第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
炎の呼吸の奥義を放った杏寿郎も
杏寿郎を殺す気で拳を振るった鬼も
一瞬何が起こったのか、分からなかった。
杏寿郎の胸を、鬼の腕が貫かんとしたその瞬間、、、
二人の間に突如として、割り込んできた小さな影。
それは一瞬で、鬼の腕を切り落とし、杏寿郎を後方へと蹴り飛ばした。
既に重傷を負っている杏寿郎に、受け身など取れるはずもなかったが
「伊之助君!!」
咄嗟にかかった彼女の声に、我に返った伊之助がなんとか杏寿郎を受け止めた。
砂埃が晴れた先、、、
目を見開く炭治郎達が捉えた姿は小さな背中。
真っ黒の羽織を翻して、鬼と対峙する琴音の姿だった。
******
「お前ェェ!俺と杏寿郎の戦いを邪魔するな!!」
彼女の姿を捉えた鬼は、恐ろしいほどの殺気を放ち
「女とは戦わない!そこをどけェェ!」
と怒鳴りつける。
その鬼の目にしっかり刻まれた〝上弦の参〟の文字を確認した琴音は、鬼から視線を逸らすことなく状況を判断する。
後方に倒れている炭治郎は、重傷ではありそうだが呼吸のおかげで、大事には至っていない。
伊之助は呆然と立ち尽くしてはいたものの、今の動きからして大した怪我は負っていないだろう。
だが杏寿郎は、今の蹴りに受け身も取れない辺り、相当な傷を負っている筈だ。
いくら夜中中の戦闘後だとしても、柱をここまで追い詰めるなど、、、
上弦の鬼とはこれ程までに強いのか、と琴音の背中に冷や汗が伝う。
今の腕を切る感覚からして、自分には〝到底首は切れそうにない〟。
ちらりと自身の刀に目をやれば、多少だが既に刃こぼれを起こしているのも確認できる。
思わず、舌打ちしたくもなる現状だが、、、
〝勝機はある〟
にやりと笑った琴音は口を開いて、鬼へと向かって駆け出した。
「じゃあ、無抵抗で死んでくれる?」
一瞬で間合いを詰めてきた琴音に、鬼は目を見開き拳を振るう。だが琴音は、身を翻して避けた挙句、鬼の腕をまたしても一瞬で切り落とし、勢いそのままに今度は首を切ろうと刃を振るう。
彼女の刀が異様に短かったため、なんとか避けれたその攻撃に、、、
猗窩座は己の口角が上がっていくのを感じていた。
「ほう、面白い。お前、女にして置くのが惜しいくらいだ。」
そこで言葉を区切った猗窩座はニタリと笑った。
「杏寿郎程ではないが、お前も相当な実力者のようだ、、、少しは楽しめそうだ
なっ!」
そう口を開くや否や、琴音を襲う無数の攻撃。
加勢したくとも動くことが出来ない炭治郎達は、二人の動きを目で追うことでやっとだった。
そんな彼らとは違い、重傷な傷を負っているにも関わらず、再び戦いに加わろうとヨロヨロと立ち上がろうとしている杏寿郎に声がかかる。
「師範、呼吸を使って止血して下さい。私は死にません、、、約束をお忘れですか?」
そう言って笑った琴音は、物凄い勢いで猗窩座の技を受け流していく。
そう、ただ受け流しているのだ。
彼女が見出した勝機とは、朝日が登るまでの時間稼ぎ。鬼の首を討ち取る気など毛頭ないのだ。
幸い、東の空は白んできていて、あと十五分もせずとも夜が明けるだろう。
それに彼女に気を取られ、猗窩座は一対一で戦っているのだ。普段、敵は勿論、味方の動きまで予想しながら援護をする琴音にとっては、鬼だけに集中すれば良いこの状況に少しばかり余裕がある。
〝あと、もう少し〟
琴音は迫り来る拳を全て受け流しながら、東の空を睨みつけた。
******
それから暫く、拳を奮っていた猗窩座だが、琴音の思惑に気付いて苛立ち始めていた。
最初こそ、自身の腕を切り落とし、首を狙って斬りかかってきていた琴音だが、その後は防戦一方なのだ。
杏寿郎との戦いを割って入ってきたにも関わらず、受け流して時間稼ぎをするなど、弱者の考えそうな事だ。
そう考えた猗窩座は、彼女ごしに此方を見つめる杏寿郎達の姿を見つけてニヤリと笑みを深めた。
猗窩座は彼女の左脇腹を狙うようにして拳を振るう。
琴音は勿論それを避けるため、体を右に捻って身を翻した、、、その瞬間。
琴音の左隣を物凄い勢いで、猗窩座は駆け出して行った。
その先で、目を見開いて固まっている三人に向かって、猗窩座は構えた拳を振り下ろす。
だが、その腕が彼らに届くその前に、一瞬で彼らの目の前に現れた琴音の刀が、猗窩座の腕を切り落とした。
******
咄嗟に駆け出した彼女の速度は異常なほど早く。
鬼と杏寿郎達との間に割って入った彼女の刀は、
今度こそ猗窩座の首へと向かっていく。
今まで以上に速さも技の威力も増した彼女を見て、皆が目を見開く中、、、
琴音一人だけが、とてつもない焦りを感じているのだった。