第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
いきなり速さも技の威力も増した琴音に、その場にいた者は目を見開いた。
それは杏寿郎達だけでなく、猗窩座にとっても同じこと。
今まで防戦一方だった琴音がいきなり、己の首を狙うように刃を振るい出したのだ。
一瞬でも気を抜けば、容易く首を切り落とされるかもしれない恐怖と
短時間でここまで自分を追い詰めた強者との出会いに、猗窩座の背中はゾクゾクした。
「もっと!もっと戦おう!!」
そう叫んで拳を振るう鬼に、駆け出していく琴音を、後ろから歯を食いしばって見ていた杏寿郎は、彼女を見て眉を顰めた。
このままの勢いで琴音が攻め続ければ、もしかしたら鬼の首を切り落とすことが出来るかもしれない。
、、、だが、何かがおかしい。
彼女のあんな無茶な戦い方は見たことがない。
よく見れば、息が上がってきているのか肩が上下しているし、焦って戦っているようにすら見えるのだ。
こんな時に役に立たない自身の体に、思わず拳を強く握りしめれば、強すぎたのか血が滲む。
そんなことすら気にする事なく、杏寿郎は鬼へ向かって掛け出していく琴音を見つめていた。
杏寿郎が予想した通り、彼女はこの状況にかなりの焦りを感じていた。
琴音の脳裏にはいつかの任務で言いつけられた、天元の声が鳴り響く。
『琴音!今後その技は、絶対に使うな!命令だ!!』
******
あれは琴音が鬼殺隊に入って、まだ一年も経ってない頃に行った合同任務でのこと。
雑魚ばかりだが、ある山の一角で鬼同士が縄張り争いを繰り広げているとの伝達があり、天元と琴音が現場に派遣された。
山まで来てみれば、確かに気配は複数あるものの余りにも広範囲に点々としていたため、天元と琴音は別れて鬼を討伐する事にしたのだ。
その当時から呼吸の使い方が、他の者よりずば抜けて上手かった琴音は、一つ試してみたい事があった。そして、それをするのに絶好の機会だった為、今回の任務に口角を上げた。
暫く行けば鬼は簡単に見つかり、確かに縄張り争いをしているのだろう。誰が琴音を殺せるかを言い争っていた。
鬼は三体。雑魚ばかりだが、、、硬そうな奴が一体いる。
『あれをやってみるか』
あくまで〝こんなことも出来るのでは?〟と予想しか出来ていないが、、、
呼吸を深く深く溜め込み、最大限に肺へ酸素を送り込む。血の巡りも最大限に、、、そして心拍数をも最大限に刻んでいく。
呼吸を使って、体の力を限界まで全て解放して、技を繰り出す。
「炎の呼吸 伍の型 炎虎」
ドガーーン
天元が自身が向かった先の鬼を倒し終わり、琴音と合流する為、歩みを進めていれば、物凄い衝撃音が辺りを包んだ。
〝くそ、琴音の相手は厄介な鬼か?〟と
駆け出した彼がみたのは、琴音の周り、一体の木々が消し飛んでいる光景だった。
そしてそこにポツンと琴音が、倒れ込んでいる。
急いで彼女を抱き起した天元を確認して、琴音は
「天元さんだ、、、」と力なく呟いた。
意識があることにほっとした天元が、彼女に状況を問いかければ、少し気まずそうに説明したのだ。
「三体の鬼を倒す際、呼吸を最大限に解放したらどうなるか実験をしてみたら、、、こうなりました」と。
鬼の首が斬れないことをよく嘆いている彼女が、此処ら一体を吹き飛ばすとは想像も付かないが、天元は確認のために口を開く。
「お前の力で此処ら一体を吹き飛ばすなんて、何回技を放った?」
「、、、たった一振りです」
「は?」
琴音の返答に驚いた天元は、目を見開いてもう一度辺りを見回す。
天元が使う音の呼吸でも放ったかのような惨状に
〝爆薬なしでこいつが?〟
と琴音に視線を移せば、随分と苦しそうな息遣いが聞こえて来る。それに呆れて
「で?一振りでお前は倒れた訳か?」
と改めて問いかければ、琴音は苦笑いでそれに頷いた。そんな彼女を見て、ため息を漏らした彼は口を開いたのだ。
『琴音!今後その技は、絶対に使うな!命令だ!!』
******
それを今使ってしまうとは、、、
琴音は苦しげに顔を歪めた。
あの時ーーー。
自分ではなく、背後にいる彼らに鬼の拳が向かった時。
いきなりの出来事に冷静さを失ってしまった琴音は、無意識のうちに呼吸を最大限に解放してしまったのだ。
確かにそれを使った事で、速さも技の威力も格段に上がったが、、、これは諸刃の剣なのだ。
体の限界がいつ来るか分からない。
あれから2年。
以前より、呼吸を上手く使いこなせるようになってはいるものの、以前は一振りで倒れ込んでしまったこの技が、いつまで持つか、、、
琴音は焦りながら、朝日はまだか!?と空は見つめる。だが彼女には日が登るまで、自身の体力が持つかどうかの判断ができない。
となれば、、、
琴音に今残された選択肢は一つのみ。
『猗窩座の首を討ち取る』