第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あの後、鍛練も普通にこなし、夕食時にも特に変わったこともなく、
格段変わりのない煉獄家の日常に琴音は胸を撫で下ろす。夕食時、ちらりと盗み見た杏寿郎はいつも通りの様子だったし、先程の彼の言葉は自分の錯覚だったのかもしれないとまで琴音は考えていた。
そんな彼女は、今は湯浴みの真っ最中。
錯覚かもとは考えつつも、いつもより身体を念入りに洗ってしまうのは致し方ない。
もこもこと泡だらけになった身体に、お湯をかけていけば、泡で隠れていたたくさんの傷跡が顔を出す。
小さな傷もあれば、大きな傷跡もある。特に、以前鬼の爪で引き裂かれた傷は……
彼女の首元から胸の谷間を通り、左の脇腹まで斜めに入ったこの傷は、あまりにも大きなものだった。
自分の身体を暫く見つめていた琴音は、大きなため息を一つ落として、風呂場を後にするのだった。
******
布団の上に座り、目を閉じ、深い呼吸を繰り返す。
琴音は自室へと戻るなり、いつもの日課でもある呼吸の鍛練を行おうと目を閉じていた。
しかし頭の中は昼間の杏寿郎の事ばかり。
いきなり杏寿郎に唇を奪われたのはびっくりしたが、降ってくる口付けや、そっと触れ合った手はとても優しかったのを覚えている。
それに耳元で囁かれた声は、普段の彼からは想像がつかない位に、男の色気を感じてしまった。
「今夜、自室で待っていてくれ」
……ああは言っていたが、本当に彼は来るのだろうか。もしもそうなら、自分はどうすればいいのだろうか。
いや、その前にあの傷跡を見て嫌いになってしまうかもしれない。あんな大きな傷跡だ。彼に気持ち悪いと思われてしまったら……
ぐるぐると巡る思考に、呼吸の鍛練は何処へやら…
琴音は布団の上で、膝に顔を埋めるようにして座り込む。すると、部屋の戸が開く音が聞こえ
「琴音、入ってもいいだろうか?」
遅れて杏寿郎の声が聞こえてきた。
……返事をするより前に開いては、問いかける意味はないのでは?
驚き固まる琴音の頭の中では、そんな言葉が浮かんでいた。
******
布団の上で固まっている琴音に、小さく笑みを漏らした杏寿郎は、部屋へと足を踏み入れて、後ろ手で戸を閉めた。
布団の前まで歩いて行き、杏寿郎が腰を下ろせば、不安げな目をした琴音と視線が交わる。
杏寿郎がそんな琴音を前に、はぁ、と大きなため息を漏らせば、琴音は大袈裟なくらいにびくついた。
「琴音。昼間の話だが、琴音を抱きたいと思っているのは確かなのだが……
君に無理をさせるつもりはない。琴音の心の準備が整うまで俺は待つつもりだ!!」
だから、今日は沢山の話をしよう!琴音と一緒にいられるだけで、俺は満足だ!!と笑った杏寿郎に、琴音は胸が締めつけられる感覚を覚えた。
こんなにも自分を想ってくれている彼を、とても愛おしいと思ったのだ。
それと同時に、そんな彼の想いにも応えたいと思った……怖い気持ちも少しはあるのだけれど、それ以上に彼に触れたい、とそう思ったのだ。
「私っ、杏寿郎さんになら抱かれてもいいですっ」
そう言って大胆にも杏寿郎に抱きついた琴音に、さすがの杏寿郎も思考が停止した。そんな彼に構う事なく、顔を上げた琴音はあろう事か自分から彼に口付けたのだ。
初めての琴音からの接吻は、とても可愛いらしい短いものだったが、杏寿郎にとって
思わず口元を押さえて、顔を赤くした杏寿郎に、琴音もつられて顔を赤くするが、意を決して口を開いた。
「そのっ、……私初めてで、何をしたらいいか分からないんですけど……」
優しくして下さい、そうやって呟いた琴音に杏寿郎はもう我慢の限界だった。
琴音を抱き寄せ、唇を奪う。
先程の口付けとは程遠い……
唇を食べられるかの様な接吻に、琴音が思わず身を引こうとすれば、それを逃がさないとでもいう様に、杏寿郎がすかさず後頭部と背中に手を回す。
今までされてきた口付けの比ではないほど、長く唇を吸われ続けた琴音は、段々と息が続かなくなってくる。
酸欠で苦しくなった琴音が無意識に口を開けば、待っていましたと言わんばかりに、杏寿郎は舌を侵入させていく。そのまま逃げ惑う舌を器用に絡めとり、彼女の口内を味わっていれば、琴音の口からは自然と甘い吐息が漏れ始める。
「ん……んふっ……」
自分のものとは思えない様な恥ずかしい声に、琴音は思わず顔を赤くするが、それでも離れていかない彼の舌に、段々と何も考えられなくなっていく。
されるがまま、自分から与えられる快楽に、一生懸命応える琴音に満足した杏寿郎が、漸く口を離すころには、どちらものか分からない唾液の糸が繋がっていて、重力に従い切れていった。
それを視線の端で捉えた杏寿郎は、ごくりと喉を鳴らし、改めて琴音へと視線を移す。
とろんと、なんとも艶かしい表情を浮かべる琴音にぐっと込み上げるものを感じた杏寿郎は、なけなしの理性を総動員させ口を開く。
「琴音、これから先は止めてやれる自信がない。本当にいいのか?」
「……杏寿郎さんになら大丈夫です」
それに恥ずかしそうに頷いた琴音を確認した杏寿郎は、嬉しそうに微笑んだ後、彼女の寝巻きの合わせに手を伸ばすのだった。