第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
お館様の一言で無事裁判は終わりを迎えた、かのように思われた。
「では、柱合会議を「ちょっと待って下さい!!」
「黙れ!!黙っとけ」
「その傷だらけの人に頭突きさせてもらいたいです、絶対に!!」
「っ、……お願いだから、黙って!!」
「禰󠄀豆子を刺しただけ絶対にっ!!!」
隠の必死な静止を振り切り、炭治郎が暴れ出した為、本来の目的である柱合会議を始めようとしていたお館様は口を閉ざした。
まさか鬼殺隊本部で、しかも風柱を名指しした上で、お館様相手に駄々をこねるとは思っても見なかった隠達は、とんだとばっちりを食らった訳だ。
ーーヒュンッ!
だがオロオロと慌てふためく隠達の目の前を、突然何かが通り過ぎる。
「ぶっ!、へばっ!…ぐふっ!」
目で追うのもやっとな程の勢いで飛んで行った何かは、正確に炭治郎の顔面へとぶつかっていく。
しかも三度も……
そして、何とも痛そうな音を立てたそれに、炭治郎は情けない呻き声を上げながら、呆気なく地に顔を伏せた。
「お館様のお話を遮ったら、駄目だよ?」
そう言って、手に持った小石をちらつかせた無一郎に、隠達は先程の物体は無一郎が投げた石だったのかと理解して、一気に顔を青褪めた。
「もっ、申し訳ありません、お館様……」
「時透様……申し訳ありませんっ、」
顔面蒼白で何度も頭を下げる隠に、無一郎は謝罪はいいから下がるようにと、興味なさげに呟いた。
それに勢いよく頷いた隠は、まだ何か言いたげな炭治郎を担ぎ上げ物凄い勢いで退散して行く。
去り際、お館様は炭治郎へと声をかけていたが、聞き慣れない名前だった為、茜は呆然とその背中を見送った。
「茜も、蝶屋敷の怪我人達を頼んだよ?」
お館様からの言葉にハッと我に帰った茜が、慌ててそれに返事を返せば、どうやら会議は室内で行うらしく、その言葉を合図に柱達も徐に立ち上がる。
「じゃあな、槙野!!あんまり暴れ回るんじゃねえぞ!!」
小馬鹿にしたような口調で宇髄が口を開いたのを皮切りに、皆口々に茜に言葉をかけながら、ぞろぞろと屋敷の入り口へと歩いていく。
その中には勿論、〝殺〟の文字を掲げた兄弟子の姿もあったが、彼は茜へと視線すら向けずにそのまま立ち去るつもりらしい。
その背中を見つめて悲しそうに目を伏せた茜は、その後ろを歩くしのぶに向かって声をかけた。
「あ、あの……しのぶちゃん、昨日はごめんなさい」
「……いえ、お館様もお許しになったんですから気にしないで下さい。私は全く、微塵も、これっぽっちも怒っていませんから」
そう言って綺麗な笑みを浮かべたしのぶに、茜は思わず頬を引き攣らせた。
〝これは思いの外、怒らせてしまったかも……〟
そんな事を思いながら、チラリと彼女の後ろに視線を移した茜は、遠慮がちに口を開いた。
「しのぶちゃん、図々しいのは百も承知でお願いがあるの……もしも可能なら、風柱様の怪我の手当てをして貰えないかな?」
そう言って眉を下げた茜に、しのぶは小さくため息を落とした。
昔から……
それこそ、姉がまだ生きていた頃から彼らを見てきたしのぶは、茜が兄弟子を想うように、実弥もいつも彼女を気にかけて甘やかしている事くらい気づいていた。
いつも口喧嘩をする二人だが、それはお互いを大切に想い……いや、想いすぎてしまっているが為に、空回ってしまっているだけだという事も。
「全く、茜さんは困った人ですね……普段、あれ程しつこく稽古をつけろとせがむ癖に、不死川さんの事となると、何でそんなに下手に回ってしまうのですか?」
「え…っと、なんかごめんなさい……」
「それに私があの人に手当てを受けるように言ったところで、素直に応じるとも思えませんが……」
その言葉に、……そうだよね、とあからさまに肩を落とした茜に、しのぶは呆れたような視線を送る。
申し訳なさそうに声をかけてきたかと思えば、やはり彼女の口から出るのは兄弟子の事ばかり。そんなに心配ならば、自分で声をかければいい話ではないか。
分かりやすく反応を見せる茜に、しのぶはもう一度ため息を落とすと、小さく笑って呟いた。
「仕方ありませんね。一応、声だけはかけてみます」
それに勢いよく顔を上げた茜は、
「ありがとう、しのぶちゃん。」
やはり眉を下げて、困ったように笑うのだった。