第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
刀を振りにくい状況で、的確に鬼の肉片のみを刻んで進む茜の前に、
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!!」
煉獄が爆風と共に、突然現れた。
「わ、ととっ……煉獄さん、気をつけてください!!狭いんですから!!」
「すまない!!勢い余ってしまってな!!」
口元には笑みを浮かべてはいるものの、お互いに辺りに意識を集中させている二人は、その後すぐに短い会話を交わす。
「俺は後方に行く!!」
「では、私はここから先に」
そう一言声をかけあった瞬間、逆方向に駆け出した二人は、振り返る事なく進んでいく。この状況下で瞬時に場を判断できるのは、さすがは経験を積んだ隊士、とでもいうのだろう。
今まで合同で任務につく事こそなかった二人だが、共に鍛錬に打ち込み、お互いの実力を知っているからこそ、こうして互いを信頼してその場を任せられるのである。
******
それから数十分、細かい斬撃を繰り出しながら列車の中を移動していた茜は、丁度4両目の車両あたりで立ち止まり、ふぅーっと大きく息を吐いた。
「風の呼吸 捌ノ型っ、
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
………ぐっ、なに!?」
茜が大技を繰り出そうと、肺に大量の酸素を溜め込んだ瞬間、耳を劈くような叫び声が鳴り響き、その直後、車両全体が激しく揺れる程の衝撃に包まれた。
その揺れは収まる事を知らず、
〝このままでは横転するっ、……〟
そう思った瞬間、乗客目掛けて飛び出してきた触手の数は、先程までとは比ではない程……四方八方から伸びたそれは、まるで鬼の最後の悪あがきとでも言うような攻撃だった。
「……させて、たまるかぁっ!風の呼吸 弐ノ型
投げ出されそうになる体に力を込め、直前まで出そうとしていた大技から、瞬時に広範囲に斬撃を繰り出せる技へと切り替える。
茜の思惑通り、その刀から放たれた無数の風は、大きな爪痕を残すように確実に周辺の肉片を抉っていく。
しかし、ぐらつきながら体を大きく捻り、無理な体勢で放ったそれは、茜の体をも振り飛ばすほどの凄まじい威力で……
揺れが収まり、列車が横転したと気づいた時には、
「……ぐっ、うぅ……っ、」
無情にも茜の体は、列車の外へと放り出されていた。
幾ら鍛錬を積んだ実力のある隊士だとしても、彼女だって同じ人間なのである。列車が横転するような大事故に巻き込まれれば、ひとたまりもない。
小さな呻き声を漏らしながら、ふらつく体に鞭打って茜がゆっくりと起き上がれば、左肩に激痛が走る。
それに暫し動きを止めた茜が、大きく息を吐き、右腕でゆっくりと左肩に手を伸ばせば、
「槙野、それ以上は触らない方がいい!恐らく肩の関節が脱臼したのだろうが……骨折の可能性もある。君は暫く休んでいなさい!!」
「……煉獄さん」
茜の伸ばしかけていた右腕を、パシッと掴み上げた煉獄は、困ったように眉を下げた。
「あまり無茶をされては、後々俺が怒られてしまうからな!!」
「………」
煉獄は〝誰に〟とは決して口にはしていなかったが、なんとなくあの兄弟子を思い浮かべてしまった茜は、罰の悪そうな表情で視線を逸らした。
そんな茜に小さく笑みを落とした煉獄は、彼女の頭に手を置いて優しくぽんぽんと撫でてやる。
「鬼の気配は消えている!!恐らく竈門少年達が頸を斬り落としたのだろうが……念のため、俺は前方車両へ向かう!!」
「では、私も……「駄目だ!!」っ、」
「君は充分によくやった!!今は体を休めるべきだ」
「でも……」
「上官の指示を聞かないと言う事であれば、今後槙野には、稽古をつけられない」
「………」
そんな彼の厳しい言葉に、茜は思わず顔を顰めた。
しかし、辺りを見渡せば広がる惨状に……
怪我を負った大勢の人の悲鳴を耳にして、茜はぎゅっと拳を握りしめた。
「……分かりま「……と言いたいところだが、恐らく槙野は言う事を聞かないだろうな!!」
「……へ?」
今まさに彼の言いつけを破り、目の前の怪我人の元へと駆け寄ろうと思っていた茜は、自分の言葉を遮って、豪快に笑う煉獄を驚いた表情で見上げていた。
「君の怪我は軽くはない!!しかし、それで目の前の怪我人を放っておけるほど、槙野は非常な人間ではない!!」
パチパチと瞬きを繰り返す茜を最後にもう一度笑い飛ばした煉獄は、くるりと背を向け口を開いた。
「俺は先程言った通り、竈門少年達の元へと向かう!!槙野は決して無理をしない程度に、乗客の怪我の具合を見ながら前方車両へと向かってくれ!!…‥くれぐれも、無理のない範囲でな!!」
そう言い残し、前方車両へと走り去っていく背中を見つめ、茜は小さく呟いた。
「了解っ、」