第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
眉を下げ心配そうに此方を伺う女性に、琴音は驚き動きを止めた。
「ごめんね……、本当はもっと早く伝えるべきだったわね。」
「いえ、そんな夕霧花魁の所為ではないですし……それで善子は、いつ居なくなったのですか?」
琴音は真剣な顔で、夕霧花魁に口を開いた。
******
昨晩、杏寿郎が琴音の元を訪ねた時ー…。
「潜入したはいいが、どう動くべきか行き詰まっている、と。そう言うことだろうか?」
琴音から、現段階で知り得た情報を聞いた杏寿郎は、そう問いかけた。
「はい、花魁達が付きっきりですので、中々動けなくて……」
苦笑いを浮かべた琴音がそれに頷けば、杏寿郎は暫く考え込んだ後、口を開いた。
「やはり、ここは同じ店に潜入している黄色い少年に接触を図るべきだろう!!君たちが姉妹という設定でこの店に入ったのなら〝妹の様子を知りたい〟とでも言えば、怪しまれないのではないだろうか!?」
「……なるほど!!その手がありましたか!」
他の人の目を盗んで会う事ばかり考えていたが、どうどうと会えばいいじゃないか…と今更ながらに気づいた琴音は「明日さっそく善逸君に伝えてみます」と、杏寿郎と会話を交わしたのだ。
そんな事があった為、今朝になって夕霧花魁に
「善子は元気にしていますか?」
と問いかけた事で、冒頭の会話に繋がるのである。
******
琴音が花魁から聞いた話はこうだ。
琴音と善逸が店に侵入した翌日には、善逸は行方不明になっていたと言う。
何でもミスをした少女を庇って、
それを心配して、彼を寝かせてくれていたようだが、気づいたら姿を消していた為「怯えて逃げ出した」と判断されたそうだ。
……まあ、逃げ出す事はないだろう。
彼は臆病なところはあるが、信頼できる鬼殺隊の仲間だ。任務をほっぽり出すような子ではない。
それよりも引っかかるのは、善逸を突き飛ばしたと言うその花魁だ。
普通の女子ならまだしも、鍛錬を積んだ隊士を気絶させる程の力で突き飛ばす事など、まずあり得ない……
その花魁について夕霧花魁に問いかければ、困ったようにこう口にしたのだ。
「琴音ちゃん、悪い事は言わないから彼女には近づかないで?蕨姫花魁はとても綺麗な人だけど………少し怒りっぽい人なの。」
そう言って、眉を下げて心配そうに此方へ視線を寄越した彼女は、妹がいなくなってショックを受けているとでも思ったのだろう。
ふわりと微笑んで「今日はもう、休みなさい」と琴音に思わぬ形で、休暇を与えたのだ。
〝こんな絶好なチャンスが回ってくるなんて〟
そう思った琴音が、この隙に鬼の居所を探らなければと聞き込みを始めた訳だが、一番怪しい人物……
〝蕨姫花魁〟
この名前を口にするだけで、皆が怯えたような目をする事に気づく。
さらに話を聞いて回れば、どうやら楼主の奥さんも、ここ最近亡くなったばかりだと言うし、雛鶴に至っては病気になって切見世にいると言う。
ポツポツと湧いて出てきた情報から察するに、やはり例の花魁が怪しいだろう。
そんな事を考えながら琴音が廊下の角を曲がった時だった。
目の前から綺麗な身なりの女……いや、〝鬼〟が歩いてきたのだ。
完璧までに人を演じているその鬼は、鬼の気配すらあまり感じられないが、琴音はそれが例の〝花魁〟だろうと瞬時に理解した。
そして何も知らないような口ぶりで、にこやかに声をかけたのだった。
******
「蕨姫花魁」
「なに、あんた?見ない顔だね」
「先日から此方で働いております。蕨姫花魁のような素敵な女性になりたくて頑張っているのですが、中々上手くいかなくて……」
「ふ〜ん、あんた中々見目がいいね。名前はなんて言うの?良かったら私が色々と教えてあげようか?」
彼女に憧れているかのような口ぶりで、琴音は蕨姫花魁へと接触を図った。
それにまんまと乗ってきた姿を確認した琴音は、ふわりと微笑んで
「名前は琴音と申します。花魁に教えて頂けるなんて嬉しいです」
と口にした。そんな琴音に
「そう、琴音ね。今日の夜、部屋においで」
待ってるわね?そう言って、怪しく笑った蕨姫花魁はそのまま廊下を歩いて行った。
そんな花魁の背中を見送った琴音は、
ふむ、と考えを巡らせた。
………〝今日の夜〟か。
先程の会話では、まだ此方の正体に気付いてはいないようだった。
大方、此方を食べるつもりでいるのだろう……
だが、油断している隙を見て仕留める事が出来れば潜入した意味があると言うもの。
着物の下に隠した短刀を服の上から確認した琴音は、キュッとそれを強く掴み、気合いを入れ直すのだった。
******
一方その頃。
炭治郎と伊之助は、天元への定期連絡を行う為、集合場所へと訪れていた。
伊之助に至っては、まだ皆が揃っても居ないのに身振り手振りで、潜入先に鬼がいた事を炭治郎へと報告している。
「にしても、善逸も琴音さんも遅いな」
そう呟いた炭治郎に、いつのまにか現れた天元が「善逸は来ない」と口を開いた。
一瞬で現れた天元に驚き固まる二人だが、先に我に帰った炭治郎が彼に向かって問いかける。
「善逸は来ないってどう言う事ですか?」
「お前たちには、悪い事をしたと思っている……
俺は嫁を助けたいが為に幾つもの判断を間違えた。善逸は今行方知れずだ。昨夜から連絡が途絶えてる」
「確か琴音さんも同じ店に潜入した筈ですよね?まさか琴音さんも行方が……」
「いや、あいつは大丈夫だろう。訳あって単独で動いてる。
お前らはもう
そこで言葉を区切った天元は、立ち上がり再び言葉を紡いでいく。
「消息を絶ったものは死んだと見做す。あとは俺と琴音の二人で動く」
言うだけ言って、炭治郎の静止も聞かずに一瞬で天元は姿を消した。
だが、天元の話を聞いてもなお、諦める気配がない彼らは〝今日の夜、鬼を探しに行こう〟と意気込むのだった。