第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ちょっと待て、こりゃ一体どういうことだ?毒が消えた」
驚いた天元が隣を見れば、琴音もまた驚いた表情で彼を見つめていた。
そんな彼らに炭治郎が口を開いた。
「禰豆子の血鬼術が毒を燃やして飛ばしたんだと思います。俺にもよくわからないのですが……
でも傷は治らないのでもう動かないでください、御無事で良かったです」
「こんなこと有り得るのかよ、混乱するぜ」
天元がそうやって口を開けば、須磨は泣きながら禰󠄀豆子にお礼を言っていた。
そんな彼女を横目に、天元は炭治郎の身体を眺めて再び口を開く。
「いやいや、お前も動くなよ、死ぬぞ」
「俺は鬼の頚を探します……。確認するまではまだ安心できない」
そう言って禰󠄀豆子の背中に乗った炭治郎は鬼の兄妹の頸を探しに行った。
〝……とんだ
そう思った天元はふっ、と小さく笑みを漏らす。彼から毒が消えたことに嫁達、三人も思わず喜びの声を上げる。
だが、そこでふと隣にいる琴音へと視線をやった彼は、思わず吹き出し笑ってしまう。
「ゔぅ〜〜〜っ、」
そこには、目いっぱいに涙を溜めた琴音が、唇を噛み締めて、なんとか涙が溢れ出さないように耐えていたのだ。
「どうした琴音?生き残ったんだから、これで心置きなく嫁に来れるだろ?」
「だって、天元さんっ、腕が……」
そう口にした途端、琴音の目からはポロポロと涙が溢れ出す。
先程まで騒いでいた三人の嫁達も、そんな琴音の様子に慌てて駆け寄って来た。
雛鶴が琴音の肩に手を置き、優しい口調で声をかける。
「琴音ちゃんが自分を責める必要はないのよ?天元様も、琴音ちゃんも全力で戦ったんですもの……それに、私は琴音ちゃんが、生きていてくれて嬉しいの。さっきは私を助けてくれてありがとう」
「雛"鶴"さ"ん"〜……」
琴音の目からは止めどなく涙が溢れ出し、次第に声をあげて泣き始める。
〝しょうがない奴だな〟
そんな彼女に小さく笑った天元は、今度こそ腕を伸ばし、頭にぽんと手を置いた。
その手にぐいっと力を入れて、自身の胸に琴音の頭を押し付ければ「うっ」と小さな呻き声が聞こえたが、気にせず彼は口を開く。
「おら、琴音!泣きやめ!!腕が一本なくなったぐらいじゃ、死なねえよっ」
「だっ、て……」
「だっても糞もねぇよ!それに片腕あれば抱きしめてやれるじゃねーか!?これで安心して嫁になれるだろ」
「だから、嫁にはっ、ならな、いって…、言って、るじゃないっ、ですかぁ〜……」
わんわんと縋り付いて泣く琴音に〝駄目だこりゃ〟と天元はため息を吐く。だがその反応に反して、彼女をあやすように背中を撫でてやる手は、とても優しい。
何故か釣られて泣き出した須磨が
「琴音ちゃん嫁に来てくれないの〜?」
と何だか違う叫びを入れてきたが、
「ちょっと黙んなさいよ!今そう言う流れじゃないでしょ!?」
すかさずマキヲがツッコミを入れる。
暫くそんな喧嘩が続き、二人が騒がしくしていれば、雛鶴が「しっ!」と口元に人差し指を当てた。
それに首を傾げた二人だが、天元の腕の中で泣き疲れた琴音が、寝息を立て始めたことに気づき慌てて口を閉ざすのだった。
「泣き疲れて寝ちまうなんて、まだまだコイツもガキンチョだな!」
そう笑う天元は、漸く大人しくなった琴音を見て〝まぁ、無理もないか〟と小さく笑う。
毒が消えたとは言え重症を負っているのだし、この小さな身体から流れ出た血の量は、俺とは比べ物にならない程だ。
本来なら命を落としてもおかしくない状況だが、毒が消えるや否や、呼吸で止血を行なったようだし、あれだけ騒げれば問題ないだろう。
〝この宇髄天元様を振りまわすなんざ、とんだじゃじゃ馬娘だな!〟
そんな事を思って、天元はまた一人笑いを落とすのだった。
******
「ふぅんそうか、ふぅん。陸ね、一番下だ、上弦の…陸とはいえ上弦を倒したわけだ、実にめでたいことだな、陸だがな……、褒めてやってもいい」
あの後、遅れて現場に駆けつけた伊黒は、天元にネチネチと嫌味を言っていた。
さすがは蛇柱……まさに蛇のようである。
それには須磨も声を荒げるが、彼は全く気にしないのだ。それどころか大怪我を負った天元に、彼は厳しい言葉を放っていく。
「左手と左目を失ってどうするつもりだ、たかが上弦の陸との戦いで。……復帰までどれだけかかる、その間の穴埋めは誰がするんだ」
「俺は引退する、さすがにもう戦えねぇよ。お館様も許してくださるだろう」
「ふざけるなよ、俺は許さない。ただでさえ若手が育たず死にすぎるから柱は煉獄が抜けた後空席のまま……、お前程度でもいないよりはマシだ、死ぬまで戦え」
「煉獄の空席はコイツがこなす!」
そう言って、腕の中で眠る琴音を指さした天元に、伊黒は盛大に顔を顰める。
「なんだこの見るからに弱そうな奴は……」
「あ?煉獄んとこの継ぐ子だぜ、コイツは!まぁ弱そうに見えるが、コイツは結構やる奴だぜ?」
「ふん、どうだかな……だがお前の開ける穴はどうする?仮にコイツが使えたとして、それ以外に使える若手はいないだろう」
その問いに天元は悪そうな笑みを浮かべて口を開く。
「いいや、若手は育ってるぜ、確実に!お前の大嫌いな若手がな」
「おいまさか、生き残ったのか?この戦いで……竈門炭治郎が」
目の前で苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた伊黒に、心底楽しそうな笑い声を上げた天元。
琴音が寝ている間にそんな話が繰り広げられていたなんて、今の彼女には知る由もなかった。