第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「溝口少年!!君の刀は何色だ?」
「俺は竈門ですよ、色は黒です」
炭治郎に稽古をつける気満々で話を進める煉獄を眺めながら、茜は人知れず、小さくため息を吐いていた。
〝継ぐ子か……煉獄さんには、沢山お世話になっているし……無碍には出来ないよなー……〟
不器用な兄弟子の顔を思い浮かべ、どうするべきか…と茜は頭を抱え始めるが、そんな彼女の事など全く気に留める様子もない煉獄は、炭治郎の突っ込みを豪快に笑い飛ばしながら、再び言葉を続けて行く。
「黒刀か、それはきついな!!ハハハ!!」
「き、キツイんですか……?」
「黒刀の剣士が柱になったのを見たことがない!!さらに、どの系統を極めればいいのかも分からないと聞く」
目の前で繰り広げられる会話に、茜がなんとか思考を呼び戻せば、煉獄は高らかに言い放つ。
「俺の所で鍛えてあげよう、もう安心だ!!」
「いや、いや!!そして何処を見てるんですか!!?」
炭治郎が戸惑いながら口を開くのを、茜が呆然と眺めていれば、次の瞬間、バチッと此方を見つめる燃えるような瞳と視線がかち合った。
それに茜が驚く暇もなく、唐突に彼から問いかけられる。
「それはそうと、槙野!!あれから、不死川から何か話はあっただろうか?」
何時ものことではあるのだが、唐突に話題を変えた煉獄に、二人は一瞬キョトンとした表情で彼を見つめた。炭治郎に至っては、突っ込みを完全にスルーされているのだから、苦笑いを浮かべて、ため息を漏らす始末である。
そんな中、我に返った茜が戸惑いながら返事を返す。
「…えーっと………風柱様から、ですか?」
「うむ!先日の柱合会議から顔は合わせたか?」
「……いえ。多分、相当怒らせてしまった筈ですから……暫くは、口も聞いてくれないと思いますが」
「むう?……よもや、鎌をかければ動くと思っていたのだが、……不死川は余程強情なのだな!!」
「……へ?鎌?」
彼の言葉の意味が理解できず、茜がコテンと首を傾げれば、煉獄はそれを見て豪快に笑い飛ばす。
「安心しろ!!もし、不死川に見放されるような事があれば俺が責任を持って、槙野を継ぐ子にしてやるからな!!」
「ええ!!?な、なんの話です?」
「ハハハッ!槙野は何も心配する事はない!!後は俺に任せてくれ!!」
「へ?……いや、全然状況が分からないんですが……どういう意味ですか?」
「ハハハハハッ!!」
「…あの……煉獄さん?」
もうそれ以上喋る事はないとでも言うように、満面の笑みで笑い飛ばす煉獄に、茜は思わず苦笑いを浮かべた。
何故ここで兄弟子の名前が上がるのかー……、
見放されたらって、既に彼から拒絶されている今この状況がそれには当てはまらないのかー……、
もしも違うとしたら……
彼の言う『鎌をかけた』が何を指すのかによって、その意味合いは変わるけど……
そんな事を思いながら、チラリと煉獄を盗み見れば、彼の話は終わりを迎えたのだろう。座席に体を預け、眼を閉じる煉獄の姿に、茜は戸惑いながらも口を閉ざした。
だから、まさか彼があの兄弟子に
『槙野を継ぐ子にするがそれでも構わないか?』
『誰かの継ぐ子になれば今まで通りとはいかない。いつでも彼女の危機に駆けつけられないという事を真剣に考えるべきだ』
などと詰め寄っていたなんて、想像すらしていなかった。
******
煉獄と一通り会話を終えた茜が、通路を挟んだ反対側の席を見れば、初めての汽車に浮かれる伊之助を、善逸が必死に宥めている所だった。
「うおおおお!!すげぇすげぇ、速ぇぇぇぇ!!」
「危ないっ!馬鹿、このっ」
それに小さくため息を落とした茜が、静かに席を立ち上がると、今にも飛び出さんとしている伊之助へと手を伸ばす。
「伊之助君、楽しいのは分かるけど……」
ひどく落ち着いた声色ではあったものの、その声とは裏腹に、物凄い勢いで伊之助の足を払い、その背をぐいっと座席の方へと引きずり上げた茜は、にこりと綺麗に微笑んだ。
「落ちたら大怪我どころの騒ぎじゃないからね?……ぐしゃぐしゃになって死んじゃうよ?」
「お、おう……」
「分かったなら、大人しく座っておいてね」
なんとも物騒な物言いと、その手捌きの速さに、伊之助が驚きながら頷けば、それに加えて更に煉獄までもが口を開く。
「その方がいいだろう!!いつ鬼が出てくるか分からないからな!!」
「………え?」
だが反応を示したのは、注意を受けた伊之助ではなく、彼を止めようと必死になっていた善逸の方で……
煉獄の言葉を聞き、真っ青になりながら震え出す。
「嘘でしょ!?鬼出るんですか、この汽車!?」
「出る!!」
「出んのかい!!嫌ァーーーッ!!鬼のところに移動してるんじゃなく、ここに出るの!!?」
「短期間のうちにこの汽車で四十人以上の人が行方不明となっている。数名の剣士を送り込んだが全員消息を絶った……だから柱である俺が来た!!」
「はぁーーッ!!成る程ね!!降ります!!」
叫び声を上げ始めた善逸を他所に、今回の任務について語り出した煉獄は、この無限列車で既に大勢の犠牲者が出ていると口にした。
〝この狭い汽車の中で……そんなに大勢の人を?一体どうやって……〟
茜がふむ、と考え込んでいる間に、膝から床に崩れ落ちるようにして、善逸がおいおいと泣き始めた。
「俺、降りるぅぅ……」
「もう仕方がないなぁ……」
そんな善逸の前に、ゆっくりと座り込んだ茜は、よしよしとその頭を撫でてやる。
「ほら、思い出して?任務が一緒になるなら〝宜しくして下さい〟って……善逸君が言ったんだよ?」
「だ、だってェェ……」
「炭治郎君達も、勿論、私も付いてるし……今回は柱まで一緒なんだもん!!善逸君なら大丈夫よ!!」
「ぅぅ〜…… 茜さん……」
そうこうしていれば車両の扉がガラリと開き、そこから車掌の男性が顔を出した。
「切符、拝見………」
随分顔色が悪い男性に、茜は少し心配になる。やはり汽車で行方不明者が出ている以上、彼のように気が滅入ってしまうのは当然だろう。
そんな事を思いながら、茜が切符を差し出せば、それを受け取った男性は
パチンッ
小さな声で呟いた。
拝見しましたーーー…………。