第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「鬼とは仲良くできないって言ってたくせに、何なんでしょうか?そんなんだから、みんなに嫌われるんですよ」
可愛らしく微笑むしのぶは、その笑顔とは裏腹に刺々しい言葉を冨岡に投げかけた。
それには、一瞬緊張の走った茜ですら、思わず苦笑いを浮かべてしまう程なのだが……
しのぶはそんな彼らに向かって、再びふわりと笑いかける。
「さぁ、冨岡さん。どいてくださいね」
それに従う様に茜が横に移動すれば、そこで漸く冨岡は口を開いた。
「………俺は嫌われてない」
「「………」」
「あぁ、それ……すみません。嫌われている自覚が無かったんですね?余計な事を言ってしまって、申し訳ないです」
それには冨岡だけでなく、その場に居合わせた茜や少年隊士までもが動きを止めた。
だが、しのぶはそんな彼らにはお構いなしで、優しく少年に問いかける。
「坊や?坊やが庇っているのは鬼ですよ?危ないですから、離れてください」
「ちっ……!!違います!!いや違わないけど……あのっ、妹なんです!俺の妹でっ、それで」
「まぁ、そうなのですか?可哀想に……」
そう言って驚いた様に口元に手をやった彼女は、可愛らしく笑ってみせた。
「では……苦しまないよう、優しい毒で殺してあげましょうね?」
「………っ、」
思わず息を呑む少年に、冨岡が静かに口を開く。
「動けるか?……動けなくても根性で動け。妹を連れて逃げろ」
「っ、!!冨岡さん……すみません、ありがとうございます!」
声をかけられた少年は、冨岡に頭を下げると妹を抱きかかえ走り出す。それを見送ったしのぶは、コテンと小首を傾げて見せた。
「これ、隊律違反なのでは?」
「………」
それにも無言を貫く冨岡に、しのぶは小さくため息を漏らした。
そんな中、ずっと傍観していた筈の茜が、いきなり少年を追う様にして走り出す。
そして、その背中を眺めるしのぶに、振り返りながら茜は謝罪を口にする。
「しのぶちゃん、……ごめんね!」
そう言って速さを増した茜の足は、あっという間に少年に追いつき、手を引く様に逃げていく。
遠ざかる二人の背中を眺めながら、しのぶは静かに呟いた。
「あらあら、茜さんまで……困りましたね」
******
「着いてきてっ!!」
少年に追いついた茜は、彼の手を取り全速力で山の中を駆けていた。
「……ど、どうしてっ!?」
「そんな事、今はどうだっていいでしょ!!それより逃げる事だけ考えて!!」
先程まで妹の命を狙っていた茜が、いきなり自分たちを助けようと動いてくれている事に、少年は戸惑いを隠せない。
そんな彼にチラリと視線を寄越した茜は、少年に向かって口を開く。
「……君、名前は?」
「竈門、炭治郎ですっ!」
もの凄いスピードで手を引かれながら、少年こと炭治郎が口を開けば、茜はふわりと笑みを浮かべる。
「そう。じゃあ、炭治郎君……頑張って、走って!」
そう言って茜が名前を呼んだ瞬間、彼女に背中を優しく押された。
ガキィーンッ!
その直後、真後ろから上がった衝撃音に、炭治郎が驚き振り返れば、茜は別の隊士からの攻撃を受け止めていた。
「炭治郎君、走って!」
「……っ、すみません!!」
炭治郎が再びよろよろと駆け出したのを確認して、茜は目の前の隊士に口を開く。
「カナヲちゃん、久しぶり……出来れば刀、閉まってくれない?」
「………」
そう言って苦笑いを浮かべた茜に、カナヲはふわりと笑うだけ。
しかし、標的が茜ではないカナヲは、ヒラリと身を翻し、再び炭治郎へと走り出す。
流石に味方に斬りかかるわけにもいかず、茜は慌ててその背中を追いかける。
しかし、先を行くカナヲの方が少し早く、炭治郎に追いついた。
「逃げろ、禰豆子!!逃げろっ!!逃げっ……ぐふっ」
妹を必死に逃がそうとする炭治郎に、綺麗な踵落としを決めたカナヲが、今度こそ鬼に向かって刀を振れば……
ヒュン!
いきなり鬼は、幼女の様な小さな体に姿を変えた。
そこでやっとカナヲに追いついた茜は、鬼を片手で抱きかかえ、その刃から鬼を守りながら駆け出した。
ガキン、ガキィーン
時折無遠慮に振り下ろされる攻撃を、鞘を抜かないままの刀で受け止めて走り続ける。
「カナヲちゃん、落ち着いて!」
「……」
「私達、貴方の師範から一緒に稽古を受けた仲じゃない!!……てっ、私の話聞いてる!?」
どんなに声を荒げようが、お構いなしで攻撃を繰り返すカナヲに、茜がどうしたものかと頭を悩ませ始めた時、
「伝令、伝令!!カァァァッ、伝令アリ!!」
鎹鴉の声が山の中に響き渡り、二人はピタリと動きを止めた。
「炭治郎及ビ、鬼ノ禰豆子、拘束シ本部ヘ連レ帰レ!!炭治郎、額ニ傷アリ!!竹ヲ噛ンダ鬼、禰豆子!!」
その声に漸く刀を下ろしたカナヲが、茜に抱えられた少女の鬼に問いかける。
「あなた、禰豆子?」
それに鬼が頷いたのを確認し、茜がほっと肩を下ろせば、鴉は再び口を開いた。
「尚、本部ニハ槙野 茜モ同行セヨ!」
「………え」
その一言で、茜は顔を青褪めた。