第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
こっ酷く父に怒られた杏寿郎を苦笑いで見つめる琴音は、改めて二人に頭を下げた。
「愼寿郎様、杏寿郎さん。……こんな私を受け入れて頂きありがとうございます。」
律儀にも深く頭を下げる彼女に、愼寿郎は一つため息を落とす。
「そんな事を気にするような娘だったのか?出会った時から生意気な事を口にしていた記憶があるが、随分としおらしくなったものだな」
そう言って皮肉混じりに琴音を揶揄った愼寿郎は「これからも遠慮はいらない。家族だからな」と言葉を続けた。
それには琴音も嬉しそうに頷くのだった。
******
「杏寿郎さん、怒ってますか?」
「何で怒るんだ?寧ろ喜んでいるのだが!!」
あれから愼寿郎の部屋を出た二人は、縁側に並んで座りながら、会話を交わしていた。
そんな中、眉を下げ不安そうに杏寿郎を見上げた琴音が問いかけたのは〝恐らく結婚についての事だろう〟そう考えた杏寿郎は、小さく笑って口を開く。
「柱の仕事に慣れてきたら、結婚してくれるのだろう?」
「……はい。その、まだ柱になると決めただけで右も左も分からない状態ですし、少し落ちついてからが良くて……我儘を言ってしまって、すみません」
「琴音が側に居てくれるなら、いくらだって待てるから安心していい!!」
優しく笑いかける杏寿郎に、漸く安心したように「ありがとうございます」と微笑んだ琴音は、思い出したかのように話し出した。
「そういえば、柱になると隊服も作り直すのですね!本部に行った時に、隠の前田さんに言われて吃驚しました」
「前田……何処かで聞いた名だが、何処だったか」
「杏寿郎さんの隊服も手がけてくれたのではないですか?なんでも明日には、新しい隊服を持って来てくれるみたいで……なんだか同じ服のはずなのにそれだけで緊張しちゃいます。」
そう口にした琴音の横顔を眺めながら、杏寿郎はそっと彼女の手を握る。
それに気付いた彼女が杏寿郎を見上げれば、杏寿郎は真っ直ぐ前を見つめたまま徐に口を開いた。
「俺も初めて柱となり、あの羽織を身につけた時は嬉しさもあったが、緊張もしたものだ……
きっと今の琴音も、あの時の俺と同じように緊張や不安を感じているのかもしれないが……
断言しよう!!琴音なら大丈夫だ!!琴音はきっといい柱になれる!!」
俺も付いているからな!と言い放った杏寿郎に、琴音は嬉しそうに頬を緩ませるのだった。
******
翌朝ーーー。
肩の傷も後もう少しという所まで回復してきた琴音は、道着に着替え、庭で走り込みの稽古をしていた。
〝痛みもなしっ、と……この調子なら明日には、素振りも交えた稽古を開始させられるかな〟
自身の体の状態を確認して、小さく息を吐いた琴音。
そんな彼女の元へ、杏寿郎に連れられて隠の前田がやってきた。
「隊服が出来たそうだ!玄関で千寿郎に話しかけている彼に会ったのでな、ここまで付いてきてしまった!!」
「そうだったんですね。杏寿郎さん、ありがとうございます」
そう言って杏寿郎に礼を述べた琴音は、今度は前田に向かって口を開いた。
「おはようございます、前田さん。こんなにすぐ作って頂けるなんて、ありがとうございます」
「い、いえ、そんなお気になさらないでください。では、こちらお渡しさせて頂きます」
何故かビクビクしながら杏寿郎の顔色を伺った前田は、隊服を琴音に手渡すなり「では、失礼します」と、そそくさと庭を出て行ってしまった。
それを首を傾げながら見送った二人は、忙しかったのだろうか…?と同じ事を考えていたのだが、数分後その理由は明らかとなる。
「琴音、折角だから着替えてみてはどうだ!?」
「ふふっ、そうですね。では着替えてきます」
そう言って、嬉しそうに部屋へと歩いて行った琴音の背中を見送った杏寿郎。
だが、暫く経っても中々姿を見せない琴音に、杏寿郎は痺れを切らして、彼女の部屋へと足を進めた。
******
「琴音、入ってもいいだろうか!?」
「だ、駄目です!!」
慌てた琴音の声が聞こえたが、それに構わず杏寿郎は襖を開き、固まった。
「なっ!!?」
「駄目って言ったのに〜…」
涙目になって見上げる琴音を、上から下まで眺めた杏寿郎は、深いため息を吐いた。
〝前田と言う名に聞き覚えがあったのは、甘露寺の隊服を手がけた隠だったからか……〟
今更ながらに気づいた杏寿郎は琴音に向かって口を開いた。
「隊服は作り直してもらおう。否、すぐ作らせるから、絶対そんな姿は俺以外見せないでくれ!!」
そう言われた琴音の姿はというと
胸元は明らかに布が足りておらず、スカートは短刀を忍ばせることも出来ない位のショート丈。
甘露寺と同じデザインの隊服を渡されていた。
「そうします。これじゃあ、鬼殺どころではないですから……」
そう言って、涙目で見上げる彼女の破壊力は抜群で、杏寿郎も一瞬動きを止めるのだが
「俺から隠には手紙を出すから、とりあえず琴音は着替えなさい」
なんとか平静を装って、杏寿郎は部屋を後にする。
その足でズンズンと自室に向かい、殴り書きで文を書く。
琴音の鴉を呼びつけ、前田宛に届けるように伝えた彼は、ふう、と一つ息を吐く。
〝怪我を負って琴音に手を出せない今、あんな刺激的な格好を見せられるとは〟
そんな事を考えながら、杏寿郎は苦笑いを浮かべるのだった。
一方、杏寿郎からの文を受け取った前田は顔を青ざめる。
『隊服は前の隊服と同じ形で、至急作り直せ。
今度俺の妻にあんな物を作れば命はないと思え』
ヒィイイイ〜……と奇声を上げた彼は、必死で隊服を作り直すのだった。