第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌朝、琴音と千寿郎は共に蝶屋敷を訪れていた。
……朝と言いつつ、限りなく昼に近い時間になってしまったのは、杏寿郎の為にと料理を準備していた為だ。
こればっかりは、致し方ないだろう。
きっと首を長くして、二人の迎えを待っているだろう杏寿郎に、一足先に会いに行くようにと千寿郎に伝えた琴音は、しのぶの自室へと向かっていた。
そんな琴音の手には、大きな風呂敷が抱えられており、なんとも甘い匂いを纏っていた。
中身は朝一から千寿郎と共に大量に作り上げた、スイートポテトが入っている。
退院する杏寿郎の為にと、せっせと朝から作っていたのだが、どうせならお世話になった蝶屋敷の皆にも配ろうと、こうして持参したわけである。
ちなみにだが。
大量に菓子やら料理やらを早朝から作り始めた二人に、愼寿郎は朝一から大きなため息を漏らしていた。
〝いくら杏寿郎が、たくさん食べるからと言って、こんなに作ってどうするんだ〟
そんな愼寿郎の思いに全く気づいていない琴音は、彼を見つけて嬉しそうに近寄ってきた。よく見れば、今しがた出来上がったであろう菓子を、手に持ったまま近づいてきた琴音に〝作りすぎだ〟と文句を言おうと愼寿郎が口を開けば
「愼寿郎様、味見してください!」
と、それをいきなり口に突っ込んできたのだ。
あまりの驚きに、愼寿郎は琴音の頭に鉄拳を振り下ろし
「いきなり突っ込む奴があるか!?」
と怒鳴りつけた。
う"ぅ〜痛いと、頭を押さえて疼くまった琴音に、ふんっと鼻を鳴らして立ち去った愼寿郎。
そんな朝の出来事を知るのは、千寿郎だけである。
とまあ、朝から色々あったのだが、なんとか無事に大量の菓子を作り上げた琴音は、上機嫌でしのぶの自室へと届けにやってきたのだ。
……だが、不敵な笑みを浮かべるしのぶに、琴音の機嫌はどんどんと下降していく。先程までの上機嫌が嘘のようだ。
次第に口元も引き攣り出し、終いにはだんまりを決め込むのだった。
何故この様な状況に陥ったのか。
それは琴音がしのぶの部屋を訪れた所から始まった。
******
数分前、しのぶの部屋に訪れた琴音は、ノックもそこそこに部屋の中へと足を踏み入れた。
そんな琴音に「いきなり、なんですか?」と口を開いたしのぶは、呆れた顔で彼女を迎えいれた。
「何って程の用じゃないのだけど……
私も杏寿郎さんも、随分と皆んなにはお世話になったから、これを今朝お礼に焼いてきたの」
「随分重いんですね……中身はなんですか?」
「スイートポテトだよ!今回はね、結構上手く出来たの!朝から千寿郎君と頑張って作ったんだから!」
そう言って、興奮気味に伝える琴音に、しのぶは意味深に笑みを深くした。
「それは食べるのが楽しみです。ところで」
そこまで言って言葉を区切ったしのぶは、可愛らしく首を傾げて、言い放った。
「煉獄さんとは、恋仲になったんですか?」
「え!?な、な、な、何、急にっ!?」
面白いくらいに慌て出した琴音に、クスリと笑ったしのぶは「少し気になってしまいまして」と言葉を続けた。
「ほら、琴音は煉獄さんの事を〝師範〟と呼んでいたでしょう?それがいきなり名前で呼び始めたのですから、不思議に思いもしますよ?」
「……」
「ああ、それに煉獄さんのお見舞いに、炭治郎君達が来た時なんて凄かったんですよ?煉獄さんたら、善逸君に『君には前科があるからな!琴音にあまり近づかないで貰いたい‼︎』と啖呵を切っていたんですから」
「………」
「それにスイートポテトを早朝から…確か煉獄さんの好物はさつま芋でしたよね?」
「…………」
いや〜、煉獄さんは愛されていますね?と笑ったしのぶは、完全に此方を揶揄っている。
確かに恋仲になったし、別に隠してもいないが、他人に指摘されれば恥ずかしくなってしまうもので。
とどめと言わんばかりに「早く煉獄さんに会いに行かなくていいんですか?」と呟いたしのぶに、琴音は思わず口元を引き攣らせた。
それにはしのぶもクスクスと笑みを浮かべたが
「まあ冗談はさておき。煉獄さんには、診察の為に定期的に通っていただく予定ですので、私も病室までご一緒させて貰いますよ」
そう言って立ち上がり、琴音を置き去りにしのぶは部屋を出て行ってしまった。
そんな彼女を呆然と見送った琴音だったが、ハッと我に帰り、慌ててしのぶを追いかけるのだった。