第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌日。
朝から竹刀を使った稽古を始めた琴音。
「やっとだぜ」と喜ぶ伊之助に、琴音はにこりと笑って
「まずは昨日の動きを意識して、打ち込み稽古をしようか」と口を開いた。
一対一の打ち込み稽古。昨日と違うのは、竹刀があるかどうかなのだが、、、
明らかに今までよりも、動きやすくなっている事に気づいた三人。
琴音に技を決められる程ではないのだが、昨日までなら確実に避けられなかった攻撃を、ギリギリではあるが交わせるようになってきているのだ。
それに驚いて、炭治郎が琴音を見つめれば、その視線に気づいてか笑みを深めた彼女は
「君たちはすごいね、飲み込みが早い!私も、うかうかしてられないな〜」と口を開いた。
〝凄いのは琴音さんじゃないですか!?〟と炭治郎は思うのだが、彼女は呑気に「成長期って素晴らしいな〜」と呟いていて。
不思議な人だな、と炭治郎は思った。
琴音は、先輩隊士なのにとても話しやすいし、ころころ変わる表情は可愛らしいと思う。彼女からは、常に優しい匂いがしているから、きっと仲間思いの人なのだろう。
ただ、本当に一瞬なのだが、炭治郎はたまに混じる悲しみの匂いに戸惑いを感じていた。談笑していた時も、禰󠄀豆子に会ってくれた時も、ほんの一瞬だけ悲しみの匂いがしたのだ。
でも次の瞬間には蓋をしたかのように、優しい匂いしか分からなくなっていたし、そんな時の彼女は、何かを決意したかのような強い眼差しを向けているのだ。
きっと自分の事は後回しで、人の為に手を差し伸べてやれる人なのだろう。そんな彼女だからこそ、自然と周りも心を許していく。
そして気づいた時には、心の闇をその優しさで、そっと照らしてくれているのだ。
炭治郎も、彼女が
〝禰󠄀豆子を普通の女の子〟として接してくれた事や、
『一緒に妹を守る』と口にした事に、心が救われた気がしたのだ。
だからこそ、琴音が自分を犠牲にしないように、、、
少しでも琴音の力になりたいと炭治郎は思うのだった。
「さぁ、次は素振りを1000回!」
炭治郎が一人、考え込んでいた思考は琴音の楽しそうな声で呼び戻された。
よく見れば、隣では善逸の悲鳴も上がっている。
今日も彼女の稽古は、休む事なくひたすら続く、、、
そう、地獄を思わせるような過酷なものだった。
******
「琴音さん、ありがとうございました」
「いえいえ。此方こそ、君たちにはいい刺激を貰ったよ。ありがとう」
炭治郎達にみっちり、夕刻まで稽古をつけ終えた琴音。
彼女は稽古が終わるや否や、もう任務へと向かうとの事で、世話になった三人は、蝶屋敷の玄関まで見送りに来ていた。
琴音に礼を言った炭治郎と善逸に対し、伊之助は何を言うでもなく、彼女をずっと見つめている。
それに気づいた琴音は「伊之助君もありがとね」と笑いかける。すると、すっと手が伸びてきて
「お前には艶々のどんぐりをやる」
と彼なりのお礼をしてくれた。そんな不器用な少年が可愛らしくて、琴音は
「親分、ありがとう!」
と悪戯っ子のようにイヒヒ、と笑うのだった。
******
暫く屋敷前で談笑していた彼らだが、日もだいぶ落ちてきて、琴音の鴉が「任務ダ、イソゲ」と急かし出した事により、会話はそこで終わりを迎えた。
急かす鴉に「はいはい」と苦笑いで返事をした琴音は、改めて少年達に向き直り
「じゃあ、いつか任務で会えるのを楽しみにしてるね?それまで、くれぐれも怪我はしないように!」
と笑いかけ、今度こそ蝶屋敷を後にしたのだった。
だが、少年達と別れて数分後、、、
琴音は、キョトンと鴉を見返して「え?今から?」と顔を顰めていた。
蝶屋敷を出た足で、そのまま杏寿郎の任務に合流するつもりでいた琴音に、先程鴉が
「炎柱ノ担当地区デ鬼ノ目撃ガアッター!任務、任務!」
と彼女の周りを飛び回りながら叫んだのだ。
普通、柱に長期任務が入れば、他の柱がその地区も担当してくれる筈なのだが、、、
何度聞き返しても「任務ダ!」と同じ事を繰り返す鴉に、琴音は大きなため息を漏らす。
「分かった、分かったから。」
案内して、と力なく呟いた彼女は、
〝師範少し寄り道して行きます〟
と心の中で杏寿郎への謝罪を口にし、鴉の後を追って駆け出すのだった。