第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
琴音はハッと目を覚ます。
どうやらあの夢の中から、汽車の中に戻ってきたようだが、、、なんだか様子がおかしい。
慌てて立ち上がり、刀を構える。
辺りを見回すが、自分一人が寝かされていたようだから、他の皆はもう起きて戦っているのだろう。
足を引っ張ってしまった現状に、思わずため息を漏らしながら、即座に状況を判断する。
そこらかしこで、乗客を捕らえようと動いている肉片、、、『この汽車自体が鬼と化したのだろう』
そう仮定して、彼女は深く息を吸う。
呼吸を使い、足に力を集中させた琴音は目にも止まらぬ速さで駆け出した。
そして乗客を守るため斬撃を喰らわせながら、車両を扉ごと斬って移動していく。
「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり」
彼女が技を放った瞬間、そこへ見知った気配が物凄い勢いで、扉を蹴破りながら突っ込んできた。
「琴音おはよう!起きたか!!」
「師範!すみません、寝坊しました」
そう返す琴音に「気にするな!」と杏寿郎は呟き、簡単に今の状況を説明する。
「この汽車自体が鬼と化している!竈門少年達が鬼の首を斬るまで乗客を守り抜く!!」
俺は後方5両を守る、と説明した彼に〝やはりそうか〟と口角を上げた琴音。
先程の夢の中とは違い、今は斬るべき敵が明確に分かるのだ。汽車になろうがなんだろうが〝鬼ならば斬る〟それだけだ。そうと決まれば、と琴音は口を開いた。
「では、車両全体の援護と、、、必要あらば怪我人の治療を任せて下さい」
「うむ!頼んだぞ琴音!」
そう言って短い会話をした二人は、違う方向へ向かって走り出した。
******
肉片から乗客達を守るため、汽車内を駆けずり回っていた琴音達の耳に
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
汽車と一体化した、鬼の叫び声が響き渡る。
その直後、まるで頭部を失い、激しくのたうち回っているかのように、、、
断末魔と共に列車が激しく揺れ出した。
一斉に乗客へと伸びる肉片を切り刻みながら、琴音は今まで以上に飛躍する。
激しい揺れに琴音の小さな体は簡単に吹っ飛びそうになるが、それをあちこちの壁や床を利用して、なんとか体制を立て直し、少しでも衝撃を和らげるために、立て続けに技を出し続ける。
肉片を切り刻んでいた時とは比にならない程、体力を削られていくが
皆も必死に戦っているのだ、と歯を食いしばり踏ん張り続ける。
遂に汽車が横向きに倒れ始め、大きな衝撃が車両全体を襲った瞬間。
琴音の視線の端で、割れた窓から弾き飛ばされた幼子の姿を捉えた。
彼女はなんとかその子に追いつき、少女を車内へと引っ張りこむ。その勢いで自分は汽車の外へと投げ出されてしまった琴音は、これから自分に襲いかかるだろう痛みに備えて、硬く目を瞑った。
******
ぽふっと、思った衝撃とは随分と違う暖かさに包まれた琴音が、驚いて目を開ければ
「琴音、大丈夫か!?」
と杏寿郎に声をかけられる。
想像以上に近い距離にある彼の顔に、真っ赤な顔になりながらお礼を口にする彼女。
どうやら体が投げ出された瞬間に、彼に抱きかかえられ事なきを得たのだろう。
地面に降ろされてもなお、未だに顔が赤い琴音だが、いつまでも呆けてはいられない。
目の前に広がる惨状に、自分がすべき事を判断して口を開いた。
「師範、私は怪我人を見て回ります。」
それに「任せたぞ」と返事をした杏寿郎は、鬼の首を斬った少年隊士を確認するため、先頭車両の方へと駆け出した。
彼の背中を見つめていた彼女も、懐から応急処置に必要な道具を出して、重症な者たちから治療を開始する。
とは言っても、持ち歩ける医療器具などたかが知れている為、自身の鴉に
「怪我人多数の為、直ちに救護の応援を要請」
と伝言を託し、自身の出来得る処置を施していくのだった。
******
粗方の重傷者の応急処置を終えた琴音は、
後方車両で気を失っている善逸の頭に包帯を巻いてやっていた。
頭から出血はあるものの、命に関わるような大きな怪我では無い事にほっと一息ついた琴音は、そろそろ師範達と合流しようと前方へと視線を向けた。
その時、琴音は見つめた先に僅かな殺気を感じ取った。
今まで救護に集中していたためか全く気が付かなかったが、激しくぶつかり合う気配に冷や汗が流れる。
『鬼は確かに倒したはず、、、』
恐る恐る踏み出した足は、次第に駆け足になる。
前方へ進めば進むほど、殺気は大きくなり、ぶつかり合う戦闘の爆音も大きくなっていく。
駆け足は全速力になり、やっとの思いで琴音が先頭車両までたどり着いた時、、、
皆を守るように鬼と向き合う杏寿郎の背中を確認した。
その直後、聞こえた叫び声。
「俺は俺の責務を全うする!!ここにいる者は誰も死なせない!!」
そして、炎の呼吸の奥義の構えをした彼に、慌てて琴音は駆け出した。
そんな彼女の目が捉えたのは、今にも杏寿郎の胸を貫こうとする鬼の腕だったー。