第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
カチャンと音を立て、刀を鞘へと戻した茜は、灰へと変わっていく
「結構、手間取ったなー……」
斬った所から分裂していく、中々厄介な血鬼術を使う鬼に、やっとの思いでとどめを刺したのだが……、
どうやら夜明けが近いのだろう。少しずつ明るくなり始めた空を見つめ、思いの外時間がかかってしまったと、困ったように眉を下げた。
……きっとこの調子では、また兄弟子に、しこたま叱られるに違いない。
思わず大きなため息を漏らした茜は、風柱邸へと続く道のりを急いだ。
だが途中でピタリと動きを止めて、一応、言伝だけは入れておこうと思い直し、自身の鴉を探し始める。
「椿〜?伝言を頼みたいんだけど……って、あれ?」
しかし、いつも鬼と戦っている時でさえ、片時も離れる事のない相棒が、何故だか今日は見あたらない。
……もしかしたら、先に知らせに行ってくれたのだろうか?
そんな事を思いながら、とぼとぼと歩みを進めていれば、遠くから血相を変えて飛んでくる鴉が目に入る。
〝…えっ……まさか、そんなに息を切らすほど、あの人は怒っているんだろうか〟
怒り狂う実弥を思い浮かべ、顔を青くした茜は、近づいてきた鴉に向かって、恐る恐る問いかけた。
「……椿、どうし『伝令!伝令!!』
だが、その言葉を遮って口を開いた鴉は、続け様に信じがたい言葉を口にする。
『上弦撃破ッ!!上弦撃破ッ!!音柱達ノ活躍ニヨリ、上弦撃破ッ!!』
「…‥上弦?………音柱達って、……」
その一言にヒュッと喉を鳴らした茜は、数日前に彼と交わした会話を思い出す。
突然風柱邸へと訪れて、女性隊士を探していると彼は言っていた。あの日から、まだ幾日も経っていないと言うのに……
そこまで考えてハッと顔を上げた茜は、鴉に向かって詰め寄った。
「それで宇髄さんはっ、……その任務に就いた隊士達は大丈夫なのっ!?」
『数名ノ隊士ハ安否不明!!音柱ハ重症ヲ負イ治療中!!全員、蝶屋敷ヘト運バレル』
「っ、……」
……当たり前だ。
上弦相手に無傷だなんて有り得ない………
あの日、自分が断った任務が、……まさかそんな危険なものだとは思ってもいなかった茜は、強く拳を握り締めた。
上弦の強さを身をもって経験している茜にとって、それがどんなに過酷を極めたか、安易に想像がついたのだ。
「‥‥実弥さんに言伝をお願い……任務完了。…それから、上弦討伐の報告を受けたため蝶屋敷に向かう、と」
それに鴉が頷いたのを見届けて、茜は全速力で蝶屋敷へと駆け出すのだった。
******
茜が蝶屋敷へと辿り着いた頃には、隠や屋敷の娘達が、今回の怪我人の処置を、一通り終えた所だった。
「……茜さん?どうされましたか?」
勢いで来ておいて、今更駆けつけたって何も役に立たないじゃないか…と、玄関先で立ち尽くしていた茜に、なほが気がつき声をかけた。
「あ、あの……私、知らせを聞いて……宇髄さん達の容態は……っ?」
それに一瞬眉を下げたなほは、運ばれた隊士達の状況を伝えていく。
それから、少し間を置いた後、今回炭治郎達が任務に連れ出された経緯も口にした。
「……そう。炭治郎君達が」
「はい。……だから、私っ…皆さんが心配で……」
「なほちゃん……、きっとあの子達なら大丈夫よ。みんな強い子だもの」
思わず涙ぐんでしまったなほを慰めながら、自分自身に言い聞かすように、茜は小さく呟いた。
それからゆっくり頭をさげて「……ごめんなさい」と口にした。
先程彼女は、音柱に連れていかれそうになったのを、炭治郎さん達が助けてくれたんです……なんて、涙ながらに教えてくれた。
きっと、自分が任務を断ったから、隊士でもないなほを駆り出すほど、切羽詰まった状況になってしまたのだろう。
しかし、それで彼女が怖い思いをしたのも確かである。だから、少し躊躇いながら、眉を下げて言葉を続けた。
「あんまり宇髄さんを責めないであげてほしいの。……実は、私が任務を断ったから、宇髄さんはなほちゃん達に協力を仰ぐほかなくなってしまったんだと思うの。結果、炭治郎君達を向かわせてしまったのは、私のせい 「茜さん!!」
「は、…はい」
「そんな事、誰も思っていません!!確かに音柱様に連れて行かれそうになった時は怖かったけど……だけど、その話を聞いたとしても誰も茜さんを責めませんよ?」
「………なほちゃん」
「きっと炭治郎さん達も同じ筈です。だから、茜さんがそんな顔しなくても大丈夫です!」
慰めるどころか、逆に、年下の彼女に慰められてしまった……なんて、茜が目をパチクリさせていれば、なほは困ったように笑いかけた。
「音柱様は重症ですが……意識ははっきりされています。案内しますね」
その一言に、ハッと弾かれたように顔を上げた茜は、慌ててその背を追いかけた。