第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
はあはあ、と肩で息をする琴音は、何度も何度も猗窩座の首へと斬り掛かる。
それに拳を振るって答える猗窩座は、楽しそうに口を開く。
「素晴らしい技だ!もっとだ、もっと戦おう」
それに答える事もなく、激しく打ち込み続ける琴音は、少しずつ体が重くなってきている事に気づいていた。
呼吸も先程から上手く吸えなくなってきている。
このままでは、、、
そう彼女が思った瞬間だった。
ドクン。
琴音の耳に、自身の心臓の音がやたらと大きく聞こえたかと思えば、体がいきなり言う事を聞かなくなった。
だがそんな彼女に容赦なく迫ってくる拳、、、
何とか刀で受け流そうとした琴音は、勢いを押し殺す事ができず、後方まで吹っ飛ばされる。
「かはっ」
横転した汽車に体を打ち付けられた琴音の体は、限界を迎えていた。
立ちあがる事すら出来ない琴音へ、猗窩座が駆け出そうとした瞬間ーーー。
彼女の思惑通り、やっと朝日が顔を出し始めた。
〝早く此処を離れなければ、此処には陽光が刺す〟
そう判断した猗窩座だったが、目の前で座り込む琴音を殺すなら今だ!!と
太陽が照らす前にと彼女に向かって走り出した。
「琴音さん!!」
炭治郎の叫び声に、なんとか力を振り絞り立ち上がった琴音は、刀を構えるが、、、
震える両腕に力が全く入らない。
鬼の腕が、彼女の目前に迫った時ーーー。
「炎の呼吸 弍の型 昇り炎天」
杏寿郎が琴音を守るように間に割って入り、其れを回避した。
恐ろしいほどの殺気を放ち
「杏寿郎ぉぉお!!!」
と叫んだ猗窩座だったが、遂に陽光が差し込み始めた事により、森の中へと姿を消した。
それを確認した杏寿郎も、琴音もゆっくりとその場に座り込む。
慌てて二人に近寄った炭治郎達に、琴音は片手をあげ、大丈夫だと笑って見せた。
そして、自身の少し前に膝をついている杏寿郎へと口を開いた。
「ははは、、、
師範見ましたか?私達、上弦相手に喧嘩に勝ちましたよ?」
力なく呟いた彼女は「師範、傷の具合はどうですか?」と言葉を続けた。
「大丈夫だ。琴音のお陰でなんとか止血できた」
そう返事を返した杏寿郎だったが、実際は、無理やり体を動かして、鬼に最後の一撃を喰らわせていた。なんとか意識を保っているだけで、一番の重症者は彼だろう。
そんな彼を気遣い、琴音は口を開く。
「鎹鴉に怪我人多数と、報告してあります。隠しが来るまで少し休みましょう」
そう言った彼女は、今度は近くまで来ていた炭治郎に目を移し、口を開く。
「少し無茶をし過ぎたみたいっ。、、、隠しが来、たら、、起こし、て?」
そう言って目を閉じた彼女は体力の限界だったのだろう。意識を手放した。
炭治郎は突然眠り出した琴音に一瞬焦ったが、大きな怪我がない事を確認し、ほっと胸を撫で下ろす。
下弦の壱と戦った後に、上弦相手にあのような戦闘だったのだ、、、
暫くは寝かせてあげよう、と炭治郎は明るくなった空を見上げて一息吐くのであった。
******
それから暫くして、彼女が言った通り、医療に知識がある隠し達が駆けつけた。
まず一番の重症者である杏寿郎を、蝶屋敷へ運ぶ前に応急処置を施していく。
止血はしてあるが左目は完全に潰れているし、肋骨は砕け、内臓も傷ついているのだ。
〝何故こんな大怪我を負っているのに、意識を保っていられるのか〟
彼の怪我を確認した隠しは、柱の体の丈夫さに顔を引き攣らせながらも、テキパキと処置を行なっていく。
その頃になって、ようやく頭に包帯を巻いた善逸も起き上がってきて、炭治郎達と合流した。
炭治郎から、気を失った後の事を説明された善逸は
「ええぇ〜!!?上弦の鬼が来たの?だだだだ大丈夫だった?」
と慌てふためく。
そんな彼に、隠し達はため息を吐く。
〝柱がこの有り様なのだ、、、大丈夫じゃないだろう。状況を見ろよ〟と。
だがそんな彼らを気にすることなく、キョロキョロと汽車が横転する大惨事な現場を見回した善逸は、一点を見つめて固まった。
「琴音さん、、、?」
小さく呟かれた善逸の一言に、皆が彼と同じ方向を見る。そこには、汽車に背を預けるように眠る琴音の姿があるが、目立った怪我は確認できない。
〝彼女がどうかしたのか?〟
皆が疑問を浮かべている中、他の者より耳がいい善逸だけは気づいたのだ。
彼女が虫の息だという事に、、、
「だ、誰か!?琴音さんの呼吸が止まりそうだ、助けてっ」
善逸のその声に、その場にいた隠し達は弾かれたように彼女の元へと向かって走り出す。
それは一番の重症者と診断を受けた杏寿郎も同様だった。
皆が止めるのも聞かず、琴音の元へと向かおうと暴れ始めた杏寿郎に、
隠しの一人が仕方なく全身麻酔を打ち込んだ。
杏寿郎は、薄れゆく意識の中
隠し達が慌てふためく姿を遠目に確認しながら
意識を手放すのだった。