第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
茜が蝶屋敷へやってきて一週間
「イィィヤァァァー、茜さん!!俺、朝、薬飲んだかなッ!?飲んだのかなァァアア〜ッ!?」
「もう、落ち着いてよ善逸君!朝、私が此処に用意しておいた包みがなくなっているから、大丈夫だよ!」
「……へ?そうなの?」
「そうだよ〜!!」
ちゃんと飲んだんだね!えらい、えらい!と茜が彼の頭を撫でてやれば、それに湯気が出そうなほど顔を赤らめた善逸が飛び上がる。
キィィィィヤァァァ〜幸せェェ〜ッ、と喚き散らす善逸に、茜もケラケラと笑みを浮かべた。
「茜さん、この数日ですっかり善逸の扱いが上手くなりましたね……」
「扱いって言うなよ、炭治郎!!……って、なんだよその目ェェ〜!!」
隣の寝台の炭治郎が頬を引き攣らせながら口を開けば、善逸がすかさず突っ込みを入れる。
そんな二人を眺めていた茜は「仲がいい事は良いことだ」と呟いて、うんうんと笑顔で頷いた。
そんな彼らの背後でガラリと扉が開く音が響き、驚いて振り返った茜は、
「よっ!!」
そこにいる艶やかな髪をした青年に思わず大きな声を上げる。
「「村田さん!」」
「……へ?」
しかし、重なり合った掛け声に茜が思わず声を漏らせば、声を発したもう一人……炭治郎をもキョトンとした表情を浮かべていた。
「「……村田さんを知っているの?(いるんですか?)」」
それを疑問に思った茜が再び口を開いてみれば、またしても綺麗に重なる言葉たち。
それに驚いた当事者二人は互いを見つめたままパチクリと目を開いているのだから、一瞬病室は静寂に包まれた。
「ぐっ、ふふ!ハハハッ!!」
……のだが、第三者でもある村田が盛大に噴き出した事により、それも一瞬で終わりを迎えた。
「……いやぁ、こんな所で会うなんて、茜ちゃん奇遇だね!」
「え?ええ、はい……村田さんもお元気そうで……」
「炭治郎も先日ぶりだな。」
「はい!……村田さんは、あの後大丈夫だったんですか?」
「体が溶ける寸前までいったけど、何とかな……そっちはだいぶ怪我が重いんだって?猪のお前は喉か………って、どうしたんだ?コイツ?」
「……色々あって、そっとしておいて下さい」
炭治郎に話しかけた村田は、どうやら伊之助とも知り合いのようで、コイツが元気ないなんて……と言い始めていた。
そんな中、ずっと黙っていた善逸が炭治郎に誰なのかと尋ねた事で、茜も漸くその答えを知ることとなった。
「那谷蜘蛛山で一緒に戦った、村田さん」
「村田だ!よろしくな、って君……その腕……」
「蜘蛛になりかけて……今も手足が短いままで」
そう言って目の前でわいわいと話を進める三人を他所に、茜は顎に手を当て考え込む。
〝成る程……あの任務には村田さんも駆り出されていたのか。……いや、蝶屋敷の怪我人の多さからいくと、かなりの人数が派遣されたに違いない〟
ふむふむと納得したように頷いた茜は、ふと村田から漂う雰囲気がドヨンとし始めた事に気がついた。
「……楽しそうでいいなぁ。その那谷蜘蛛山での仔細報告で柱合会議に呼ばれたんだけど……、地獄だった。怖すぎだよ……柱っ………なんか最近の隊士はめちゃくちゃ質が落ちてるってピリピリしてて皆……那谷蜘蛛山行った時も命令に
ぶつぶつと恨み言を口にする村田に、茜はピクリと反応を見せた。
まさか、その〝命令に従わない奴〟とは自分の事ではないかと、顔を引き攣らせた茜が恐る恐る村田に声をかけた。
「えっと……それはお疲れ様でした。柱の皆さんは普段は大らかな方ばかりなんですが「大らか!?いやいや、怖すぎでしょ、柱!!……ああそうか、普段から稽古をつけて貰ってる茜ちゃんは、もう感覚が鈍ってるんだよ」………あはは、勢揃いすると凄い圧ですよね?」
「圧……そうだね、凄い圧だった……生きた心地がしなかったよ………」
そう言ってガクリと肩を落とした村田に、茜はもはや苦笑いである。
「茜ちゃんは本当に凄いな……俺なんかもう、柱と目を合わせただけでこんななのに……よくあんな怖そうな風柱と口喧嘩ができるよな」
「いや、口喧嘩…したくてしているわけじゃ……あっ村田さん」
病室に入ってくる人影に気づいた茜が、慌てて村田に声をかけたのだが、彼はそんな事には気づきもせず、怯えた様に呟いた。
「だとしても、俺には無理だな……柱、怖いよ」
「こんにちは」
だが、突然真後ろからかけられた鈴の様な優しい声に、村田は顔色を真っ青にした。
「ぅわっ……柱!?胡蝶様っ!!」
「こんにちは?」
「あ、……どうもっ、さようなら〜」
ニコニコと笑うしのぶの姿に、なんとか返事を返した村田はものすごい勢いで病室を飛び出して行った。
「あらあら、さようなら〜」
それを見送ったしのぶは、ニコニコとした笑みを崩さずそのまま炭治郎へと口を開いた。
「どうですか、身体の方は?」
「かなり良くなって来ています」
その問いかけに笑顔を浮かべた炭治郎にしのぶは、では!と人差し指を掲げて見せた。
「そろそろ、機能回復訓練に入りましょうか」
「……機能回復、訓練?」
「はい」
聞き慣れない言葉に首を傾げた炭治郎へニコッと可愛らしく笑ったしのぶは、彼らの隣で傍観している茜に向かって口を開いた。
「さあ、茜さん!先日の借りを返す時ですよ?」
「へ?借り?……しのぶちゃん、それって」
「はい。貴方も彼らに訓練をつけるのですよ?先生、頑張って下さい」
にっこりと……
それはそれは綺麗に笑うしのぶの姿に、茜は顔を引き攣らせた後力無く小さく頷いた。