第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一通り本の整理を済ました所で、琴音は共に作業していた煉獄へと声をかけた。
「あとは明日、近くの図書館へ本を引き取って貰えるか聞いてみます。今日はお手伝い頂きありがとうございました」
「うむ!これくらいお安い御用だ!!本の引き取り手が見つかればまた手伝おう!!運ぶ時にはまた声をかけてくれ!!」
「何から何まですみません。でも量が量なのでとても助かります。また宜しくお願いします」
そう言って頭を下げた琴音に、煉獄はそんな事気にしなくてもいい!と豪快に笑い声を上げるのだった。
******
その後、当初の目的通り、二人揃って煉獄家へと向かう事にした二人。
彼の弟への贈り物として、料理本や、歴史書、心理学の本、応急処置が書かれた本など、十冊程用意した。
それとは別で、琴音がまだ必要だと判断した本も十冊ずつに纏めて縛る。これが二山。
「よし!では行こうか!!」
その計三十冊を片手に持ち、意気揚々と歩き出す煉獄に琴音は慌てて声をかける。
「煉獄さん!私の本ですから私も持ちます!」
「むう?君は怪我人なんだから大人しくしていなさい!!」
しかし、逆に叱られてしまい、しゅんと分かりやすく肩を落とす。それに苦笑いを浮かべた煉獄は、これくらい頼ってくれて構わない!と笑いかける。
〝分厚い本もあるからかなり重たい筈なのに……〟
目の前を歩く煉獄を見つめ、柱は凄いなぁ…なんて、琴音は小さく息を吐いた。
そんな事を考えながら煉獄の後ろを歩いていると、何処からかほのかに甘い香りが漂ってきて、琴音はピタリと歩みを止めた。
それからキョロキョロと忙しなく辺りを見回して、少し先に新しい甘味処を発見して目を輝かせる。
「煉獄さん!甘いものを買っていきましょう!」
「……甘いもの?」
後ろから聞こえた大きな声に煉獄が琴音へと振り返れば、甘味処をじっと見つめる琴音の姿が目に入る。
此方には目もくれず、心なしかキラキラした横顔に、煉獄は小さく笑みをこぼす。
「そうだな!千寿郎も喜ぶだろう!家に帰ったら皆で一緒に食べるとしよう!」
「ありがとうございます!!」
満面の笑みを浮かべる琴音に苦笑しつつ、煉獄はその可愛い提案に乗るべく、甘味処へ向かって足を進めるのであった。
******
「千寿郎、ただいま戻った!!」
立派な屋敷の玄関先で、煉獄は大きな声で弟の名前を口した。
すると屋敷の奥からパタパタと走る音が聞こえ、琴音はワクワクしながら、彼の弟の登場を待つ。
「兄上!お帰りさない」
「うむ!留守の間、家は変わりなかったか?」
それに眉を下げながら頷く少年に、琴音は視線を奪われた。
それは彼が兄、杏寿郎にそっくりだった為である。
「兄上?あの……後ろの方は?」
「あぁ、新しく俺の継ぐ子になった春野 琴音だ!引っ越しの準備を終えたら家で一緒に暮らすことになる!」
「そうだったのですか。新しい継ぐ子の方が来て頂けて良かったですね、兄上?」
杏寿郎は琴音の肩に手を添えながら琴音の紹介を口にする。それに千寿郎は驚いたような表情をした後、可愛らしく笑みを浮かべた。
そんな仲睦まじい兄弟のやりとりを琴音は呆然と眺めていたが、突然俯きながらプルプルと小さく震え出す。
それに気づいた兄弟二人が、同時に心配そうに眉を下げる。
「む?どうした琴音?」「あの……大丈夫ですか?」
しかし、声を掛けられた当の本人は、突然顔を上げたかと思えば、いきなり千寿郎へと抱きついた。
「小さい煉獄さんみたい!!なんて可愛い弟さんなの!私の事は琴音って呼んで?これからよろしくね、千寿郎くん」
「わ、わ、わ!」
それに頬を染めた千寿郎と、驚きで固まった杏寿郎をほったらかしに、琴音はにこにこと笑いかける。
「ご厄介になるんだもん。なんでもお手伝いするからいつでも頼ってね?」
甘い物は好き?おはぎを買ってきたから、一緒に食べようね?と可愛らしく笑う琴音に、なんだか面白くないと杏寿郎は顔を顰める。
そして二人を引き離すように間に割って入ると、部屋を案内すると口を開き、琴音を屋敷の中へと招き入れた。
******
長い廊下を歩く二人。
にこにこご機嫌な琴音の前を歩く、杏寿郎は珍しくムスッとしている。
ちなみに千寿郎は、甘味と一緒に出すお茶を用意する為、台所へと向かって行った。
「ここを使ってくれ!」
襖をあけた杏寿郎に続き、琴音も案内された部屋へと足を踏み入れる。
「こんなに立派なお部屋をお借りしてしまって、大丈夫なんでしょうか?」
「うむ!部屋なら沢山あるから気にしなくていい!それからこの本棚も使ってくれて構わない!」
戸惑う琴音に、杏寿郎はにこりと笑いかけると持ってきた本を床に置く。
どうせなら棚に移してやろうと、本を纏めていた紐をとく。数冊ずつ本を移しながら、ふと彼は先程の出来事を思い返す。
この家に足を踏み入れてしまえば皆、煉獄なのだから、彼女は千寿郎を名前で呼ぶ事にしたのだろう。
だが何故千寿郎は名前で呼ばれるのに、自分は未だに「煉獄さん」なんだ……と不貞腐れる。
そういえば先日、任務を同行した時には「天元さんが〜」「実弥さんたら〜」と随分仲良く他の柱の名前を口にしていた事も思い出す。
自分だけ名前で呼んで貰えていないと言う事実に気づき、杏寿郎は大人気なく顔を顰める。
そのままムスッとした表情で暫く考えを巡らせていたが、ハッと思いついたように顔を上げる。
「この家では皆煉獄だからな!呼び方を改めた方が良いだろう!!」
さも当然とでもいうように、杏寿郎は琴音に声をかける。
それに彼女はキョトンと小首を傾げた後、それもそうですね…と顎に手を当て考え込み……
満面の笑みでこう言った。
「ではこれからよろしくお願いします。師範!」