第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ビクつきながら謝罪を口にした茜に、実弥は盛大に舌打ちを鳴らした。
「チッ、謝るくらいならなァ………くそっ、お前はとりあえず後回しだァ……」
実弥はぎろりと茜をもう一度睨みつけ、その隣で此方を見上げる炭治郎へと視線を移した。
「鬼が何だって?坊主ゥ…… 鬼殺隊として人を守るために戦えるゥ?そんなことはなァ……」
そう言って鬼が入った木箱を高々と上げて見せた実弥は、
「ありえねぇんだよ馬鹿がァ」
そう吐き捨てるや否や、箱に向かって容赦なく刀を突き刺した。
刀は中の鬼にも突き刺さり、木箱の中からは呻き声と共に、血が滴り落ちていく。
それには勿論炭治郎は激昂し、実弥に向かって声を荒げた。
「俺の妹を傷つける奴は、柱だろうが何だろうが許さない!!」
「ハハハハ!!そうかい、良かったなァ」
挑発するように彼を笑い飛ばした実弥が、刀を再び構えた瞬間、それまで静かに傍観していただけの冨岡が声を上げた。
「やめろ!!もうすぐお館様がいらっしゃるぞ」
「っ、!!」
その一言に一瞬実弥が動きを止める。
すると、すかさず炭治郎は実弥の刀を跳んで躱し、
ゴンッ!
なんとも痛そうな頭突きを食らわした。
その一撃で、頭突きをした炭治郎は勿論、実弥までもが地面に倒れ込んでしまったが、一足早く体制を整えた炭治郎によって、鬼が入った木箱は彼の背後に隠された。
その間、その空間に居合わせた者は、呆気に取られたように倒れ込む二人を眺めていたが、下級隊士にしてやられた実弥の姿に、蜜璃が耐えきれず吹き出した為、自然と彼女へと視線は集まった。
「す、すみませんっ、……」
そんな中、笑いを堪えることに必死な蜜璃とは打って変わり、茜だけは二人を見つめて心配そうに眉を下げた。
「善良な鬼と悪い鬼との区別がつかないなら、柱なんてやめてしまえ!!」
「てめェェ……、ぶっ殺してやる!!」
炭治郎の言葉に、額に青筋を浮かべた実弥が地を這う様な低い声で怒鳴りつけたと同時、
「「お館様のお成りです」」
それまで炭治郎を取り囲んでいた柱達の耳に、少女の声が重なり響いた。
******
「よく来たね、私の可愛い
少女達に手を引かれ、奥から姿を現したお館様は穏やかな声で笑いかけた。
「お早う皆、今日はとてもいい天気だね。空は青いのかな?顔ぶれが変わらずに半年に一度の柱合会議を迎えられたこと、嬉しく思うよ」
それには先程まであんなに喚いていた柱達も、静かに膝をつきお館様へと頭を下げた。その状況に茜は少し呆気に取られたが、煉獄に促されるまま、彼らと同様に頭を下げた。
「お館様におかれましても御壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます。」
「ありがとう、実弥」
柱を代表して挨拶の言葉を口にした実弥は、炭治郎を地に押さえ付ける様にして、再びお館様へと口を開いた。
「恐れながら柱合会議の前に、この竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士について、ご説明頂きたく存じますがよろしいでしょうか?」
実弥がそう言えば、驚かせてしまってすまなかったと、お館様は笑ってみせた。
そして、炭治郎や鬼の禰󠄀豆子の事は知っていて容認していたと説明されたのだ。
それには柱の殆どが驚いたように声を上げ、口々に鬼は殺すべきだと口にした。中でも、実弥の拒絶の熱量は凄まじいものがあり、お館様に異論を唱えた。
「鬼を滅殺してこその鬼殺隊。竈門、冨岡…」
そこでチラリと茜へと視線を移した実弥は、苦虫を噛み潰したような表情でその先の言葉を続けていく。
「……槙野の処罰を願います」
そんな実弥の言葉に、茜はすっと顔を上げ、どんな処罰も受ける覚悟でお館様を静かに見つめた。
「では、手紙を」
お館様の言葉に促され、御子息の少女が手紙を代読し始める。
炭治郎が鬼の妹と共にある事をお許し下さい。
そう始まった手紙の内容は、禰󠄀豆子が飢餓状態であっても理性を保ち、鬼になってから二年以上人を食べないままだと言うこと。
だが、もしも万が一禰󠄀豆子が人を襲った場合……
「竈門炭治郎及び、鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します」
お館様に変わって、手紙を読み上げた少女の声に、その場は一瞬で静まり返った。
「………切腹するから何だと言うのか。死にたいなら勝手に死に腐れよ。なんの保証にもなりはしません。」
「不死川の言う通りです!人を喰い殺せば取り返しがつかない!!殺された人は戻らない!!」
だが、すかさず声を荒げた実弥と煉獄の言葉に、茜はそっと目を伏せた。
鬼によって奪われた命は数えきれない。
その中には当然、共に笑ったり励まし合ってきた大切な仲間も大勢いる。
強ければ強い隊士程、仲間の死を看取った経験は多い事だろう……
その度に自分の無力さに打ちひしがれ、鬼への憎しみを募らせてきた筈だ。
だがそれでも己を鼓舞し続け、前を向き続ける彼らだからこそ、柱は尊敬し信頼されるのだ。
〝必ず鬼を滅殺して、平和な世界を〟
その思いを託された彼らは、今何を思うのか……
茜は、尊敬する彼らを……そして自分を犠牲にしてまでも、強くあり続けようとする兄弟子を思い、静かに拳を握りしめた。