第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
爆風が吹き荒れ、砂埃が立ち込める中ー……
上弦の鬼と一人で対峙していた煉獄が……
それを追うようにして、駆け抜けていった茜が……
一体どうなったのかと、炭治郎達は目を凝らしていたー……
「煉獄さん、茜さん……………見えたっ、……ぁ……ぁああ"あ"ー……」
漸く開けた視界の先には、
煉獄の鳩尾を貫通する上弦の腕がそこにはあった。
それから、少し先に尻餅をつくように、呆然と目を見開く茜の姿ー……。
炭治郎と伊之助も、茜同様、呆然とその光景を眺めていることしかできないでいれば、拳を突き立てている鬼が慌てたように口を開いた。
「死ぬ……、死んでしまうぞ杏寿郎!!鬼になれ!!鬼になると言え!!お前は選ばれし強き者なのだ!!」
しかしその一言に、瞳に光を取り戻した煉獄は、きっと鬼を睨みつけ、次の瞬間ー……
鬼の頸へと、力強く刀を突き刺した。
鳩尾に拳を受けていても尚、抵抗をし続ける煉獄に、鬼が堪らず反対の腕を振り上げる。
しかし、煉獄の頭を抉るほどの勢いで振り下ろされたその拳を、彼は片腕で掴み上げ、それどころか頸に刺さった刀へと、どんどん力を込めていく。
まさかこんな瀕死の状態で、追い詰められるとも思っていなかった鬼が、慌て始めた時だったー……
横たわる列車のその向こう、
山の間からゆっくりと日が昇り始めている事に、その場の者たちは気がついた。
勿論それは、煉獄に拳を突き立てたままの鬼も同様で、煉獄を鬼にする事は諦め、陽光が差し込む前にと、拳を引き抜こうと力を込めた。
しかし、どうしたことか鬼の腕が全く動かないのだ。
太陽が昇るまで時間はもう、ほとんどないと言うのに……
「離せェェーッ」
「絶対に離さない!!」
「ぬぅおおおおおおー!!!」
朝日が迫り慌てる鬼を前に、呼吸を駆使して、鬼を逃さぬように踏ん張る煉獄は、正に命をかけて最後の最後まで戦っていたのだ。
そんな彼の踏ん張りに、流石の上弦も叫び声を喚き散らした。
だが、鼓膜に響くようなその絶叫に、ハッと我に帰った仲間たちも動き出す。
炭治郎が刀を取りに走る中、伊之助と茜は渾身の力を込めて刀をその頸へと振り下ろしたのだ。
……しかし、
その状況に焦りを覚えた上弦の鬼は、あろうことか自身の両腕を引きちぎり、茜達を爆風を利用して弾き飛ばした。その衝撃に、煉獄は膝から崩れ落ち、鬼は振り返る事もせず逃亡する。
「……て、待てっ!逃がさないっ、」
そんな中、茜はその背中を逃さんとすぐさま森へと飛び込んだ。
その直後、後方から鬼の背に向け、炭治郎も刀を投げつける。
「逃げるなー!!逃げるな、この卑怯者ー!!」
それを食らった鬼が、炭治郎の悲痛な叫びに思わず振り返った瞬間ー……
「風の呼吸 壱ノ型
自身の頸目掛けて、鋭い爆風が吹き荒れた。
「お前は決して逃がさない……刺し違えてでも、お前の頸は必ず斬る!!」
茜の一言にうんざりした様に顔を歪めた鬼は、彼女に背を向け走り続ける。
それに気づいた茜も、その背中を追いながら、頸を狙った攻撃を何度も放つー……
しかし、その全てを上手く交わされて、どんどん鬼との距離が離れていく。
「っ、逃がさないって、言ってるでしょう!!風の呼吸 捌ノ型
その状況に頸が斬れないと瞬時に判断した茜は、ならばと大きな斬撃を何度も繰り出し、辺りの木々を薙ぎ倒していく。
「お前、なにをっ…、」
すると、鬼のその背中を追うように日差しが僅かに顔を出す。
茜のやろうとしている事を理解した鬼は、振り向きざまに怒号を飛ばす。
「俺はお前には興味がない、女とは戦わない……追いかけてきても無駄だ!!」
「そんな事っ、私に関係ない!!それなら、その頸っ、置いてって!!」
肺に酸素を溜め込んで、片腕で大きく振りかぶる。右手を動かす度に、左肩に激痛が走るが、茜は構わず技を出し続けた。
「風の呼吸 肆ノ型
全集中の呼吸を最大限に使って、大木を薙ぎ倒していく茜をチラリと振り返った鬼は、やむを得ないと判断したのだろう。
それまで逃げる事しかしなかった鬼が、茜に向かって突然、くるりと向きを変えた。
「なっ、……!!」
あまりに突然の出来事に、完全に出遅れた茜の体を、鬼は真正面から殴りつけた。
ボキッ、と骨が軋む嫌な音が響いた瞬間、茜が気づいた時には、物凄い音を立てながら背中を何かに打ち付けた。
「ぐっ、……がはっ、ぁ、」
一瞬、息を吸う事すら困難な程の痛みが襲い、ぐにゃりと視界も歪んで見えた。痛みに思わず咳き込めば、口の中に広がる血の味に、吐き気を伴い俯いた。
……上弦からのたったの一撃で、茜の体は、内臓に折れた骨が突き刺さる程の大怪我を負っていた。
「……っ、茜さん!!」
そんな茜の耳に炭治郎の慌てた声が届き、痛む体を庇いながら、茜はゆっくりと顔を上げた。そこで漸く、自身が背中を打ち付けたのが、脱線した列車の車体だと言う事に気がついた。
そして、そんな彼の前に膝をつく様にして座り込む煉獄の姿を捉えた瞬間ー……
「……っ、炭治郎君、退いてっ!煉獄さん、すぐに手当てをっ……、」
茜は痛む体を無視して、慌ててその場へ駆け寄るのだった。