第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
結局その後、何とか頼み込んだ天元の努力もあり、炭治郎と伊之助は目ぼしい店へと買われていった。
一人残された善逸は、天元への恨み言を最後まで口にしていたが、
「此奴の姉だ。一緒に面倒を見てくれるなら、この娘もお願いしよう」
そう言って、最終手段とでも言うのだろう。
琴音のオマケとして、善逸を差し出したことにより、善逸も無事に京極屋へと売られていくのだった。
******
それから二日ーー。
「琴音ちゃん、それはこうやって、ね?」
「はい、
琴音は思い通りに動けぬ自身の立ち位置に、苦虫を噛み潰していた。
それもその筈、琴音と善逸が京極屋へ潜入するや否や、遣手によって二人は別々の場所へと放り込まれた。
「琴音、あんたは見目がいいからね。特別に夕霧花魁の下につけてあげるから、必死に頑張りな」
そんな事を初日から言われた琴音は、芸事を覚える為奮闘することとなる。四六時中、ぎっしり教えこまれる為、潜入したはいいが中々思うように動けないこの状況に琴音は段々と苛立ちを感じていた。
〝こんな事をしている場合じゃないのに……〟
そんなことを思いながら、琴音は深いため息を落とすのだった。
******
例によって、花魁の下で見習い期間を過ごす事になった琴音だったが、この店に入った初日から
勿論琴音もその気配を探ろうと、何度も辺りを警戒してみたのだが、琴音がその視線に意識を集中させれば、それはたちまち気配を消すのだ。
だがまたしばらく経つとその気配は訪れる…まるで琴音を監視するかのように、だ。
しかもそれは夜だけでなく、朝も昼も。
全く時間は関係ないようだ。
その事から推測するに、この一帯に隠し通路のような物が存在するのかもしれない。
〝あ〜もうっ!もっと思い通りに、動ければ……〟
このもどかしい状況に、琴音は盛大なため息を落とすのだった。
こんな状況になってしまっては、他の三人に頼る他ないのだが、彼らは何か掴めたのだろうか。
せめて同じ店に潜入している善逸だけにでも接触が出来ればいいのだが……
遣手と、花魁、それにあの視線……。
彼らの指揮を自分が取るのは難しいだろう。
そう思った琴音は、密かにネズミを呼び寄せる。
天井から出てきた無駄に筋肉質なネズミは、天元の使いだ。
まだ何も掴めていない状況だが、琴音には一つ確信している事があった。
今回の任務は恐らく、いや間違いなく十二鬼月が絡んでいる。
単独の鬼なのか、それとも数体潜んでいるのかまでは分からないものの、確実に裏を辿れば
そもそも天元が外から探りを入れ、琴音がこうして潜入して中から探っても、尻尾を掴めないとなると……
顎に手をやり数秒考え込んだ琴音は、突然ハッと顔を上げる。
〝まさかここに巣食う鬼は
そう疑念を抱いた琴音は、天元宛に簡単な手紙を書き、彼のネズミにそれを託した。
(鬼がいるのは確実です。そして恐らく十二鬼月。
私を監視するような動きを見せている為、私は単独で動きます。あとの三人への指揮は頼みます)
そのような手紙を託した琴音は、これからどう動くべきか……と考えを巡らせるのだった。
******
だがそれから数時間後、琴音は遣手の女から思わぬ指示を受ける事となる。
「琴音、アンタに客がついたよ。顔見せ前だと言うのに、えらく金を積んでくれてね!!しかも、それが男前なのさっ」
「えぇ〜……!?でも私、お客相手の色事なんてまだ教えて貰ってないですよ!?そんなんじゃお客に失礼ではないでしょうか!?」
琴音が必死に無理です!!と伝えた所で
「金はもう貰ってんだ!それに、顔見せ前の遊女を指名するくらいだから、何も仕込まれてない女がいいお客なのかもしれないよ」
良かったじゃないか!とニヤリと笑う遣手の女。
〝……顔見せ前に客はつかないって言ったじゃない!!〟
今更、脳内で天元に文句を言ってもどうしようもない。だが受け入れてしまったら、それこそ終いだ。
琴音は完全に逃げ腰で、オロオロと必死に言い訳を考えるのだが、結局は断れる理由などはないのだ。
有無を言わさぬ笑みを浮かべた遣手は「さあ、いくよ!」と琴音の背を押し歩き出す。
泣き出しそうな琴音の事なんてお構いなしで歩みを進めた女は、ある部屋の前で動きを止めた。
突然動きが止まった事で、琴音がほっと胸を撫で下ろした瞬間……
女は目の前の部屋へと琴音を押し込んだ。
そして、入り口に膝をつくようにして倒れ込んだ琴音の後ろから、遣手の女が口を開く。
「お客さん、お待たせしました。まだまだ見習い途中なもので……
色々おしえてやってくださいなっ!」
そう言うや否や戸を閉めた女によって、琴音は部屋に男と二人きりになる。
押し込まれたままの体勢で固まる琴音は、畳から視線を上げる事も出来ず、完全に混乱状態であった。
だがそんな琴音をさておき、先に男が動き出した事により彼女は大袈裟なくらいにビクリと身体を震わせた。
しかし、口を開いた男の一言で、琴音は安堵の息を漏らし、思わず涙目で彼を見つめる事となる。
「よもや、よもやだ……
中々宇髄が口を割らないと思えば、まさか琴音がこんな所に潜入していようとは!!」
「……杏寿郎さん」
久しぶりに見る彼は、上物の羽織に身を包み、困ったような笑みを浮かべていた。