第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ちょ、ちょっと待って、杏寿郎さん」
彼女を今にも押し倒そうとしている杏寿郎に、琴音はすかさず声をかける。
「むう。琴音の怪我は完治したのだろう?」
「えっと、傷は治りましたけど……その、……この手は何ですか?」
彼女の腰を支えるようにして覆い被さった杏寿郎は、体の線を確認するようにその手を怪しく動かした。
「ずっとお預けを食らっていたのでな!そろそろいい
そう言って更に体を密着させる杏寿郎に、琴音はパニック寸前だった。
つい先程まで、真剣な顔で琴音へと話しかけていた杏寿郎は何処へやら。
琴音との接吻に気を良くした杏寿郎は、どんどん彼女に迫っていく。
既に贈られた羽織は杏寿郎によって脱がされてしまっているし、今にも隊服を脱がせようと釦に手を伸ばす始末である。
「杏寿郎さん、さすがに朝からそんな……」
目を逸らし頬を赤らめた琴音に、杏寿郎はにっこりと笑いかける。
「この時間なら、千寿郎は父上に稽古をつけてもらう頃だろうし、当分この部屋に近寄らないから安心するといい!!」
「いえ。そこじゃなくて……こんなに明るいなんて……」
恥ずかしい……そう小さく呟いて、きゅっと彼の服を掴んだ琴音に、杏寿郎は思わず動きを止めた。そして頬を赤らめ、上目遣いで見上げる彼女に問いかける。
「それはわざとなのか?」
杏寿郎の言っている意味が分からず首を傾げた琴音に、ふっと、笑みを深くした彼は、そのまま琴音の耳元に口を寄せ
「煽ったのは琴音だからな、覚悟するといい」
そう囁いて、今度こそ琴音の釦を一つ、二つと外していき、彼女の谷間が顔を出したその時……
足音が部屋へと近づいてきた事により、二人はそのまま動きを止めた。
そのうち足音は杏寿郎の部屋の前で止まり、静まり返った部屋へと襖越しに千寿郎は声をかけた。
「兄上、琴音さんを見ていませんか?」
杏寿郎の腕の中で、琴音はぴくりと反応する。
「ああ、琴音ならここにいるが?今、丁度羽織を彼女に贈った所なんだ」
「そ、そうなの!ああ、でもとっても素敵な羽織だから、明日本部に行くまでは、その……そう、お披露目はしたくないの!……だから、絶対襖は開けないでね!!」
吃りながらも何とか千寿郎に声をかけた琴音は、最後に「私に何か用だった?」と言葉を続けた。
「なるほど、だからお部屋にいらっしゃらなかったんですね!父が探していました。明日本部に行く前に、久々に稽古をつけてくれるみたいですよ?」
「分かった、私も道着に着替えたら、すぐ行くね!千寿郎君ありがとう!」
「いえ、では先に行ってますね」
そう言って、千寿郎の足音が部屋から遠のいていくのを聞いて、琴音は安堵のため息を漏らした。
〝こんな姿見られなくて良かった……でも、二人に怪しまれる前に行かなくては〟
そう考えた琴音だったが、今の会話を聞いていた筈の杏寿郎が首筋を舐めた事でギョッとして暴れ出す。
「杏寿郎さん、私行かなくては!」
声を上げても彼は止まる事なく、遂には服の上から胸をやわやわと触り出したところで
杏寿郎は琴音に突き飛ばされた。と言っても数歩後ろに下がっただけなのだが……
「杏寿郎さんの破廉恥!そういう事は
真っ赤な顔で叫んだ琴音は、サッと身なりを整えて床に置かれた羽織を引っ掴み、逃げるように部屋を飛び出して行くのだった。
******
自室で着替えを済ませ、庭へと歩みを進めながら琴音は考えを巡らせていた。
確かに、杏寿郎には我慢をさせていたのかもしれない。
先日の任務の時だって、少し手は出されたが……後は帰ってからだとも言われた事は確かだし。
結婚の申し出を貰った事や、先程交わした接吻には少なからず琴音だって気持ちが昂ったのだが……
彼が言う〝いい頃合い〟が腑に落ちない。まだ朝から、そんな風に求められては恥ずかしさが募るばかりである。しかも何故か私が煽ったとか何とか言っていたが、そんなつもりは一切ないのだ。
千寿郎が来なければどうなっていた事か……
そこまで考えて、ぽっと頬を染めた琴音は、ブンブンと首を振って何とか邪念を振り払い、庭へと急いで向かうのだった。
******
琴音が庭へ着いた頃には、杏寿郎も道着に着替えて既に庭で待っていた。
何事もなかったかのように「遅かったな」と杏寿郎に声をかけられて、琴音は少し苛立ちを覚えたが曖昧に笑って誤魔化した。
しかし横を通り過ぎる際、彼女だけに聞こえるように杏寿郎は呟いた。
「
〝「杏寿郎さんの破廉恥!そういう事は
……そう叫んだ己の過ちに、今頃気づいた琴音は自分の頬に熱が集中していくのがわかった。
先程まで考えていた邪念がまたもや顔を出し、その後の稽古で琴音は珍しく、愼寿郎からこっ酷く怒られる事となる。
「打ち込みに集中せんか、馬鹿者っ!!」
父の怒涛の打ち込みを受け流している琴音を眺めていた杏寿郎は〝少しやり過ぎてしまったか〟と、苦笑いを浮かべるのであった。