第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
無限列車に乗り込んだ茜達は、初めての乗り物に浮かれる伊之助を宥めながら、煉獄を探して歩みを進めていた。
「それで、その煉獄さんは……炎柱でしたっけ?…炎の呼吸の使い手、って事ですか?」
そう言ってキョロキョロと視線を彷徨わせた善逸は、茜に向かって問いかけた。
「そうだよ!!炎の呼吸は、こう力強くて……とにかくかっこいいんだから」
「へえ、、確かに炎って響きは強そうな印象だなぁ……って、あれ?そう言えば、茜さんはなんの呼吸を使うんですっけ?」
「ん?あれ、言ってなかった?私は風の呼吸を……」
そう口にしながら扉を開けた茜の言葉は、
「うまい!!」
彼らの探し人によって、かき消された。
******
うまい、うまい!!と大声で味の感想を述べる煉獄に、周りの乗客は彼に冷たい視線を向けていた。
だが、煉獄はそんな事など微塵も気にしていないようで、もぐもぐと一口飲み込んでは「うまい!」と声を上げていた。
あまりに異様な光景に、炭治郎達は他の乗客と同じように驚き動きを止めていた。
ただ一人を除いては……
「煉獄さん、お疲れ様です!!」
「む?槙野ではないか!!どうして君がここにいる?」
「あれ?鎹鴉から聞いてないんですか?」
そう言ってにこにこと事の詳細を話し出した茜は、完全に三人を置き去りにして、煉獄へと駆け寄っていた。
そんな茜に、煉獄も笑顔で大きく頷き、自分の向かいの席へ座るように促していた。
「成る程!!槙野と合同任務は初めてだな!!」
「はい、よろしくお願いします!!」
「うむ!!そうだ、先程沢山弁当を買ったんだが、君も一緒に食べないか?」
「わあ、いいんですか〜!ありがとうございます」
固まる三人を他所に、二人はニコニコと笑い合い、煉獄に至っては再び弁当へと箸を伸ばそうとしていた。
それにハッと我に帰った炭治郎が、堪らず煉獄へと声をかけたのだが……
「あの、」
「うまい!」
「……すみません」
「うまい!」
「……れ、煉獄さん?」
「うまい!!」
極めつけに振り返りながら大声を上げた煉獄に、戸惑いを隠せない炭治郎は、力無い声で呟いた。
「あ、もうそれは…すごくわかりました……」
******
それから軽く挨拶をし終えた三人に、煉獄は笑顔で席に座るようにと促した。
そして炭治郎は煉獄の隣、そこから通路を挟んだ席に善逸と伊之助が腰を下ろしたのを見計い、煉獄は徐に口を開いた。
「君たちも任務か?」
「はい。鎹鴉からの伝達で、無限列車での被害が拡大した。茜さんと共に、現地にいる煉獄さんと合流するようにと命じられました」
「うむ、そういう事か!!了解した!!」
ハキハキと返答を返す煉獄に、炭治郎は戸惑いながらも、鴉からの伝令を伝えていく。その際、チラリと向かいに座る茜へと視線を移したのだが……
「わ、美味しい〜っ!!」
目の前で繰り広げる会話を聞きながら、早速弁当をもぐもぐと頬張っている姿に、炭治郎は思わず苦笑いを浮かべた。
どうやら煉獄のこの調子には慣れっこのようで、茜からの助け舟はなさそうだ。
そう判断した炭治郎は、姿勢を正し、改めて煉獄に向かって問いかけた。
「それともう一つ……煉獄さんに聞きたいことがあって……」
「なんだ!!言ってみろ!!」
「俺の父の事ですが……」
「君の父がどうした!!」
「病弱だったんですけど……」
「病弱か!!」
「それでも肺が凍るような雪の中で、神楽が踊れて……」
「それは良かった!!」
言葉を続けながらも、語気が強い煉獄に炭治郎は正直たじたじだった。
しかし、しのぶに言われた通り、炎の呼吸の使い手の彼なら、父の使っていた呼吸について何か知っているのでは?と、期待を込めてじっと見つめた。
その眼差しに気づいた茜も、箸を止めて静かに煉獄へと視線を移す。
そんな彼らに見つめられた煉獄は、
腕を組んで考え込むこと、数秒ー……
「うむ、だが知らん!!ヒノカミ神楽と言う言葉も初耳だ!!君の父がやっていた神楽が、戦いに応用できたのは実にめでたいが、この話はこれで終いだな!!」
「ええっ!!あの、ちょっともう少し……」
「俺の継ぐ子になるといい!!俺が面倒を見てやろう!!」
「待って下さ「ぶっ、……あははっ」
そう言ってハハハッと高らかに笑った煉獄に、慌てる炭治郎を見て、茜が思わず噴き出せば……
「溝口少年、安心するといい!!槙野も継ぐ子に誘っているところでな!!皆で稽古に励むとしよう!!」
「んん!?…っ、げほ…っ、……れ、煉獄さんっ!!」
いきなり忘れかけていたお誘いを、皆の前で口にするものだから、変なところに米が入るところだったと、咽せながら茜は涙目になる。
「槙野、そんなに焦らずとも弁当は逃げたりしないぞ!!ハハハッ」
「うっ、……………はい」
煉獄の的外れな一言に、茜は一瞬反論しようと口を開きかけたのだが、それらをぐっと飲み込んで、弱々しく頷いた。
〝いつも周りを揶揄って笑ってる茜さんすら圧倒するなんて……
なんだか凄い人だなぁ……〟
それを見ていた善逸は、なんとも複雑な表情を浮かべるのだった。