第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
茜が二週間ぶりに目を覚まし、
しのぶに実弥と茜、兄妹弟子の二人共々、仲良く叱られたあの日から、数日ー……
茜の病室には、代わる代わる大勢の隊士が見舞いに訪れていた。
それは、あの時任務を共にした炭治郎達だけでなく、彼女が目を覚ました事を聞きつけた一般隊士、さらには忙しい任務の合間を見計らい、柱までもが茜の元へと訪れていた。
今回、彼女の負った傷や、任務の詳細を聞いていた者達は皆一様に、茜を心配していたのだが……
「良かったわね、茜ちゃん!!」
「うん。蜜璃ちゃんも、伊黒さんもありがとう。ご心配をおかけしました」
「そんな事気にしなくていいのよ!ね、伊黒さん?」
「ああ、……お前は余計な事を考えず、まず自分の体を治す事に専念しろ」
「はーい」
煉獄を目の前で失った悲しみや悔しさは勿論あるのだろうが……、
明るくいつも通りを装う茜に、今回、見舞いに訪れていた蜜璃と伊黒の二人は、一安心したようにほっと肩を撫で下ろしていた。
「でも茜ちゃんから、不死川さんの継ぐ子になるって聞いた時は、本当にびっくりしちゃった!」
「ふふっ、私も実はまだ、現実味が湧かないの。……もしかしたら、まだ夢を見ているのかも」
そう言って軽く頬っぺたを摘む茜に、伊黒は呆れたような視線を送る。蜜璃に至っては、「やだぁ、茜ちゃんたらっ!」なんて、楽しそうに笑い声を上げていた。
******
茜が目を覚ましてからというものー……
茜はこの二人以外にも、見舞いに訪れる者達に、それはそれは嬉しそうに〝風柱の継ぐ子にして貰う〟と報告しては、皆を驚かせていた。
柱達にしてみれば、収まるべきところに収まったな、と納得………というより、寧ろ、茜をあんなにも想ってきた彼が側にいるのならば、茜はもう大丈夫だろうと、安心してしまった程だ。
……しかし、一般隊士となれば話は別だ。
「あんなに怖い人の継ぐ子!?それって……大丈夫なんですか!?」なんて、茜の身を案じる者や、「茜さんと風柱って……犬猿の仲だったんじゃないんですか?」と首を傾げる者まで、さまざまだ。
だが、そんな隊士達の戸惑いを他所に、「皆んなの反応ったら、ふふっ…おっかしー」なんて茜は嬉しそうにクスクス笑うのだ。
それには、戸惑っていた隊士達でさえ、きっと継ぐ子になったのが、余程嬉しいんだなー…なんて、つられて笑ってしまう程だ。
だから、彼らを以前から見守っていた柱達に関して言えば、嬉しそうに笑う茜の姿に、此方までなんだか嬉しくなってしまう訳である。
******
未だにきゃっ、きゃっとはしゃぐ茜と蜜璃を眺めながら、小さく笑みを落とした伊黒は、徐にその口を開いた。
「槙野……ところで、怪我の治りは順調なのか?」
「………順調、なんですかね?しのぶちゃんからは、少なくとも後二週間は此処で療養するように……って言われてます」
「なんだその間は?……いいか、槙野。隊士の代わりなら、いくらでもいる。お前は怪我を治す事だけを考えればいい、簡単な話だ」
「……そう、ですね。まずは怪我を治す事、それから色々と考えます」
「ふん。当たり前だ、愚か者」
……随分と捻くれた言い回しだが、要は怪我の心配をしてくれているのだろう。
そんな彼の優しさに気づいて、思わず茜も笑みを浮かべた。ふと隣を見ればそれに頷くように、蜜璃も優しく笑いかけてくれている。
〝煉獄さんも……蜜璃ちゃんも、伊黒さんも……私って本当に色々な人に支えられているなぁー……〟
そんな当たり前の事を、今更しみじみと思い知る。
「……いつまでも落ち込んでたら、煉獄さんに怒られちゃいそう」
「……茜ちゃん」
「伊黒さんも、蜜璃ちゃんも今日は本当にありがとう。私、怪我を早く治して……煉獄さんに報告に行きます。風柱様の継ぐ子になりますって!」
「……そうね!!きっと煉獄さんなら、他の誰よりも喜んでくれるわ!!」
「そうだな、甘露寺の言う通りだ」
……煉獄さんを失って、悲しくないわけがない。もっと自分に力があれば………今だって、そう思ってしまうけれど。
チラリと視線を動かせば、優しく笑いかける二人の姿に茜も小さく笑みを落とす。
「ふふっ、そうですね」
……煉獄さんのように、強くて優しい剣士になろう。自分の信じた道を真っ直ぐに……
『俺は信じる。君たちを信じる』
茜は、最後に優しく笑いかけてくれた煉獄の姿を思い出し、再び心に誓うのだった。