第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
煉獄が去ったその後ー……
「……此処をこの布で抑えてください。今、私の仲間が救援のために此方に向かっています。もう少しの辛抱ですよ」
茜は煉獄のいいつけ通り、乗客の怪我の具合を見ながら先頭車両を目指していた。
勿論、怪我を負った茜の体では、できる治療も限られている。片腕では、まともに包帯を巻いてやることすら難しい。
その為、彼女はまず相棒の鴉に救援の要請を託し、動ける人間に声をかけては、救助の手助けを促していた。
幸い、パッと見る限りでは、一分一秒を争うような怪我人はいないようで、茜は小さく息を吐いた。
その時ー……
ふと、前方から空気が揺れるような、わずかな揺れを感じた茜は、ぴたりと不自然に動きを止めた。
〝鬼の気配は……本当に消えた?この胸騒ぎは何?〟
突然動きを止めた茜に、先程まで声をかけられていた男性は、戸惑いながらも口を開いた。
「あ、あんたは大丈夫か?その腕……」
「‥……‥行かなきゃ、私」
「お、おい!何処へっ、……」
男性の問いかけに答えることもなく、よろよろと立ち上がった茜は、違和感を覚えた方向へと歩き出す。
一歩、また一歩と踏み出すうちに、胸騒ぎは確信に変わっていく。
空気が揺れるー……
ぶつかり合う爆音が響くー……
誰かの叫び声がここまで届く。
〝誰かがまだ戦っている〟
その事実に気づいた瞬間、茜の足は地面を力強く蹴りつけて、全速力で仲間の元へと駆け抜けていた。
******
「……さん、煉獄さんっ!」
茜が全速力で駆けつけた先には、呆然と立ち尽くす伊之助と、悲痛な叫び声を上げる炭治郎の姿ー……
そして、こちらに背を向けるようにして鬼と対峙する煉獄の姿が、そこにあった。
……何故、炭治郎君はこんなに慌てているの?
……何故、まだ鬼が生きている?煉獄さんはっ?
理解できぬ状況に、茜が必死に目を凝らせば
「……上、弦っ、?」
煉獄が一人で対峙している鬼の瞳に、信じられない文字が刻まれている事に気がついた。
一方、言葉を発した茜に、チラリと視線を寄越した鬼は、全く興味がないとでも言うようにすぐに視線を煉獄へと戻した。
「生身を削る思いで戦ったとしても全て無駄なんだよ、杏寿郎……お前が俺に喰らわせた素晴らしい斬撃も既に完治してしまった」
その言葉で漸く状況を理解した茜は、煉獄の呼吸音の乱れに気がついて、今更ながらに息を呑む。
背中越しでは怪我の状態など伺えないが、肩で大きく息をする彼の足元には、確かに血溜まりが出来ていて……
煉獄程の実力を持ってしても、上弦相手では分が悪いことを物語っていた。
「……だがお前はどうだ?潰れた左目、砕けた肋骨、傷ついた内臓、……もう取り返しがつかない。鬼であれば瞬きする間に治る、そんなもの鬼ならばかすり傷だ!!どう足掻いても人間では鬼に勝てないんだよ、杏寿郎?」
「……っ、」
つらつらと語りかける鬼の言葉は、彼がどれほど迄に追い込まれた状況なのかを説いていた。
それを耳にするや茜は刀へと手を伸ばし、ゆっくりと鞘から引き抜いた。
その瞬間ー……、
茜が飛び出すより前に、瀕死の大怪我を負っているだろう煉獄が大きな声で鬼へと叫んだ。
「俺は俺の責務を全うする!ここにいる者は、誰も死なせない!!」
その言葉を言い放つや否や、大きく体を振りかぶった煉獄に、茜は慌てて駆け出した。
「炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄!!」
「煉獄さんっ、……風の呼吸 捌ノ型
先を行く煉獄に追いつくように、茜は必死で地を蹴った。
力の入らぬ左肩の所為で、幾分か威力が弱まる攻撃に焦りを覚えながら、茜が刀を振り抜けば、
次の瞬間、凄い勢いで煉獄に体を押し出された。
「………っ、煉獄さん!!駄目ェェッ!!」
吹き飛ばされた痛みなど忘れて、茜は思わず彼の背へと手を伸ばす。
届かないと分かっていながら、それでも必死で、茜はその背に手を伸ばしたー……
何故なら、彼に突き飛ばされたその瞬間、自分に迫り来る鬼の腕が見えたから。
それに気を取られた彼の刀は、鬼の頸を切り損ねー……
煉獄の鳩尾に鬼の拳が迫っているのに気づいたから……