第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「琴音ーっ!」
天元が叫ぶが、地面に倒れ込んだ琴音はピクリとも動かない。
今すぐ駆けつけて、傷の手当てをしてやりたいのに、妓夫太郎の攻撃は激しさを増すばかり。それを受け流す天元の身体にも、確実に毒は効いており一瞬動きが鈍くなる。
「あの女を守れなかったなぁあ。……お前みたいな奴はなぁあ、絶望してから死なないとなあ。」
妓夫太郎はその瞬間を見逃さず、天元の左手目掛けて血鎌の斬撃を振り抜いた……
******
その頃、炭治郎達三人は、伊之助の活躍で堕姫の頸を斬り落としていた。
「頸、頸、頸!!くっつけらんねぇように持って遠くへ走るぞ!!」
「糞猪!!離しなさいよ!!」
堕姫の頭を持って走る伊之助に、帯の攻撃が繰り出される。だが、それを器用に斬り落としながら伊之助は走り続けた。
「グワハハハ!攻撃にキレがねぇぜ!!死なねぇとは言え、急所の頸を斬られてちゃあ弱体化するようだな!グハハハ」
ハ……ッ!!笑い声が不自然に途切れ、炭治郎は信じられない物を見るように、驚きで目を見開いた。
そこには、伊之助の心臓辺りを背後から貫いた妓夫太郎の姿があった。その攻撃を受けた伊之助はゆっくりと倒れ込んでいく……
〝なんでアイツがこっちに、宇髄さんは、琴音さん……〟
炭治郎が彼らに目をやれば、地に伏している二人の姿が目に入り、炭治郎は動きを止める。
その瞬間、帯の攻撃が襲いかかり……
「炭治郎、危ない!!」
善逸に庇われるようにして、攻撃を受けた二人は落ちていった。
******
「人は嘆く時天を仰ぐんだぜ、涙が溢れねえようになああ」
他の皆が意識を失う中、一人座り込む炭治郎の前に腰を下ろした妓夫太郎は口を開いた。
先程から炭治郎を挑発するように
〝俺の頸を斬ってみろ〟〝お前も鬼になれ〟
と小馬鹿にする妓夫太郎。その近くでそれを見ている堕姫も、勝利を確信して笑い声を上げている。
炭治郎には、二人の鬼を相手にするほどの力は残っていない。それどころか腕が痺れて鬼の頸を斬るほどの腕力もないだろう。
仲間が倒れ、自分に残された力もない。
……だが、そんな絶望的な状況でも彼の目は死んでいなかった。
「俺は、俺は……準備してたんだ!」
そう口にするや否や、炭治郎は妓夫太郎に頭突きをかます。
〝ヤケクソで頭突きかよ、効かねえぜこんな……っ!?〟
と考えた妓夫太郎だったが、突如体がうまく動かせなくなっている事に気づく。
驚いた妓夫太郎が自身の身体を確認すれば、足に先程のクナイを刺されていた。
〝あの女、あの時渡しやがったな!遊女の香り袋を引っ掻いてクナイの毒の匂いを隠したっ、
コイツ、コイツ!!弱いくせに、人間のくせにっ!!これだけボロボロになっておいて、これだけ力の差を見せたのに……
独りきりでなぜ諦めない!?なぜ折れない!?俺を倒そうとする意思がなぜブレない!!?〟
妓夫太郎がそんな事を考えている間に、炭治郎は妓夫太郎の頚を斬りつけていく。
〝斬れろ、斬れろ!!勝つ、必ず勝つ、俺たちはっ!!〟
炭治郎が心の中で叫びながら刀を進めていけば、たまらず堕姫が怒鳴り声を上げる。
「お兄ちゃん!!ちょっと嘘でしょ!!そんな奴に頸斬られないでよ!!」
すると次の瞬間、そんな堕姫目掛けて、善逸が瓦礫の中から抜け出して、攻撃を仕掛ける。
〝コイツ!!あの瓦礫から抜けやがった!!〟
少し驚きはしたものの、善逸の技の速度は何度も見たから分かっていると堕姫は安易に考えた。
だがその想像を遥かに超える速さを見せた善逸は、堕姫の頸へと斬りかかる。
〝雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃
二回使えば足が駄目になる神速……
先程瓦礫から抜け出すときに神速を使ってしまった彼には、この一度しか残されていない。だが、炭治郎が作り出したチャンスを無駄には出来ない。
善逸は持てる力を注ぎ込み、堕姫の頸をなんとか捉えた。
炭治郎と善逸がそれぞれの鬼と対峙するが後一歩が届かない。今だって、炭治郎の技が弾き飛ばされ、妓夫太郎の血気術が再び襲いかかろうとしている。
しかしー……
ガキンッ!!
その攻撃を防いだのは、先程倒れた天元だった。
『譜面が完成した!!勝ちに行くぞォオ!!』
彼は筋肉で無理矢理心臓を止め、一時的に毒の巡りを遅らせていた。それでも毒に侵された天元では、妓夫太郎の攻撃を防ぐので精一杯。
炭治郎は〝自分がやらなくては〟と駆け出していく。そんな炭治郎に天元が叫んだ。
「止まるな、跳べェェ!!!」
跳んだ先で、炭治郎は顎に妓夫太郎の鎌を食らうが彼は止まらない。
〝腕の力だけじゃ駄目だ、全身の力で斬るんだ!頭の天辺からつま先まで使え!!
……体中の痛みは全て忘れろ、喰らいつけ!!渾身の一撃じゃ足りない、その百倍の力を捻り出せ〟
「ガアアアァアア!!!」
叫び声を上げながら、炭治郎が妓夫太郎の頸を斬り落とす瞬間、
「俺の体の柔らかさを見くびんじゃねえ!!内臓の位置をズラすなんてお茶の子さいさいだぜ、険しい山で育った俺には毒も効かねえ!!」
善逸の元に倒れていた筈の伊之助も駆けつける。そして勢いそのまま、伊之助も堕姫の首を斬りつければ………
宙を舞うように鬼の兄弟の頸は跳び、向かい合うように鬼の頸は地面に落ちた。