第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ガラリと開いた扉の先ー……
ボロボロになった宇髄の嫁達が、こちらを見つめて眉を下げた。
「……茜ちゃん、来てくれたのね」
雛鶴が優しく声を掛けたが、それにすら反応できず、茜は唇を噛み締めた。
「おい、槙野。遅ェーぞ!!俺たちがド派手に上弦を倒す所を見逃したな!!」
「……っ、」
片腕を上げ、豪快に笑い声を上げた彼の姿は、見たこともないほどボロボロで……
更には、左目を隠すように覆われた包帯、
それから包帯をぐるぐると巻かれた……明らかに肘より先を失った左腕が、鬼との激闘を物語っていた。
そんな重症を負いながら、自分を気遣い笑ってみせた宇髄の姿に、茜は思わず涙ぐむ。
「……う、宇髄さんっ、…私、」
漸く開いたその口も、直ぐに言葉が続かなくなる。
『俺は信じる、君たちを信じる』
そう言って死んでいった煉獄と、片目を失った宇髄の姿が重なって、遂には堪えきれなくなった涙が溢れ出す。
「……私もっ、一緒に戦えっ、…なくて……っごめんっ、…な、さい……っ、」
突然ぼろぼろと泣き出した茜に、三人の嫁達は慌て出す。特に須磨なんかは、茜に釣られて一緒に泣き出してしまうものだから、一気に病室が騒がしくなる。
「茜ちゃん泣かないで〜…うわぁぁ〜んっ」
「須磨、五月蝿いわよ!アンタさっきも泣いていたじゃない!!いい加減泣き止みなさいよ!」
「もう。須磨もまきをも……、天元様の傷に障ったら大変だから、少し落ち着いて。…… 茜ちゃんも、貴方が謝ることなんて何もないのよ?」
三人の嫁達が皆口々に声をかければ、それを涙を流しながら眺めていた茜が三人に向かってガバッと腕を伸ばす。
「雛鶴さんも、…まきをさんも、…須磨さんもっ……、皆んなが無事で、……良かったぁっ、……」
涙腺が崩壊してしまっているのか、今まで見たこともないくらいボロボロと大粒の涙を流す茜に、三人は優しく笑いかけた。
そして、よしよしとそのまま頭を撫でられている茜の姿に、宇髄は呆れた様に笑みを溢す。
「あのなー、槙野!……もしもお前をこの任務に駆り出してたら、鬼より怖い、お前んとこの兄弟子に殺されてたわっ!絶対にッ!!」
「………実弥さんはっ、………そんな事……しませんよ……」
「するわッ!!お前が身を持って、一番知ってる事だろうがッ!!」
わんわんと泣きながら、曖昧に言葉を濁した茜を見て、宇髄は豪快に突っ込みを入れる。しかし、やはり傷に障るのだろう。いつもの様にと見せていても、声量はあまり出ていない。
「………宇髄さん、本当にすみ「ったく、面倒臭ェーな!!いつまでも過ぎた事をグズグズ言うんじゃねーよッ!!」
「………だって、」
「それより、上弦を倒したんだぜ?俺たちをド派手に崇め称える方が先だろうがッ!!」
そう言ってニカッと笑った宇髄に、茜は涙を堪えるように唇を噛み締めた。しかし、止め処なく流れるそれは一向に止まる気配はなくて……
最終的にそれを隠すかの様に、ぎゅーっと雛鶴に抱きついたまま、小さな声で「宇髄さん、格好良すぎです」と呟いた茜に、宇髄は豪快に笑い声を上げた。
「だーっ、ははは!!そりゃあ、俺はド派手な色男だからな!!この宇髄様に惚れたのなら、嫁に貰ってやらねー事もねえぞ」
「ううっ、……それはちょっと、」
チラリと宇髄を盗み見て、小さく呟いた茜の姿に、言われた張本人の宇髄も、……それから彼の嫁達も、顔を見合わせて楽しそうにクスクスと笑い声を上げるのだった。
******
その後、漸く涙が収まった茜に向かって、宇髄は柱を引退すると口を開いた。
「……そう、ですか。」
「ああ、…どのみち、この体じゃ戦えねーよ」
だが……、そう続けた宇髄は、寝台横の椅子に腰掛けて、心配そうにこちらを覗く茜の頭に右手を伸ばす。
「お前らが、これからの鬼殺隊を支えてくれるって分かってるからな!俺は何も心配しちゃいねーよ!!」
ガシガシと頭を撫でつけて笑う宇髄に、茜はキョトンと彼を見つめた。
「でも、まっ!俺を超えるには、まだまだ修行が足りねーがなっ!!」
「あ、……当たり前ですよ」
「ハハハッ!分かりゃあいい!!落ち着いたらまた、稽古をつけてやるよ!!」
そう言って、ニカッと笑った宇髄に茜は小さく頷いた。
「……そうかァ。ま、上弦相手となれば無傷…とはいかねーだろうなァ……」
その後、風柱邸へと帰り着いた茜は、実弥に宇髄の容体や、今回の任務について知り得た情報を伝えていた。
「だが、……これで宇髄まで抜けるとなると、ますます柱の席が空いちまうなァ」
「‥‥こればかりは、仕方ないですよ」
険しい表情を浮かべた実弥に、茜も困った様に眉を下げた。
すると、その時ー……
『伝令!伝令!!槙野 茜ニ緊急連絡!!』
襖の外から鴉の声が鳴り響き、茜の名前を繰り返した。
それの声に慌てて茜が襖を開けば、鴉はバサッと翼を広げた。
『槙野 茜ヘノ緊急招集!鬼殺隊本部ヘト向カエ!オ館様ガ呼ンデイル!!』
その一言に、呼ばれた茜だけでなく、彼女の兄弟子の実弥までもが、驚いた様に動きを止めるのだった。