第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「じゃあ、俺も安心だ!」
そう言って、ニカっと笑った弟に
まだ話は終わってないと、琴音は険しい顔に戻った。
優斗に鬼殺隊を諦めてもらうまで、話を終わらせる気はないと改めて口を開きかけた、、、その時。
「俺、実はやりたい事があるんだ!」
にこにこと話し始めた弟に、琴音は驚きで、動きを止めた。それもそうだろう。弟が続けた言葉、、、
「姉ちゃんを守ってくれる人がいるなら、俺は鬼殺隊じゃなく、父さんのような医者になりたい」
琴音が望んでいた、鬼殺隊以外の別の道を優斗自身が語り出したのだから。
「ほ、本当に?鬼殺隊を諦めてくれるの?」
「ああ!姉ちゃんの為にと思っていたけど、それは煉獄さんにお任せするよ!俺は違う形で、人を助けていきたい」
琴音が震えそうになる声で、問いかければ〝鬼殺隊にならない〟とはっきり返事をした優斗。
それを黙ってきいていた育ての老人も「やりたいように生きればいい」と微笑んだ。
思えば、両親が殺されてから、鬼殺隊になる為だけに鍛錬を続けてきた琴音。
いつのまにか、弟を巻き込んでしまっていた、、、
口癖はいつも〝姉ちゃんを守りたい〟だったし、弟が自身の夢を語るなんて初めてなのだ。
それが嬉しくて、嬉しくて。遂には琴音の目から大粒の涙が溢れる。そして、心の底から思ったのだ。
『あぁ、これで弟は死なないで済む』
ストン、と胸の奥に落ちた言葉ーーー。
琴音は自分がぽつりと思いたった、その一言に、言いようがない恐怖を覚えた。
死?何故、そんな事を考えた?なんで弟の死に様を想像して泣きそうになるの?
なんで、なんで、、、
とぐるぐると考えを巡らせていれば
頭の中で、何かが叫ぶ『起きて、戦え』と。
その瞬間、違和感が確信に変わる。
脳裏にさまざまな記憶が蘇る。
煉獄さんに出会う前に、弟は鬼殺隊になった。
弟はいつも他人を優先するお人好しで。誰かに任せて自分は医者に、、、なんて考える訳ない。
そして、そんな優しい弟は死んでしまったんだ。人のために最後まで戦って死んでいった、、、
全て思い出した琴音は、自傷気味に笑った。
「なんて残酷な夢だろう」
そう呟けば、弟が〝夢?〟と首を傾げて問い返したが、琴音は構わず言葉を続けた。
「優斗のやりたいように、やらせてあげたかったな。生きてるうちに、自分のために、、、
自分のための努力をさせてあげたかった」
そう言って立ち上がった琴音には、弟を失った〝あの日〟のような迷いなどない。
あの日、弟を失った悲しみから師範が救いだしてくれたのだ、支えてくれたのだ。
だからこうしてまた、前を向いて歩いてこれたのだ。
そして、これからは師範がそうしてくれたように自分も彼の力になりたい、隣で支えたいとあの日誓ったのだ。
〝早く目覚めなければ〟
どうやったら夢から覚めるのか、検討もつかないが、なんとかしなければ。
そもそもいまの状況がどうなっているのか。
他の皆も、眠らせられているのかすら分からない、、、
何処へ向えばいいかは分からないが、とにかくここを出なければ。
ゆっくりと足に力を入れ、家の出口に向かって歩るきだす。
後ろからは慌てて「姉ちゃん待って!」と声がかかるが、振り返る事はない。
扉を開け、家の外へ足を踏み出す。最後に琴音は小さく呟く。
「優斗、ごめん。私は煉獄さんのところへ行かなくちゃいけないから」
振り向かず呟いた姉に、優斗は笑いながら返事をする。
「姉ちゃんはその人が好きなんだな。あんなに嬉しそうに話すのを見たのは久しぶりだった。姉ちゃんの心の拠り所が見つかって良かったよ」
いってらっしゃい、、、
後ろから弟の声がかかったと同時に、琴音の左手首から炎があがる。
驚いて目を見開いた琴音だが、一向に熱さを感じないことに気づく。
、、、優しい桃色の炎に包まれて彼女の意識は、段々と遠のいていく。
気づけば、あっという間に彼女の全身を包み込んだ炎。薄れゆく意識の中、琴音は小さく呟いた。
「いってきます」