第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「皆さん、お気をつけて」
「任務頑張って下さい!!」
「近くに来る事があったら、また是非いらして下さいね〜」
ぶんぶんと手を振る三人娘達に見送られ、蝶屋敷を後にした炭治郎達三人と、それを見守るように彼らの後ろを着いていく茜は、無限列車が出発する駅へと歩みを進めていた。
「それにしても茜さんは、本当に凄いですね!!」
だがその道中、突然振り返った炭治郎に話しかけられ、茜はキョトンと彼を見つめた。
「俺たちがあんなに必死になっていたのに……簡単に瓢箪を
それにかぶせ気味に善逸が言葉を発したことで、漸く合点がいったのか、茜は小さく笑みを漏らした。
「ふふっ。あれ位、皆んなもすぐ出来るようになるよ?それに、私より強い隊士だって一杯いるよ?」
鍛錬あるのみだね!と笑いかけた茜に、善逸は思わず口元を引き攣らせた。
******
彼らが口にしたのは、きっと蝶屋敷を出る際の瓢箪割りの事だろう。
三人が顔を赤くしながら必死で瓢箪を吹いていれば、すみがそれを見守る茜に気がついて、彼らより一回り大きい瓢箪を手渡したのだ。
え?……これ、私もやるの?と小首を傾げた彼女だったが、必死な彼らを尻目に、茜はたったの一息でそれを破って見せた。
炭治郎達が驚く訳である。
しかしながら、彼女が口にした内容もまた、疑うことのできない事実なのだ。
毎日の鍛錬の積み重ねで、呼吸の精度は上がっていく。それこそ一息で簡単に瓢箪を破れる程までに。
勿論、いきなり力が手に入るはずもなく、そういった地道な鍛錬を繰り返すうちに、意識せずとも全集中の呼吸を使いこなし、自然と力が身についていくのだ。
だが、彼女の言う〝私より強い隊士は一杯いる〟発言に関して言えば、その実力を知る者からしたら突っ込みどころは満載である。
そもそも甲の地位までのし上がってきた茜の実力は相当なものだし、それを超えるほどの実力ともなれば最早、柱以外にいないのでは?と思う程なのだ。
毎回、柱に稽古をつけて貰う度にぼろぼろになる辺り、その間にはまだまだ実力の差はあるものの……
その稽古に根を上げることなく着いていける時点で、彼女はやはりかなりの実力者である事は間違いない。
そんな彼女に伊之助は、振り返りざまに言い放つ。
「お前より強い奴に俺が勝てば、俺様が鬼殺隊最強ってことだろ?やってやるぜェ!!」
それには流石の茜も……へ?と小首を傾げて見せた。
すかさず、炭治郎が茜さんにお前って言うな!!と怒鳴り、善逸が思考回路が単純すぎるだろ!!と突っ込むのだが、
当の本人はその意味を理解すると、ケラケラと楽しそうに笑い出した。
「あははっ、そうだね!!ん〜……例えば、柱に勝てたら伊之助君は最強かも!!」
「柱……ってなんだ?」
「へ?ああ、うーんと……柱ってのは、鬼殺隊で最も階級が高い隊士の事だよ?実力は勿論、判断力もずば抜けている人ばかりで、柱の皆さんはとっても頼りになるの!!」
「なるほど……」
伊之助がそれに、むむむと腕組みをしながら頷けば、茜は人差し指を掲げながら、彼でも分かりやすいように言い換えた。
「ほら、しのぶちゃんは蟲柱。今から任務を共にする煉獄さんは炎柱。柱は全部で九人いるの」
「そう言う事か!!なら、その縁獄ってのに勝てば、俺は最強だな!!」
「ふふっ、もう伊之助君たらっ!!縁獄じゃなくて、煉獄ね?……それに煉獄さんには、そう簡単には勝てないわよ?」
何故か自慢げにそう口にした茜に、炭治郎がふとした疑問を問いかける。
「そんなに強い人なんですか。俺は本部で見かけただけだから……その、煉獄さんってどんな人なんですか?」
「強いなんてもんじゃないよ!!私も稽古では一度も彼に勝てた事もないし……毎回ボロボロよ?」
「ボロボロ……」
それに善逸が青褪めれば、茜はクスクスと可愛らしく笑みを浮かべた。
「でもとっても優しくて、頼りになって、かっこいい人だよ!!……多分煉獄さんの事が嫌いな人なんて、いないんじゃないかな?」
「へ、へえ〜」
ニコニコと話し出した茜に、善逸はなんとも曖昧な返事を返す。だが茜は全くそれを気に留めることなく、上機嫌で言葉を続けた。
「きっと皆んなも、任務が終わる頃には煉獄さんの凄さが分かる筈よ!!」
それはもう嬉しそうに、まだ見ぬ男の話をする茜に、三人は戸惑いながらも頷くのだった。
******
その後ーー
日も落ちだし、暗闇が辺りを包み始めた頃、茜達四人は漸く鴉の言う駅へと辿り着いた。
「じゃあ、私は切符を買ってくるよ」
そう言って茜が姿を消したたったの10分やそこらで……
「刀を持ってるぞ!!」
「警官を呼べ!!コラ、待て〜!!」
彼らは何故か駅員に追われていた。
「………えっと、何やってるの?」
顔を引き攣らせながら茜が口にしたその一言に、なぜか瞳を潤ませた善逸が「茜さん、遅いですよ」と涙ながらにことの真相を説明した。
「ああ……成る程ね、それは怒られる筈よ……とりあえず伊之助君、列車に体当たりは禁止!絶対駄目!!」
「なっ!!なんでだ、ニヤニヤ女?」
「なんでって……」
「伊之助、やめないか!!……やっぱりこれは、この土地の守り神なんですね!!」
「ん?違うよ、炭治郎君……えっと、これは列車って言って、人を遠くまで乗せて移動する乗り物で………」
そこまで口を開いた茜だったが、チラリと善逸に視線を移し、苦笑いで口を開いた。
「確かに色々と大変だったみたいね……えーっと、とりあえず刀は背中に隠して、乗車しようか?」
と話している側から、列車が緩やかに動き出す。
「わぁぁ〜っ、ちょっと遊んでる場合じゃないよ!!早く皆んな、飛び乗って!!」
そう言って慌てて駆け出した茜に、三人もあたふたと走り出す。
なんとか皆で列車の後方に飛び乗った後、出だしからこんなんで大丈夫だろうか……と茜は、小さくため息を落とすのだった。