが、極度の緊張に陥っていた青年はそれに振り返る事なく立ち去って行った。
その間も、やはりジーッと彼が歩いて行った方向を見つめていた茜が振り返りながら口を開けば……
「ねぇ、蜜璃ちゃん。あの子さぁ……って、あれ?」
そこには蜜璃の姿はなく、遥か彼方にピンクが揺れて消えて行った。
「え〜……、置いてかないでよぉ〜」
ため息混じりで呟いた後、茜は思わず苦笑いを浮かべ、その背を追いかけるのであった。
******
「あーー!!炭治郎君だっ、炭治郎君ー!!」
「あっ、危ない!気をつけて下さい!!乳房が溢れ出そうです!!」
「聞いてよ〜!聞いてよぉ〜!!」
漸く茜が蜜璃の背中を捉えた時には、何故か数日前まで寝たきりだった筈の炭治郎に、わんわんと蜜璃が泣きついていた。
それに慌てた様子で炭治郎が合わせの緩みを指摘しているが、蜜璃には先程の出来事の方が余程重大なのだろう。
そんな事を気にする事もなく、感情のままに言葉を続けた。
「私、今そこで無視されたの〜。……挨拶したのに、無視されたの〜」
「だ、誰にですか?」
「分かんないの〜……だから名前聞いたのに、無視なの。酷いと思わない?私柱なのに〜」
「……蜜璃ちゃん」
そこへ漸く追いついた茜が声をかければ、くるりと振り返った蜜璃が今度は茜に泣きついた。
「お風呂上がりのいい気分がもう全部台無し!!」
めそめそと落ち込む蜜璃に、茜はうんうん…と苦笑いで頷き返す。その間に、茜がさっと身なりを正してやれば、背後から炭治郎が思い出したように声をかける。
「もうすぐ晩ご飯ができるみたいですよ?松茸ご飯だそうです」
「えーっ、ほんとォ!?」
その一言に、ぱぁっと顔を綻ばせた蜜璃は、再び茜を置き去りにルンルンと山道を降りていく。
それに、全く蜜璃ちゃんは……なんて呟いた茜は、改めて炭治郎に向き直る。
「炭治郎君、久しぶり……体の具合はどう?」
「俺はもうこの通り、動き回れる程に怪我も回復しています」
眉を下げ、良かった…と安心したように笑いかける茜の姿に、炭治郎も嬉しそうに目を細める。
「……アオイさん達から聞きました。茜さんにも随分と心配をかけてしまったみたいで……」
「いいのよ、そんな事……それより炭治郎君が目覚めてから、直接会いに行けなくてごめんね?少し立て込んでて……」
「いえ!全然、気にしていないので……と言うか、俺のことより茜さんは自分の身体を案じて下さい」
「………へ?」
その予想外の一言に、茜が素っ頓狂な声を上げれば、炭治郎は二人しかいないというのにヒソヒソと苦笑いで口を開いた。
「しのぶさんから聞きました。茜さんが利き腕を折る重症だって……」
「……えーっと、」
「蝶屋敷に治療へも訪れず、挙句の果てに風柱邸からも逃亡したって聞きました」
「………炭治郎君。……しのぶちゃんは?」
「怒っていました」
「………」
「隠の後藤さんは、しのぶさんから直々に状況の説明を求められたそうですよ」
炭治郎のとどめの一言に、ピクリと動きを止めた茜は、険しい表情で考え込む。
〝……状況の説明?それは実弥さんにも報告せず、勝手に刀鍛冶の里へとやって来たことまでバレているのではないか?〟と。
その最悪な事実を知り、明後日の方角を向きながら項垂れた茜は、とりあえず温泉はこの先だと炭治郎に力無い声で呟いた。
それに炭治郎が頷いたのも確認せずに歩き出した茜は、随分と重い足取りで蜜璃の後を追うのだった。