第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そこの人、手を貸して!」
琴音の怒声にびくつきながら近寄って来た男性に、目の前でぐったりしている女性の腕を止血するように伝えて行く。
「この布で此処を押さえて下さい」
恐る恐る傷口に手をやる男性を見ながら、琴音は器用に自身の着物の裾を切り裂いていく。それを使って女性の腕を縛り上げ、止血を行なった琴音は、男性に向かって口を開いた。
「この女性を連れて、この街から逃げて下さい。すれ違う人がいれば、出来るだけ多くの人に声をかけて!」
「は、はい!」
男性の返事を確認して、立ち上がった琴音は
「その女性のこと、よろしくお願いします」
と頭を下げて、また次の怪我人の元へと駆け出すのだった。
******
粗方の怪我人を見て回り、一般人に街から出るように伝えて回った琴音は、急いで炭治郎の元へと向かっていた。
先程の彼は、琴音の言葉が耳に入らないくらい頭に血が上っていた。
本来なら、堕姫と対峙するのは自分の役割で、彼には住民の避難に当たって貰いたかったが、あの状況で迷っている時間などなかった……
だが相手は上弦。彼と別れて十分余りだが、持ち堪えているのかすら分からない。
琴音は唇を噛み締め、全速力で彼の元へと駆けるのだった。
******
琴音が炭治郎の元に辿り着いた時には、天元がもう駆けつけていて、鬼は既に頸を斬られていた。
そして何故か禰󠄀豆子の鬼化が進み、炭治郎が何とか押さえつけている……そんな状況だった。
「おい、戦いはまだ終わってねぇぞ。妹をどうにかしろ」
天元がそう呟いたのを眺めながら、琴音は禰󠄀豆子の対処について考えを巡らせた。
どうやら人はまだ食べていないようだが、自我が保てていない以上、いつ襲い出すか分からない
どうすれば……
険しい表情で彼らを見つめていれば、天元が
「地味に子守唄でも歌ってやれや」と口を開いた。
それと同時に、炭治郎は禰󠄀豆子の力に押されて、外へと飛び出していったのだが。
天元が、この状況下で鬼化した禰󠄀豆子を見逃したのだから、自分もそれに従うまでだ。
そう思いたった琴音は、改めて頸を斬られた鬼へと視線を移した。
首を抱えてわーわーと、「上弦だ!私は強い!」と恨言を口にする姿をながめていれば、堕姫と自然に目線がかち合う。
「琴音!アンタよくも私を騙したわね!!」
「……騙すって、鬼のくせに何を言ってるの?」
「コイツ、脳味噌爆発してんじゃねえか?」
喚き散らす堕姫を前に、天元と琴音はそう口を開くが、二人はそのうち違和感を覚える。
〝首を切ったのに体が崩れていかない……?〟
その異様な光景に二人は驚き目を見開くが、堕姫はそんなことを気にも止めず、ワンワンと泣き始める。
「死ねっ!!死ねっ!!
……みんな死ねっ!!わぁああああああ
首斬られたぁ、首斬られちゃったあぁ
お兄ちゃあああん!!」
その瞬間二人は同時に駆け出した。
……堕姫の背中から現れた、もう一体の鬼に斬りかかる為に、思いっきり刀を振り抜いた。
だが二人同時で動いたのに、彼らの刀身から難なく鬼は攻撃を交わす。そして二人を無視して、堕姫をあやすかのように優しい声をかけていく。
「泣いたってしょうがねぇからなぁぁ。頸くらい自分でくっつけろよなぁ。
おめぇは本当に頭が足りねぇなあ」
〝
その隙に二人は首を狙って斬りかかるが……
天元の髪飾りがシャラリと音を立てる。天元は頭から血を流し、彼への斬撃を受け流した筈の琴音の腕からも、血が流れる。
「殺す気で斬ったけどなぁ……いいなぁお前。いいなあ」
そんな彼らを目にした鬼は、天元へと妬み事を呟いていく。
「お前いいなぁ、その顔いいなあ。肌もいいなぁ、シミも痣も傷もねぇんだなあ」
鬼の口は止まらない。まるで自分が受けて来た仕打ちを恨み、妬むように口を開いた鬼は「妬ましいなぁあ」と何度も口にし動きを見せた。
「取り立てるぜ、俺はなぁ。やられた分は必ず取り立てる……
死ぬときグルグル巡らせろ、俺の名は妓夫太郎だからなぁあ」
そう叫んだ鬼の腕から、無数の斬撃が繰り出される。その全てが天元だけを狙っていく。
天元がそれを跳ね除けようとした瞬間、見知った背中が現れて天元は思わず笑みをこぼす。
「なんで私を無視して話を進める、のっ!」
「そりゃあ、俺がド派手な色男だからだろっ!!」
無数の斬撃から彼を守るように現れた琴音に、口角をあげて話しかける天元。
楽しそうな会話を繰り広げている彼らだが、妓夫太郎から目は逸らさない。
無意識のうちに琴音の背中に冷や汗が伝い、刀を持っている手にも力が入る。
強ばる身体に気合いを入れ直すように琴音は天元に口を開く。
「天元さん、終わったら」
「パフェだろ?分かったつーの!」
戦いは始まったばかりである。