第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
堕姫の背中から妓夫太郎が出て来た事により、明らかに戦況は変化した。
「そいつらにとってお前は命の恩人だよなあ……さぞや好かれて感謝されることだろうなぁあ」
相変わらず天元への妬みを口にする妓夫太郎に、後ろに一般人を庇うように立ち向かう天元は、考えを巡らせながら口を開いた。
「まぁな、俺は派手で華やかな色男だし当然だろ!女房も三人いるからな……いや、もう一人増える予定だがな!!」
「………増えませんよ、天元さん」
チラリと隣に立つ琴音を見やり、ふざけたような言葉を口にした彼に、妓夫太郎は喚き出す。
「お前女房が三人もいて、まだ欲しいのかぁぁ……ふざけるなよなぁ、なぁぁぁぁ、許せねぇなぁぁ」
そう叫ぶや否や、妓夫太郎は血鬼術 〝飛び血鎌〟を放っていく。
薄い刃のような血の斬撃が、彼らに向かって襲い掛かる。その攻撃はもの凄い数で、天元と琴音がいる状況でも、一般人を庇いながら捌ききるほどの余裕はなかった。
それを瞬時に判断した天元は、爆発を引き起こして、一階に逃げていく。
声かけなく天元が技を放ったにも関わらず、その爆発から一般人を守るため、琴音は彼らを抱え込む。
「早く遠くへ逃げてっ!」
「は、はいっ!」
琴音は下の階へ落ちるや否や、彼らを守るように立ち上がり、後ろに庇いながら声をかける。
そんな彼らの元に、逃げた筈の血鎌の斬撃が再び襲いかかる。それは意思があるように、曲がりながらまた襲いかかって来る……
琴音は天元に目配せをし、彼らを守るように技を放っていく。
〝炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり〟
一方天元は、鬼へと攻撃を仕掛けていく。天井に爆薬を投げてから剣で斬りつけ、爆発させる。
辺りを激しい衝撃が包んだ後、砂埃が晴れた先ー…。
「まぁ、一筋縄にはいかねぇわな」
「……俺たちは二人で一つだからなあ」
堕姫の帯で身を守った妓夫太郎と堕姫の姿がそこにあった。
******
これはっ……!
天元が妓夫太郎と睨み合っている頃、琴音は身体の違和感に動きを止めていた。
琴音は一般人を庇う為、自分へ向かう斬撃は急所に当たるもの以外、敢えて避けずに受け入れた。
勿論、擦り傷程度で抑える為、呼吸で筋肉を強固に固め、傷を負ったと同時に止血もした訳だが……
どくん…どくん…
いつもより大きく響く心音に、琴音は深く息を吐く。そして自分の置かれた状況を把握して、顔を歪めて考えを巡らせる。
あの血気術……
血鎌の斬撃は、猛毒を纏った攻撃だったのだろう。
それを食らってしまった今、琴音に残された道は、出来るだけ血の巡りを遅くする事のみである。
だが、そうすれば格段に琴音の動きは遅くなる。上弦相手の戦いで、足を引っ張る事なんて出来ないのに……
そうやって顔を顰めた琴音だったが、一瞬過ぎった弱気な考えに喝を入れる。
〝いや、自分が倒れるまでに決着をつけてやる!〟
そう気合いを入れ直した琴音は、ぐっと拳を強く握りしめ、覚悟を決めて走り出すのだった。
******
琴音が呼吸を使い、毒の廻りを遅らせていた頃ー…。
天元の元に駆けつけた炭治郎達三人は、禍々しい気配を放つ二体の鬼を睨みつけていた。
そんな彼らに気づいた天元は、己を鼓舞するように口を開いた。
「勝つぜ、俺たち鬼殺隊は」
「勝てないわよ、頼みの綱の柱が毒にやられてちゃあね。琴音もあれから戻ってこないし、今頃死んでいるんじゃない?」
「余裕で勝つわ、ボケ雑魚がァ!毒回ってるくらいの足枷あってトントンなんだよ!人間様を舐めんじゃねぇ」
口を挟んできた堕姫に、天元は声高々に言い放つ。
「こいつらは三人共優秀な俺の継子だ!逃げねぇ根性がある!!手足が千切れても喰らいつくぜ?それに琴音は炎柱だぞ、お前らなんかにやられる訳ねぇわっ!
そしてテメェらの倒し方はすでに俺が看破した!
同時に頚を斬ることだ、二人同時にな!そうだろ!?そうじゃなけりゃそれぞれに能力を分散させて弱い妹を取り込まねぇ理由がねぇ」
ハァーーッハ!チョロいぜお前ら!!なんて笑っている天元に、鬼の兄妹は口を開く。
「その簡単なことができねぇで鬼狩りたちは死んでったからなあ、柱もなあ。俺が十五で妹が七喰ってるからなあ」
「そうよ、夜が明けるまで生きてた奴はいないわ。長い夜はいつもアタシたちを味方するから!!どいつもこいつも死になさいよ」
そう叫んだ瞬間、堕姫の帯が彼らに襲いかかる。
だがー……
「天元さん、お待たせしました。
……時間はかけていられません。派手にぶちかましていいですから、速攻で片をつけましょう!」
そう言って、ふわりと降りたった琴音は、帯の攻撃を防いでいく。
一気に距離を縮めた琴音に、堕姫はそのまま外へと逃れ、善逸と伊之助が後を追うように飛び出した。
琴音は彼らを追うか一瞬迷ったが、明らかに妓夫太郎が厄介な鬼だろうと判断し、その場にとどまった。
だがそんな琴音を見た妓夫太郎は、ニヤリと嫌な笑みを浮かべる。
「そっちの女は、もう死にかけじゃねぇかぁ?」
その声に琴音は鬼を睨みつけるが、彼女の手は小さく震え出しているし、顔色も優れない。
だがそんな状況なのに、琴音は笑って口を開いた。
「……死にませんよ?私、彼の元へ生きて帰るって約束していますから」
そう言った琴音は、杏寿郎の姿を思い浮かべ、彼から教えられた言葉を心の中で繰り返す。
〝心を燃やせ〟
それだけで力が湧いてくるようで……
身体は悲鳴をあげている筈なのに、彼女の目は闘志を燃やし続けていた。